進学・就職で「好き」を諦めない、慶應ソッカー部を経てアニージャでプレーする今
女子フットサルクラブ「シュートアニージャ」は昨年、初めて関東リーグを制し、神奈川県大会でも9連覇を成し遂げた。しかしチームが目指すのは勝利だけではない。「女性×キャリア×好きなこと」を実現すること。コートに立つ選手たちは、仕事や学業と並行してプレーをしている。慶應義塾大学ソッカー部を経てアニージャでプレーする3人に話を聞いた。
体育会との両立に悩み、それでもスポーツをしたかった
石川結菜は慶應在学中からアニージャでプレーしている。小学校の時からサッカーに慣れ親しんできたものの、自分のやりたいこととのバランスに悩み、慶應ソッカー部は1年で退部。しかし学業と両立しながらプレーできるところに魅力を感じ、アニージャでフットサルを始めた。
小学校の時に草サッカーの全国大会で準優勝。中学校では男子サッカークラブに通い、県立静岡高校では男子サッカー部に入部した。そのため女子サッカーは慶應ソッカー部が初だった。「男子の中でプレーしていると、フィジカルコンタクトがあっても手加減されていたので、本気でぶつかり合うことはありませんでした。だから女子のフィジカルの強さにビックリしましたし、思っていたよりスピード感がありました」。ソッカー部の先輩たちは温かく、いい雰囲気の中でプレーできていると感じていたが、ほぼ毎日の練習とミーティングという環境では、自分がやりたいことと両立するのが難しそうだと感じた。
それでも完全にスポーツから離れる気持ちにはなれず、大学と同じ神奈川県内でスポーツができる方法を探し、アニージャにたどり着いた。アニージャの練習は週3日程度。働きながらプレーしている人が多いことに安心感がある一方で、企業からの支えを受けてプレーするクラブチームの責任も感じている。今春に慶應を卒業。社会人になってもフットサルを続けたいと考えているが、今はアニージャを離れている。「新しい環境に慣れることが先だと思っています。でもなるべく早く復帰し、また100%アニージャにも集中していきたいです」
仕事とフットサル、自分には好循環
アニージャで2年目を迎えた松木里緒は、小学1年生の時に兄の応援でサッカーを見たことをきっかけにしてサッカーにのめり込み、女子サッカーの名門・常盤木学園高校（宮城）に進んだ。チームはチャレンジリーグEASTで優勝、雪印メグミルクカップ 全国レディース大会でも優勝しており、特に全国レディース大会ではMVPにも選ばれている。大学進学にあたっても、サッカーができるというのはひとつの条件だった。その上で学業との両立を考え、慶應への進学を決めた。
慶應ソッカー部は学生主体のチームで、一人ひとりがチームの運営に関わっている。「サッカー以外でも、人間性の部分とか自立するところとかを学びました」と松木。ただ強豪チームがそろう関東1部リーグではギリギリの勝負が多く、入れ替え戦も経験している。粘り強く泥臭く戦うだけではなく戦術を練って戦うスタイルも学び、サッカーの面白さを改めて感じることができたという。
元々大学でサッカーを引退するつもりだったが、いざ引退するとなんだか物足りない。そんな時に目にとまったのがアニージャのSNS。ちょうどセミプロを導入したばかりのタイミングで、1学年後輩の石川がアニージャにいることも知っていた。試しに参加した練習で雰囲気の良さを感じ、すぐに入団を決めた。
精密機器メーカーで働きながら、平日の夜にはフットサルの練習へ。「働いた後に夜遅くまで練習してから家に帰り、また翌朝早くから仕事、という生活は確かにコンディション管理が難しいかもしれません。でも私の場合はフットサルでリフレッシュできて、『明日も頑張ろう』という好循環になっています」。繁忙期には練習に行けないこともある。それでも今は仕事もフットサルも目一杯できる日々を楽しんでいる。2年目の目標は「去年よりもっと柔軟なプレー、引き出しの多い選手になりたいです」と松木。リーグ戦で得点王やベスト5入りを狙う。
「挑戦」の気持ちから大学院とフットサル
今年3月にアニージャに加入した山本華乃は、4月から慶應義塾大学大学院に通っている。元々数字が好きだったという山本は、その数字を社会に還元していく学びを深めたいと考え、迷うことなく慶應の理工学部管理工学科を専攻。同じようにサッカーもまた、小学校の時から慣れ親しんだ存在だった。
山本は小学校の時、自分が住んでいたマンションに「一緒にサッカーをしよう」というビラが貼られているのを見て、友だちとサッカーをしたのが始まりだ。小学校の時にサッカーの全国大会で優勝、中学校の時には丸岡RUCKレディースで全国大会2連覇、高校でも横須賀シーガルズで全国大会を経験している。高校最後の大会を終えた後、大学でも続けたいという思いはあったが、学業と両立を考えると不安を感じた。そんな時にソッカー部の試合を見て、すぐに入部を決断した。「OBOGの方々を含め、サポーターの多さに驚き、いろんな人に包まれて支えられているチームなんだなと思いました」
今までクラブチームでプレーしてきた山本にとって、学生主体のチーム運営は初めての体験であり、4年間を通じて大学サッカーの魅力を一番感じられた部分でもあった。特にラストイヤーはチーム作りにも力を入れ、試合に負けた時にも「また頑張ろう！」と皆が前を向けるよう、心を砕いてきた。ただ公式戦では一度も勝てず、「後輩たちに苦労をさせてしまった」と感じている。これまで自分がOGにしてもらったように、これからはOGとして自分が後輩たちを応援で力づけていく。
引退後は学業に専念する予定だったが、山本の周りには今年9月に開幕予定の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」に挑戦する選手もおり、自分も新しいことに挑戦したいと思うようになったという。そんな時にアニージャに出会った。チームに加入してまだ日は浅いが、先輩たちに教えてもらいながらフットサルができる幸せをかみしめている。
アニージャに所属する選手たちに共通しているのは挑戦する気持ち。進学や就職などで人生のステージが変わっても、諦めることなく自分の「好き」という気持ちをプレーで表現していく。
は全力で学生スポーツを応援します。
