サッカー

福岡大・谷川勇磨「成功を急ぎすぎない」考え方で目標への迷いを断つ

大学ラストイヤー、サッカーにすべてをかけてプロを目指すという谷川(写真はすべて本人提供)

福岡大学サッカー部で副キャプテンを務める谷川勇磨(4年、ヴィッセル神戸U-18)。プロになるために大学で力をつけようと考えていたが、度重なるけがに見舞われ、トップチームとして出場できたのは最終学年の今年に入ってからだ。だが、「プロになりたい」という思いはぶれない。彼の今までと、どのように思考力を身につけてきたかについて聞いた。

プロを目指すのが「当たり前」の環境で

兵庫県出身の谷川は、5歳のときに兄の影響でサッカーをはじめた。やるほどに上達して楽しくて、小学校3年生のときにヴィッセル神戸のアカデミーに入団。プロでプレーするトップチームが常に身近にある状態で、「プロを目指すのは当たり前」という気持ちでサッカーに取り組んできていた。

プロチームの下部組織はU-12、U-15、U-18とそれぞれ小、中、高と対応するカテゴリーに分けられている。カテゴリが変わる際に外部からもスカウトで選手が入ってくるため、内部から昇格する選手の人数はどんどん減っていく。その中において谷川はU-18まで昇格し、常にキャプテンを務めていた。周りからやってほしいと言われるということもあるが、自分でもリーダーシップを発揮するのは得意な方だと話す。「責任を背負うことによって、自分の力がもっと発揮できると思っています。自分のためではなく誰かのためと思った方が力が出るタイプなんですよね」

それは谷川が選んだポジションにもあらわれている。つねにMFとして試合に出続けてきた。「MFは良くも悪くも試合の流れを左右するポジションだと思っています。自分のパフォーマンスがパッとしなかったら、まとまりのないゲームになってしまう。試合の主導権を握る舵(かじ)取り役だと思っています。リーダーシップと一緒で、責任があって楽しさを感じています」

しかしU-18でプレーしている時に、この段階では実力が足りず、プロには行けないと早いうちから悟った。早い段階で大学を調べ、福岡大に決めたのは「自分のことを誰も知らない場所で、フラットな状態からやろう」と思ったから。関西ではどうしても「ヴィッセルの谷川」と見られてしまい、関東にも先輩や同期が多数進学することがわかっていたため、あえてまっさらな場所で、自分を成長させたいと考えた。

いきなりの挫折も、自分と向き合い成長

そう決めて新しい環境に進んだが、大学入学前のキャンプでいきなり右足のすねの骨を骨折してしまい、1年間サッカーができない状態になった。リハビリ、球出し、水くみなどの日々が続き、同期はどんどん活躍していく。自分と周りとのギャップに、「何をやってるんだろう?」と思うこともあった。焦りもどんどんふくらんでいった。

目指すところが遠ざかってしまったという感覚もあった

焦りやネガティブな気持ちに押しつぶされそうになったが、とにかくいろいろな人に相談した。大学のコーチ、ヴィッセルユース時代に知り合ったプロ選手、今まで携わってくれた指導者。谷川が魅力を感じて、「この人達のようになりたい」と思っている人たちだ。彼らはみな一様に、「諦めるのは簡単だから、自分と向き合って努力するしかないんじゃないか」とアドバイスをくれた。そしてとにかく自分と向き合う時間を増やし、考えに考え、そこから導き出したのが「成功を急ぎすぎない」ということだ。

「多くの人は今とか、明日成功したい、と思ってビジネス書をたくさん読んだり、枝葉の部分ばかり伸ばそうとしてしまっているんじゃないかと思うんです。それだと例えば明日だけ成功しても、その後が続かない。地道にコツコツと、長い視点を持って努力し続けるしかないなと思ったんです」。いまけがをしてプレーできなかったとしても、一生プレーできないわけではない。そのことに思い至ることができた。

長く、ゆっくり努力することが成功に近づく

そしてその次に、目標から逆算して、今何をしなければならないかを考えられるようになった。「多くの人は成功を急いで挫折してしまうんだと思います。長く、ゆっくり努力しないといけないんだなと思っています」

目先にとらわれず、目の前のことに一喜一憂せず「図太く」いること。成功している人やプロになった人にはそういう人が多いと谷川は気づいた。「そうは言っても、自分でコントロールできる範囲と、どうしようもできない部分というのがあると思うんです。だからできる部分は120%頑張るけど、自分の力でなんともならない部分は極端な話、ゼロにしてしまおうと思ったんです」

夢を実現するために、迷いなくやるべき道に進む

どうしようもならない部分というのは、例えばコーチからの評価や、周りからの目線や期待などだ。そこには「いい意味で鈍感になる」と谷川は言う。「いちいち反応してしまうと、本来やることができなくなってしまうと思うんです。今日1日何に取り組むか、成長するために何を改善していくか。そこに全力で取り組むことができれば、目標に近づくはずだと思っています」

今は、「プロになる」という目標を達成するため、サッカーにすべてをかけている谷川。その思いに、迷いはない。

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