陸上・駅伝

特集:第97回箱根駅伝

東海大・両角速監督「僅差でもいいから勝ちたい」 箱根駅伝でも粘り強い走りを

「4年生がしっかりとチームの柱になっている」と両角監督(写真提供・東海大学)

前回の箱根駅伝で東海大学は復路で追い上げたが、最後まで青山学院大学の背中をとらえられず、連覇を逃しての2位だった。両角速監督は選手層の厚さに課題を感じ、改めて選手を育てていく重要さをかみしめた。今年の全日本大学駅伝ではアンカー勝負で敗れての2位。箱根駅伝に向け、両角監督は「僅差でもいいから勝ちたい」と優勝へのたぎる思いをのぞかせた。

東海大は全日本大学駅伝連覇ならず2位 両角監督「諦めない気持ちで走ってくれた」

全員そろったのは9月になってから

“黄金世代”と呼ばれていた代が卒業した今シーズン、両角監督は「黄金世代といっても、(箱根駅伝)往路で言えば今の4年生3人を起用していましたし、その中で使えなかった選手も残念ながらいたので、大幅な戦力ダウンということはないのかなという風には思っている」と話す。ただそれ以上に、新型コロナウイルスがチームに及ぼした影響は大きかった。感染拡大を受けて帰省した者もおり、6月末から徐々にチーム練習を再開していったが、全員が戻るには9月ごろまでかかった。

夏合宿も全員で臨めたわけではなかった(撮影・藤井みさ)

個人で取り組んでいた練習は基本的に学生に任せ、両角監督は最低限の指導と声かけ程度にとどめた。最初は学生たちの気持ちが切れないように勢いよく励ましていたが、様々な大会が中止・延期となり、先行きが分からなくなってからはトーンを抑えた。「必要以上に声をかけても焦ってしまうかなというのがあったので、しっかり体を動かしておけよ、程度にとどめておきました」。寮に戻ってきた選手たちを見ると一人ひとりのパフォーマンスはバラバラで、個人差は大きかったと振り返る。

4年生がチームの柱

11月1日の全日本大学駅伝で東海大は2区で17位と苦しんだが、そこから盛り返し、6区には1度、長田駿佑(3年、東海大札幌)が区間新記録・区間賞の走りで首位に立った。「手応えは、粘り強い走りができたっていうことですね。学生にそういう力があったんだな、あるんだなっていうのが確認できました」と両角監督も選手たちをたたえる。その一方で、大きな失敗をしないことの大切さ、難しさを痛感させられた。

全日本大学駅伝以降はレースの代わりに合宿を重ねた。トラックで記録を出している選手もおり、レースに出ていれば結果を残せていただろうと両角監督も感じていたが、その気持ちをぐっとこらえ、箱根駅伝を見すえて取り組んできた。

4年生の塩澤(上)をはじめ、名取燎太(左)と西田壮志の「3本柱」は順当にメンバー入り(写真提供・東海大学)

箱根駅伝のエントリーメンバーを見てみると、4年生が4人、3年生が5人、2年生が4人、1年生が3人と各学年バランスよくメンバー入りをしている。「上位の16人が選ばれたということで何か特長を強調して選んだわけではないので、4年生がしっかりとチームの柱になっているというのが特徴ですかね」と両角監督は言い、特に主将の塩澤稀夕(きせき、4年、伊賀白鳳)に対しては、「彼がしっかり仕事をしてくれることがチーム全体への波及効果を及ぼすので」と期待を寄せている。

全日本で躍動した長田と石原、初の箱根路へ

全日本大学駅伝で力を発揮した長田もメンバー入りしたひとり。学生3大駅伝デビュー戦となった全日本で区間新記録・区間賞につながった要因を、「一番はけがをしなかったこと」だと話す。全体練習がストップした間、長田は地元・北海道に帰省。「練習相手が誰もいなかったので、ずっとひとりでやるっていうのがつらかったです」と振り返る。

長田(左)は初の学生3大駅伝となった今年の全日本大学駅伝で、チームを一時トップに引き上げた(撮影・朝日新聞社)

今シーズンはレースに出られなかった反面、自分のペースで練習を継続できたことが好影響をもたらし、9月の記録会で5000m13分54秒35を記録、そして全日本大学駅伝での活躍につながった。前回の箱根駅伝、6区で館澤亨次(現・横浜DeNA)が見せた魂の走りが目に焼き付いている。当時は応援する側だったが、今はチームを盛り上げる選手のひとりとして、自身初の箱根駅伝を目指している。

全日本大学駅伝で4区区間新記録・区間賞だったルーキーの石原翔太郎(倉敷)も、メンバー入りを果たしている。今シーズンはハーフマラソンのレースが軒並み中止となり、石原にとって20km級のレースは箱根駅伝が初となる。「距離の不安はすごくある」と胸の内を明かすが、だからこそ、しっかり距離に慣れるよう練習を重ねている。思い描いているのは山下りの6区。「下りが得意なので6区を走りたいと思っていて、練習でもしっかり下りを頑張っています」と意気込んだ。

ルーキーの石原は全日本大学駅伝で4区を任され、順位を11位から6位に引き上げた(撮影・朝日新聞社)

コロナ禍の中で競技をすることに対し、チームには励ましの言葉とともに「今走ってて大丈夫なの?」という厳しい言葉も届いていた。様々な人たちからの思いを受け取り、箱根駅伝に向かう今、両角監督は「そういう中で学生は自分が長距離競争にかけている、箱根駅伝に夢を持っているという思いを一層と膨らますことができたんじゃないかなと思っていますので、コロナ禍で苦しんでいた時に温かい言葉をかけてくださった方々のためにも学生は頑張ってくれると思いますので、せめて(大学そばの)平塚中継所をトップで、行きも帰りも通過できるようにできたらいいなと思います」と話す。感謝の気持ちを胸に、様々な応援を力に変え、箱根駅伝に挑む。

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