駿河台大が次点で伊勢路を逃す、徳本一善監督「面白いチームになっている」
第53回全日本大学駅伝対校選手権大会 関東地区選考会
6月19日@神奈川・相模原ギオンスタジアム
1位 東京国際大学 3時間56分39秒39
2位 國學院大學 3時間56分47秒04
3位 法政大学 3時間57分14秒64
4位 拓殖大学 3時間57分17秒26
5位 中央大学 3時間57分17秒61
6位 中央学院大学 3時間57分23秒16
7位 日本体育大学 3時間57分47秒90
----------ここまで本戦出場------------
8位 駿河台大学 3時間58分16秒34
9位 国士舘大学 3時間58分51秒31
10位 山梨学院大学 3時間59分07秒98
全日本大学駅伝関東地区選考会前に発表された出場校のタイム順では、駿河台大学は20校中16位だった。選考会に向けてチームが掲げた目標は12位だったが、徳本一善監督は「10位もいけるんじゃないか」と考えていた。結果は次点の8位。電光掲示板で結果が発表されたのを見ながら、徳本監督は「あ~! やっぱり足りなかったか~」と口にしたが、「8位という結果はもう十分合格点。でも課題もかなり多く見つけられたんで、すごく収穫のある大会だったなと思っています」と選手たちを労(ねぎら)った。
「10番に入れば箱根が見えてくる」
徳本監督は「箱根駅伝につれていってほしい」と請われ、2011年に駿河台大のコーチに、翌12年に監督に就任した。学生3大駅伝にはまだ出場できていない。今回の選考会ではもちろん全日本大学駅伝出場を狙っていたが、その先に箱根駅伝も見据えていた。「全日本のシードの8校を除いて、このレースで12番だったら20番だから、もっと狙って10番に入れば箱根が見えてくるよなって考えていました」。エースの清野太成(3年、飯能南)と町田康誠(3年、白鴎大足利)の調子が上がらないという不安要素はあったが、チームはひとつになって選考会に挑んだ。
1組目の入江泰世(4年、熊本工業)と池原悠月(1年、東農大二)は7000mまで併走しながら先頭集団で粘り、入江は21着、池原は23着でフィニッシュ。この時点では暫定10位だった。大きな集団でレースが進んだ2組目は、1組目よりもスローペースになった。6000mで國學院大學の木付琳(4年、大分東明)が集団から抜け出すと、続く集団のペースも上がり、駿河台大の出仙龍之介(3年、鯖江)が集団から後れ始める。もうひとりの新山舜心(2年、鹿児島)はラスト2周まで先頭集団でレースを進め、11着でゴール。出仙は31着で入り、暫定8位に順位を上げた。
3組目を終えて7位まで12秒差
3組目には清野と今年31歳になる今井隆生(4年)が出走。今井は日本体育大学時代にトライアスロン部で鍛え、その後も競技を続けた。引退後は教員の道に進み、2017年から飯能市の中学校で体育教師をしていたが、自己啓発等休業制度を利用し、2年限定で駿河台大に入学。学生たちと一緒に学び、そして一緒に走っている。今井にとっても今年はラストイヤーだ。1組目を走った入江の走りを見て、「同じ練習をしてきた自分がいけないわけはない」と自らを鼓舞(こぶ)したという。なにより、前日まで教育実習があり、今レースは自分の付き添いをしてくれた主将の阪本大貴(4年、西脇工)のためにも、持てる力を全て出し切りたかった。
3組目は日本大学の樋口翔太(3年、佐野日大)が牽引(けんいん)する大きな集団でレースが進み、清野と今井は5000mまで最後尾にいた。そこから今井が清野を引き連れてペースを上げ、集団の中ほどについた。6000mをすぎてから清野は先頭集団から離されたが、今井は食らいつく。8000mのあたりで國學院大の平林清澄(1年、美方)と中央学院大学の武川流以名(3年、島田樟誠)が抜け出し、集団がばらけた。今井は歯を食いしばりながら懸命な走りを続け、29分30秒41と自己ベスト(29分26秒99)に近い記録をマーク。今井は16着、清野は24着だった。
3組目を終えた時点で駿河台大は暫定9位ではあったが、暫定8位の日体大とは9.87秒差、暫定7位の東京国際大と12秒差にまで迫っていた。レースは最終組へ。駿河台大のジェームズ・ブヌカ(4年)は東京国際大学のイェゴン・ヴィンセント(3年)に続く2位集団を牽引するなど積極的な走りを見せ、28分11秒53の記録で5着に入った。もうひとりの町田は、単独走になりながらも自分のペースを守り、29分43秒67で30着だった。最終的に駿河台大は総合8位となり、7位で本戦出場をつかんだ日体大とは28.44秒差だった。
徳本監督の思いを受け、今井がトップチームに喝
駿河台大は今年こそ箱根駅伝に出場するため、全70人の中からトップチームとして30人を厳選し、チームの強化を図った。「本気で箱根駅伝をとりにいける選手だけ残したつもりです」と徳本監督は言う。しかしその中でも、練習でこぼれる選手がいたり、自ら引っ張らず消極的な走りをする選手がいたりなど、今井の目には全員が本気になれていないように見えたという。「全日本の選考会を走るのは8人だけだけど、その8人以外の選手がジョグとかで引かないと、絶対チームとして成熟しないと思ったんです。だから『それじゃ全然ダメだよ!』と檄(げき)を入れました」
今井は駿河台大に入学した時から、徳本監督の思いを引き受け、仲間を鼓舞する役割を担ってきた。もちろんその分、自分には人一倍厳しくあろうと務めている。そんな今井に対し、徳本監督は「今井が基礎的なことをしっかり叱咤激励(しったげきれい)してくれています。僕らが『ちょっとやりすぎだよ』と言うくらい。でも、それがすごく助かっていて、選手自身がいろんな行動を起こしてくれた方が、チームがうまく締まるし回るんですよ」
ときには徳本監督がフォローしながら、少しずつチームの当たり前のレベルが上がっている。「この半年間、当たり前のレベルを上げることをチームの共通認識としてやってきました。これはチームが強くなる大事なポイントだなって。ついていけなくなると苦しくなるんですけど、厳しいことを言えば、今はふるいにかけている時だと思っています」
そのひとつが、故障しないためのウェイトトレーニングだ。練習を継続することが一番の近道と考え、徳本監督はランニング障害についてイチから調べ、トレーナーにも注文をつけた。「選手からしたら面倒くさいですよね。練習後で疲れているんだし、残ってトレーニングをしようという意識にもなりにくい。『いや、ここが大事なんだよ』と僕が言い続けてきたらなんとなく浸透してきましたね」。今では選手が率先してトレーニングルームに向かい、体作りに励んでいる。当初はまだきれいだったトレーニングルームも、今では床がボロボロになってしまったそうだ。
特に今回の選考会で力を示したのは、ブヌカや今井、入江の4年生だった。「もう後がないというプレッシャーの中で、ちゃんと自分でプレッシャーをかけている。まぁ、いいチームですよね。僕から見ても。面白いチームになっていると思う」。徳本監督はうれしそうに明かした。
今年こそは箱根駅伝に。その思いを選手も徳本監督も、皆が強く強く胸に刻んでいる。