ラクロス

立教が明治を破って関東制覇 立教の1番を背負った櫻井美帆と大川祐季の絆

立教はサドンビクトリーの末に優勝を果たした(全て撮影・松永早弥香)

関東学生ラクロス特別大会男子1部 決勝

11月29日
立教大学(D1位)6-5 明治大学(B1位)

11月29日、関東特別大会女子1部の決勝が行われた。立教大学vs明治大学と昨年の関東地区大会決勝と同じカードではあるが、今年はチームを取り巻く環境が大きく違う。本来であれば、立教は関東連覇、更に全日本大学選手権でも連覇を目指せたはずだった。いろんな思いがありながら、それでも選手たちは心ひとつで決勝の舞台に立った。「今、このチームで戦えることに感謝し、全てを出し切って楽しもう」と。

【写真】短期決戦の関東学生ラクロス特別大会、ファイナル4の記憶
立教として初の全日本選手権は完敗 初めて3年生で1番をつけた大川祐季の1年

試合終了間際に立教主将が同点弾

第1クオーター(Q)を0-0で終え、立教は第2Q早々に仕掛ける。開始2分で安田悠乃(3年、県立川和)が、4分には金谷美佑(4年、都立国分寺)がゴール前まで走り込んでシュートを決めた。更に立教は攻め、ゴール付近で明治ディフェンスの反則を誘発。続けざまに2本のフリーシュートを大川祐季(4年、日大)がしっかり決め、4-0で試合を折り返した。

相手は昨年のリベンジを狙う明治だ。ここからが勝負と気を引き締め、第3Qを迎えた。明治は時間をかけてジリジリと攻め、内野彩香(3年、県立所沢北)が1点目をもたらすと、更に藤村麻伊(2年、県立川和)がランニングシュートを決めて4-2。相手の対応を見るあまり立教は後手に回ってしまい、明治の追い上げムードの中で最終Qへ。

明治の勢いは止まらない。内野が2点目をあげ、岡部夏奈子(4年、日大第三)のフリーシュートで同点。残り8分で主将の佐藤啓(4年、星稜)がフリーシュートを決め、明治がついに逆転を果たす。立教は何度も攻めてゴールを狙うが、明治もプレッシャーをかけてチャンスを潰す。試合終了が迫る中、ゴール前で受けたパスを立教主将の折笠みき(4年、横浜市立東)が決め、5-5。試合再開のドローを立教がつなぎ、この勢いで逆転を狙ったが、明治も食らいつき、延長戦であるサドンビクトリーへ。

立教主将の折笠が試合終了間際に同点弾

立教の佐藤壮ヘッドコーチ(HC)は「いけると思った人がいけよ」と声をかけ、後は選手たちに任せた。最初のドローを立教の樋口紗穂(4年、横浜隼人)が取り切り、ボールをアタックにつなぐ。立教は冷静にボールを回してチャンスを狙い、金谷がゴール右上から走り込んでシュートを打ち込む。ボールはゴーリーを抜けてネットを揺らし、立教の優勝が決まった。

例え最後の試合に出られなくても

この試合の最優秀選手には、立教オフェンスの要を担い、2得点をあげた大川が選ばれた。ヒーローインタビューで大川は「1番の美帆(櫻井、4年、千葉県立八千代)のためにも、美帆の思いを胸に戦いました」と口にした。立教は5年前から実力順で背番号をつけるスタイルをとっており、エースが1番をつける。昨年は大川が初の3年生エースとして1番を背負っていたが、今年は同期の櫻井が1番に、大川は2番となった。

櫻井は今シーズンのエースとしてチームを支えてきたが、準決勝前にけがをしてしまい、準決勝はスタッフとしてベンチに入っていた。次の決勝は、勝っても負けても学生最後の試合。完治こそしていなかったが調整を続け、決勝では選手としてベンチに控えていた。例え自分が試合に出られなかったとしても、ベンチでできることを最大限しようと心に決めていた。一緒に戦ってきた仲間を信じて、みんなが持てる力を全て出し切って、いい終わり方ができるように。

第3Qから流れが明治に変わり、第4Qには逆転も許した。苦しむ仲間の姿を見ながら、なんでこのタイミングにけがをしてしまったんだろうと思わずにはいられなかった。それでも今自分ができることをしようと考え、エールを送り続けた。

試合終了間際に折笠が同点弾を決め、明治がタイムアウトを要求。「この状況なら櫻井が戦力になる」と判断した佐藤HCは、櫻井をフィールドに送り出した。その瞬間、大川は「こんなに景色が変わるんだな」と感じた。「やっぱり美帆がいてくれてよかったなとすごく思ったし、1番の背中を見て安心できたところもあって、美帆と一緒に試合に出られて心からよかったなと思いました」

試合終了間際の逆転を狙う流れの中で、櫻井はやっとフィールドに立てた

立教で1番を背負う重みを知っているから

大川が1番から2番になった時、ふたつの感情があったという。エースという重荷が外れた楽さ、自分だけ番号が下がってしまった悔しさ。「どっちの気持ちもあったので複雑ではあったんですけど、美帆が1番を背負ってくれたおかげでここまで私たちも伸び伸び楽しそうにやってこられたし、美帆も頑張ってくれてすごく頼もしい1番だなと思っていました」

決勝で大川は櫻井の分まで点を取ると心に決めていた

櫻井は1番を背負うにあたり、これまで以上に自分が果たすべき役割を強く感じていた。自分のラクロスを追求する姿やチームへの関わり方がチームにもいい影響を与えられるよう、決して情けない行動をしてはいけない。悩む時は大川に相談し、大川も自分の悩みを櫻井に話してくれた。「お互いのことをリスペクトしていますし、それが1番と2番の絆になって、結果、アタックやチームの強さにつながったのかなと思います」と櫻井は振り返る。

昨シーズン、櫻井も1番を狙っていた中で2番になった。だが「祐季が1番をつけてくれたからこそ、伸び伸びとプレーができました」と大川の存在の大きさを口にしていた。ラストイヤーは立場こそ逆になったが、互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら力をつけ、最後の試合を笑顔で終えられることができた。

1番を背負う重さを知っていたからこそ、互いに悩みを打ち明けられた

ふたりの写真を撮る時、「ちゃんと仲がいい感じに撮ってくださいね」と大川は笑いながら言った。この4年間、最も負けたくない相手だっただろう。そんなふたりがエースとして支えてきたチームが今年、特別大会ではあるものの関東連覇を果たした。

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