クボタの立川理道、キャプテン5季目で新たな歴史刻む充実のシーズン
2月20日に開幕したジャパンラグビートップリーグ2021。4節を終えて5チームが開幕から負けなしの全勝で、各カンファレンス1位を争っている。その中でもチーム史上初の開幕4連勝を達成し、レッドカンファレンス2位につけているのがクボタスピアーズだ。
初の開幕4連勝で後半へ
スピアーズで南アフリカの名将フラン・ルディケとともにキャプテンとして5シーズン、チームをまとめているのがCTB(センター)立川理道(たてかわ・はるみち)だ。日本代表キャップ55を誇る。2015年ワールドカップ(W杯)で大活躍し、スーパーラグビーの日本チーム、サンウルブズや日本代表でもキャプテンを務めた日本を代表するバックスのひとりだ。
開幕4連勝を飾り、率直な気持ちを聞くと立川は「順調に進んでいると思いますし、チームの雰囲気もいいですが、そこは満足せずに、1試合、1試合、戦っていくことが大事かなと思います」とリーグ後半戦に向けて気を引き締めた。
好調の要因に関して31歳のスキッパーは「プレシーズンが長かったので、選手一人ひとりと『どんなチームにしたいのか』『どういう選手になりたいか』と時間をかけて話すことができました。また今季入ってきた選手ともチームの文化やフラン(・ルディケHC)が来てからやってきたことやビジョンを共有できた。それを土台とし、若手が試合に出て、今までいた選手も刺激を受けて、競争力が高まり結果につながっていると思います」と話した。
立川は、幼稚園から幼なじみで天理高ー天理大とともに進んだSH井上大介、元オーストラリア代表SOバーナード・フォーリーとゲームをコントロールする。「トータル的に、全体のレベルが上がってきている。大きなロック(LO)、バックロー(FL=フランカーとNo.8の総称)がチームの大きな武器となっているし、(南アフリカ代表)HO(フッカー)マルコム(・マークス)が来てセットプレーの強さはトップクラスになった。そこを軸にバックスもFB金秀隆(朝鮮大)ら若い選手も含めてパフォーマンスがよく、バランスが取れている」と手応えを口にした。
ルディケHCも選手一人ひとりとミーティングを何度も行っており、試合に出られていない選手には「なぜ出ていないのか」という説明があるという。そのため23人のメンバー外になった選手も、チームを勝たせるために、黒衣となって準備を手伝い、協力する。「チームにコミットする力がありますし、チームが一つになっている。(試合に出ていない選手が)チャンスが来た時にも力を発揮できる流れにもなってきている。それは、ここ2、3年で積み上げてきたものかなと思います」(立川)
また立川は、スーパーラグビーのブルズで2度の優勝を誇るルディケHCがクボタの指揮官に就任した2016年以来、キャプテンを続けている。他チームをみてもキャプテンは2~3年のケースが多い中、5年目は異例の長さだ。3年目くらいに替わる可能性もあったようだが、立川は「フランと僕の関係性も順調ですし、チームが上向きになっているので代える必要はないかなという話し合いの中で、今まできています」と説明した。
リーダーグループまとめる
あらためて、キャプテンとして意識していることを聞くと立川は「キャラクター的に厳しい言葉を言ったり怒ったりするタイプではないので、今まで使った言葉を言わないようにしつつ、チームがこうなりたいという部分はぶれずに、自分の素直な気持ちを話すようにしている」という。
またリーダーグループの存在も大きな力を与えてくれている。リーダーグループには日本代表FLピーター・ラブスカフニ、フォーリー、マークス、元ニュージーランド代表CTBライアン・クロッティ、LOルアン・ボタといった主力の外国人選手や、ルーキーのSO岸岡智樹(早稲田大)らも入っている。
「リーダーの外国人選手が練習中や練習外でもチームにコミットしてくれるので、僕自身、すごく助かっています。一緒になって日本人のリーダーも成長している。特にこの2年間は僕がリーダーグループをうまくマネジメントするような流れもあり、フランが現場のスタッフをうまくマネジメントしている。僕とフランの信頼関係もある。こういった関係性がチームの勢いにもつながっている」(立川)
代表への思い
立川個人も、昨季よりも調子がいいようだ。「プレシーズンが長く準備できた部分もそうですし、今までは日本代表やサンウルブズの活動も多かったので体を作り上げて準備するってことはなかったのかな。ケガとの付き合いもありました。今季は本当にスムーズに入ることができたので、自分の感覚的にもパフォーマンス的にも良いのかなと思っています」
そんな立川だが2015年W杯で大活躍した後、16年にジェイミー・ジョセフHCが日本代表の指揮官になると、共同キャプテンの一人となる。その後はサンウルブズでもキャプテンとして躍動したが、19年春、W杯を前にして日本代表から落選してしまう。
「やっぱり悔しい気持ちもありましたし、あの素晴らしい舞台を一度経験しているので、もう一度あの舞台で戦いたいっていう思いもあり、日本開催だったので複雑な感情はもちろんありました。ただ日本代表に選ばれた選手たちが、選ばれなかった選手の責任を果たすようなプレーをしてくれて、悔しいという感情とまた別に、本当に素晴らしいラグビーを見せてくれてありがとうという気持ちにもなりました。
終わってみればあの舞台に立ちたかったなっていう気持ちもありました。ただ、それはすごくポジティブに思っていますし、それがあるからこそ、このトップリーグに向けてのパフォーマンスにもつながっている。あと10年やるのは難しいので、1年、1年が勝負だと思っています」(立川)
2年後の23年フランスW杯を33歳で迎える。やはり、立川が目指すのはもう一度、桜のジャージーを着て大舞台で輝くことだ。
「もちろんトップリーグで戦っている中で、日本代表を目指しているのは変わりないです。いつ呼ばれてもパフォーマンスを出せる準備はやっていきたいと思っているので、個人的な大きな目標で言うとワールドカップに置いています。だけど、そこだけを見ているのは現実的ではないですし、今とにかくクボタにコミットして1試合、1試合、戦っていくことが、僕にとってはすごく重要になってくる」(立川)
トップ4、その先へ
3月26日からリーグ後半戦が始まる。クボタは28日の第5節、ホームの東京・江戸川陸上競技場で三菱重工相模原ダイナボアーズを迎える。その後、サントリーサンゴリアス、トヨタ自動車ヴェルブリッツと4節まで全勝中の強豪との対戦が待つ。
スピアーズが目標に掲げるトップ4、その先の初優勝に向かうために必要なことを聞くと立川は「今シーズンが(クボタに入ってから)一番、手応えがありますし、本当に特別なシーズンになっていく感覚はあるので、だからこそ、あまり先を見ないことが大事。自分たちの今までやってきたプロセスを信じてやっていく方が大きいですし、1試合、1試合、しっかり自分たちで勝利をつかみ取っていくことが大切です。まず三菱重工相模原にフォーカスしてやっていって、積み上げていきたい」と気を引き締めた。
4歳からラグビーを始め、将来的にはコーチングにも関わりたいという立川に、あらためてラグビーの魅力についてたずねると「レベルが上がっても、まったく一緒で、みんなと一つのボールを追いかけて、一つの目的を達成するためにみんなで体張るということがラグビーの楽しさだと思いますし、そこはあまり変わっていませんね」と話した。
そして「スタジアムで、(スピアーズのチームカラーである)オレンジのジャージーやベースボールシャツを着たファンがたくさんいると心強いですし、力が出ます。今シーズン、自信を持っているクボタとして、サントリー、神戸製鋼、パナソニックといった近年トップ4に入っているチームと戦ってみて、結果がどうなるか楽しみですね!」と破顔した。
現行のフォーマットでは最後のトップリーグで、クボタスピアーズの新しい歴史を刻むために、立川が先頭に立って走り続ける。