アメフト

奥野耕世が再びフィールドへ、関学エースQBが社会人のホークアイに加入

ホークアイに加入した奥野。ヘルメットが間に合わず関学のものをかぶった(撮影・全て北川直樹)

学生フットボール界を沸かせたQB(クオーターバック)がフィールドに帰ってきた。2021年春に関西学院大学を卒業した奥野耕世(23)が、社会人X2WESTに所属するホークアイ(大阪府箕面市)に加入。7月4日に西宮ブルーインズとの練習試合で半年ぶりにオフェンスを率いた。ホークアイは、フィールドゴール2本とセーフティーの8点を獲得したが、タッチダウン(TD)を奪えず8-8で引き分けた。Xリーグはコロナ禍、春の公式戦が中止となったため、非公式の練習試合として実施された。

関学のエース奥野耕世が選手生活にピリオド QBを続けるため行き着いたサイドスロー

「みんなでフットボールできたら」復帰決意

奥野は関学の2年生からスターターとなり、エースQBとして年間最優秀選手賞のチャックミルズ杯も2度受賞した。大学卒業とともに競技から身を引く考えだったが、5月頃に「ホークアイでやろうや」と、関学と職場の2学年先輩にあたるDE齋藤圭吾(25)に誘われた。齋藤とは学生時代から親しく、支えてもらっていた仲。関学高等部時代からの同期、OLの高木慶太も入部を決めた。その他、関学OB10人余りがホークアイに今春加入。奥野も「またみんなでフットボールができたら」と、会社の配属が決まった6月頃からチームに合流を決めた。この日が、社会人として初めての試合だった。

「みなさん良い人たちばかりで楽しかった」。チームに誘ってくれた齋藤(左)と

半年ぶりの試合TD奪えず

奥野は、もう一人のQB尾関佑哉(愛知大)とシリーズ交代で出場。尾関が先発したので、第1クオーターの2シリーズ目が初登板となった。「用意が間に合わなくて」と、関学の青いヘルメットをかぶった奥野がフィールドへ。170cmほどと小柄だが、その場で中心となる際立ったオーラもまた健在だった。自陣からはじまったオフェンスで、ランを織り交ぜながらパスを3本決めて一気に相手陣へ。ときおり笑顔も見え、表情が生き生きとしている。TDを狙ってサイドライン際に投げたパスは少し長かったが、「パスプロも持ってたんで落ち着いてやれました」と、上々な動きだった。

小柄な奥野(3)はOLにすっぽりと隠れる

奥野は前半に1シリーズ、後半は3シリーズ出場し、パスを11回投げて5回の成功。走りながら思い切りよく投じるパスの切れ、ディフェンスを察知して素早くかわす身のこなしは学生時代を思わせるもので、ときおりサイドラインの審判員も感嘆するほどの動きを見せた。

私は、奥野が大学2年生の頃からプレーを見て、写真を撮ってきた。今年の1月3日にあったライスボウル前、「これで最後になります」と報を受けた。アメフト選手としての奥野に接する機会が終わることの寂しさと、新たな門出を応援したい気持ちがないまぜの状態で試合を見届けた。あれからちょうど半年。再びフィールドで躍動し、サイドラインから仲間を鼓舞する姿を見られたことがうれしく、様々な壁を乗り越えてきた奥野の心から楽しそうな表情が染みた。

ブランクを感じさせない思い切りの良いパス。青いユニホームがよく似合う

仕事中心、練習も週1回

卒業後はテレビ局に就職し、現在は報道関係の仕事をしている。アメフト一色の生活から一転、新社会人として仕事中心の生活を送る日々。この3カ月の感想を聞くと、「やっぱり(仕事は)難しいことが多いですね」とぽつり。まだまだ慣れないことの連続のようだ。ホークアイの練習は週に1回、日曜日のみで3時間程度。試合までは、2回練習に参加しただけだったという。関学時代は、豊富な練習とコミュニケーションを積んで試合に臨んだからうまくいっていたことも、ズレとなって現れる。「練習は限られているので、タイミングが合わなかった時は、その場ですぐに話すよう心がけています」と奥野はいう。

ディフェンスのプレッシャーを察知すると、危なげない身のこなしでランに出た

「今日の出来は50点。思ったより動けたことは良かったし、TDが取れなかったことはやっぱり悔しかったです」。いまは、日本一をひたむきに目指した学生時代とは、また違った形でプレーしている。「先輩方や同期に誘ってもらって、またフットボールができています。優しい人たちばかりで、良い雰囲気の中楽しんでやれました。チームに貢献できたらうれしいです」。晴れやかな笑顔で話した。これからの奥野の取り組みも、見ていきたいと思う。

in Additionあわせて読みたい