全日本インカレ 同志社から出場する4選手、それぞれの熱き思い
天皇賜盃第89回日本学生陸上競技対校選手権大会が9月11日より開催される。新型コロナウイルスの感染拡大により、先月無観客で開催されることが決定した。通称全日本インカレと呼ばれる今大会の出場権を獲得するには、標準タイムを突破するだけでなく、全国の上位50人に入らなければならない。開幕に先立ち、この狭き門を潜り抜け、出場を決めた注目選手を男女2人ずつ紹介する。
攻めたバトンパスを目指す柳澤
女子の1人目は、4×100mリレーに出場する柳澤祐衣(2年、星稜)だ。昨年、1年生ながらも100mで全日本インカレに出場を果たした。小柄な体格から、後半に伸びのある力強い走りを特徴とする。自粛期間中はコンクリートの坂道や河川敷を走り込み、チーム練習再開後はスピードを意識したメニューに取り組んだ。「やりたいことがちゃんとできるようになった」と競技場での練習で徐々に調子を上げている。
9月3日と4日に行われた第2回学連競技会では、4×100mリレーの2走として出場した。追い風に乗ったスムーズな走りを見せ、今シーズンのチームベスト更新に貢献。全日本インカレでは高いスピードの中での攻めたバトンパスを目指す。自分の持つ最大限の力を発揮し、強豪校に食らいつく。
誰よりも強い思いでレースに挑む丸本
「なんとしてでも決勝に残りたい」。ラストイヤーに燃える丸本佳苗(4年、豊岡)は、100mハードルに出場する。昨年の同大会は、歩くのも痛みを感じるほどのけがをしながらの出場となった。準決勝まで駒を進めたものの、自分の結果を振り返り初めて悔しさを痛感。
その後、2カ月間は走る練習を止め、ウェートトレーニングで基礎を固めた。自粛期間中は自宅にスピンバイクを購入し、足に負荷をかけないトレーニングに取り組んだ。陸上部の活動では、同パートの仲間に鼓舞され、モチベーションを高めている。
数カ月ぶりに出場した試合では思うようなタイムが出なかったものの、「新たな課題が見つかった」と前向きな姿勢を見せた。全国で決勝の舞台に立つという高校生のころからの目標をかなえるラストチャンス。誰よりも強い思いでレースに挑む。
チームを勝たせる活躍に期待の青木
男子の1人目は、200mと4×100mリレーに出場する4年生の青木滋音(4年、名古屋)。昨年も同種目でインカレ出場権を獲得したが、会場の雰囲気にのまれ、予選敗退に終わる。リレーでも差をつけられ、実力不足を痛感する大会となった。
200mの前半で差をつけることを意識して練習に取り組んだ。スタートの練習に取り組み、積極的に100mの大会に出場した。だが、新型コロナウイルスの影響で多くの大会や記録会が中止となる。そんな中でも青木は「こんなときだからこそ、新しい練習場所や練習方法を見つけることができた。自粛期間はプラスにとらえていた」と語り、積極的にトレーニングを積み、自粛明けの記録会では100mで自己新記録を更新。専門の200mの前半部分で走り負けしない力がつき始めている。
インカレの目標は200mで20秒台をたたき出すこと。青木の自己ベストは21.27。「20秒台は特別で、短距離選手の誰もが憧れる数字。まだ出せていないけど、それを目標にして頑張っている」と話した。また、リレーでは2走目を任されている。各大学のエースが集まる区間で順位を上げるためには重要なポジションだ。部の大黒柱となり、チームを勝たせる活躍が求められる。
向上心を持ち続け部を牽引してきた主将・畑浦
男子2人目は400mハードルに出場する主将の畑浦佑亮(4年、大阪・生野)。昨年、400mハードルで全日本インカレ初出場を果たした。「去年の全カレは陸上人生の中でもかなり悔しい大会だった」。この気持ちを忘れず、つらい練習を乗り越えてきた。
コロナ禍の中、専門とするハードルの練習ができない時期が長く続いた。限られた範囲で積極的に自主練習を行い、7月に部活動が再開。いつ引退試合になってもおかしくないという状況の中、7月24日の大阪選手権では優勝を勝ち取った。「試合に出られることが素直にうれしくて、ただただ楽しかった」。
その後、狭き門を突破し、400mハードルでのインカレ出場権を獲得。最後の実戦練習として挑んだ記録会は「総合的に見て70点くらいだが、今年の試合は全て1位でゴールできている点は合格です」と振り返る。昨大会のリベンジに向け、弾みをつけた。
「順位よりも自分が納得できるレースがしたい。49秒代の自己ベストを狙いたいです」とインカレへの意気込みを語った畑浦。異例続きの状況で、思い描いていたラストイヤーではなかったが、向上心を持ち続け、同志社陸上部を牽引してきた。全国の舞台で輝かしい成績を残し、有終の美を飾る。