大学陸上・駅伝

特集:第52回全日本大学駅伝

東海大・市村朋樹 スピードも駅伝も全力で、チームを引っ張る選手に

合宿中のジョグ、1人で黙々と走っているのが印象的だった(すべて撮影・藤井みさ)

市村朋樹(3年、埼玉栄)は昨年3大駅伝デビューを果たし、東海大学の同学年内では一歩先に行く存在となった。9月の全日本インカレで個人としては大学に入って初の全国大会も経験。これまでの振り返りと、この先目指すものについて聞いた。

「やりきれなかった」全日本大学駅伝デビュー

自らを「スピードタイプ」だと評する市村。3大駅伝デビューとなった昨年の出雲駅伝では、単独走となった4区で区間新記録で2位。「先輩のおかげでいい結果を残せて良かったです」と記録にも満足がいった。続く全日本大学駅伝では、5区で東洋大の西山和弥(当時3年、東農大二)を抜いてトップに立ち、東海大の優勝を引き寄せた形になった。しかし区間順位は7位。これについて市村は「当日できることをやりきれなかった」と振り返る。

「アップにしても朝食にしても、いつもレースの時にやることをできなかったです。自分を貫けなくて、それが自分の中で腑に落ちない部分です。走ってる最中にもお腹が痛くなってしまいましたし」。緊張もしていたし、前を追うレース展開で優勝がかかっていることもあり、思ったような行動ができなかったのかも、と言う。「チームが優勝したことは嬉しいんですが、個人的にはあんまりよくない走りをしてしまったので、良くも悪くも成長したかなと思います」

昨年の全日本大学駅伝では5区を担当。しかし「自分を貫けなかった」と振り返る

そして年始の箱根駅伝では、16人のエントリーメンバー入りはするも、出走はかなわなかった。11月下旬に下りの練習をして良い記録が出たこともあり、6区1点狙いでいこうと決めて練習をしたが、その後にキャプテンの館澤亨次(現横浜DeNA)が復帰してきて、館澤の6区への起用が決まった。

「たらればですけど、あの時もっと(館澤が走ると)早くわかっていれば、7区とか他の区間に力を入れる練習はできたかもしれません。でも過ぎたことはしょうがないし、もし僕が当日走ったとしても、あんな記録(57分17秒で区間新記録)は出せないので、悔しいを通り越してしょうがない、という気持ちでした。あんな走りされたら無理ですよ!」と笑う。そして総合的には「個人的には(2年生は)あまりいい思い出はない年ですね」と口にした。

トラックで日本選手権を目指し、駅伝では区間賞を

自らを「スピードタイプ」という市村だが、埼玉栄高校時代には1500m4分6秒台、5000m14分24秒台と「並の選手だった」と言う。それが東海大学に入学し、高校ではやらない練習に取り組んでいたらいつの間にかスピードがついていた。

今年は全日本インカレ1500mの標準記録も突破し、個人として初めてインカレの舞台にも立った。「決勝に残れる実力もついたし、今は胸を張ってスピードタイプと言えます」と言う市村。その言葉通り、全日本インカレ1日目の1500m予選で組2着となり決勝に残ったが、決勝では前に出ることができず9位だった。レース後、「体力的な面では余裕があったけど、単純に馬力、スプリント力のなさを痛感しました」と取材に答えた。しかし全国レベルの現状を知れたことは、市村にとって大きな収穫となった。

全日本インカレ1500m決勝後、優勝した小林(鹿屋体大)に「ラストスパートはえーな!」と話しかけた

1500mと駅伝で活躍する選手というと、埼玉栄の先輩でもある館澤亨次が思いつきますが……と話を向けると「館澤さんは典型的なオールラウンダーで、僕とはちょっとタイプが違うと思います」という。「館澤さんはスピード一点張りで、スピードを武器に長い距離も戦っていけるタイプだと思います。僕は距離によって走り方を変えようという、『変幻自在』というか、そういうスタンスでいます」

館澤は感性で走るタイプ。スプリント力を上げるにはどうしたらいいですか? と館澤に質問したときも「逆立ちでもやればいいんじゃない?」と言われて市村には理解できなかったそうだ。「僕は感性よりは技術、体の使い方を意識しながら走ってきました。基本的には自己流だったり、いろんな選手のフォームを見たり。ウェイトトレーニングにも取り組んでいます」

1500mで全国の舞台に立った市村だが、もともと1500mに取り組んだのも、5000mの記録を伸ばしたいという思いがあったからだ。スピードとスプリント力をもっとつけて、日本選手権で優勝したい、トラックでもっと結果を残していきたいという思いがある。

自分たちの代は「おとなしい」学年だとも言うが、実力が上がってくるにつれて発言力もついてきたと教えてくれた

いっぽうで駅伝への思いもしっかりと持っている。チームとしては3大駅伝三冠を掲げていたが、出雲駅伝の中止で二冠をしっかり取っていこうと意識がまとまっている。11月1日の全日本大学駅伝に向けての思いを聞くと「目標を達成するために、(去年と同じ)5区を走れと言われたら走るんですが、正直主力という立場でもあるので2区、3区で走らなきゃいけないと思ってます。2連覇を目指して、今度は区間賞を狙う走りを目指して頑張っていきたいと思っています」とはっきり答えてくれた。

次世代の東海大を引っ張る自覚

ちなみに意識している選手はいますか? と聞くと、「あまり周りを気にかけて燃えるタイプではない」と言いつつも、「学内であれば学年の中で1番でないといけない、同学年のみんなには負けないという気持ちです。4年生の強い方と肩を並べられるようにがんばらないといけないと、すごく意識しています」という。

「この人達がいてくれるから安心」、そんな存在になるために。走りで結果を見せる

4年生に対しては、「この人達がチームにいれば安心だな」という存在感を感じる。「僕もそうなっていかないといけないです」と、次代の東海大学を担う覚悟もにじませた。「夏合宿ぐらいから3年生も力を出してきて、上がってきてるので今後が楽しみです」。市村たち3年生がもっと強くなれば、東海大の全日本大学駅伝連覇の確率はさらに上がっていくだろう。

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