エペ団体、大舞台でかみ合った個性派集団 自力出場逃す→金メダル
東京オリンピックのフェンシング男子団体エペROCとの決勝で日本は37―33と4点差をつけ、最終9巡目を迎えた。加納虹輝に金メダルの夢が託された。
チーム最年少、23歳の加納が最後を担うのには理由がある。
初戦の米国戦、29―31の劣勢で最後に回ってきて、いきなりの5連続得点で逆転勝ちをもたらした。これで勢いがついた。五輪4連覇が有力視された世界ランク1位、フランスとの準々決勝でも、36―38の逆境から劇的勝利につなげた。
エペでは、同時に突いた場合は両方に点が入る。劣勢をはね返すには、「同時突き」をさせない技術が必要になる。加納は「僕は相手の剣を自分の剣ではじいてから突くことが多いので逆転できる」という。
決勝で最後の難関は個人戦で勝ったことがない世界ランク2位の強敵。米国戦、フランス戦と違ってリードしていた余裕もあり、攻撃に鋭さが増し、「アンカー」役を果たした。
団体戦は4人でチームを組み、3人が出場して1人が補欠に回る。日本チームはこれまで個性豊かで、皆が同じ方向を向きにくかった。チーム内に不協和音が流れた時期もある。
世界ランク4位の山田優を筆頭に15位以内に3人が入り、実は強豪国もうらやむ層の厚さを誇る半面、青木雄介監督によると「個人戦と団体戦を連戦でこなすW杯では、身内のライバル意識もあるのか、個人戦で消耗していた」。東京五輪も自力で出場権を取れず、開催国枠に救われた。
それが、自国の大舞台でやっと歯車がかみ合った。初戦の米国戦は7巡目まで22―28とリードされ、敗色ムードが漂った。そこで元世界ランク1位の見延和靖に代わって起用された宇山賢が2点差まで詰め、逆転の流れを呼び込んだ。
補欠に回った悔しさを、最高の形で晴らした宇山は「交代要員にされ、自分の力を見せつけるために暴れようと思った」。個性派集団の面目躍如だった。
(稲垣康介)=朝日新聞デジタル2021年07月31日掲載