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特集:東京オリンピック・パラリンピック

ブラサカ日本代表、ACミランの戦術で激変 世界3位のスペイン破る

5人制サッカー男子5、6位決定戦の前半、黒田智成(左から2人目)が先制ゴールを決め、喜ぶ川村怜(同3人目)、田中章仁⑦=2021年9月2日、青海アーバンスポーツパーク、川村直子撮影
5人制サッカー男子5、6位決定戦の前半、黒田智成(左から2人目)が先制ゴールを決め、喜ぶ川村怜(同3人目)、田中章仁⑦=2021年9月2日、青海アーバンスポーツパーク、川村直子撮影

 世界ランキング3位のスペインを破った。2日、5人制サッカー(ブラインドサッカー)の5、6位決定戦を制した日本の高田敏志監督は泣きながら選手たちを抱きしめた。「うれしいの一言です」。初めてのパラリンピックで5位に入った。

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 2004年アテネ大会で採用された5人制サッカー。02年に代表が発足した日本はアジア予選を突破できない状況が続いていた。転機となったのが15年の高田監督の就任だ。2年前からGKコーチとして代表に携わっていた高田監督は選手と話す中で気づいた。「彼らは障害者だからできないというのを嫌がる。みんなと同じサッカーをやりたいと思っている。だから、僕は自分の知っているサッカーを教えた」

 大学までGKとしてプレーした高田監督は指導者をめざし、欧州へ渡った経験がある。ドイツの強豪バイエルンミュンヘンやイタリアの名門ACミラン、パルマで研修を受けた。そこで学んだのが分析の手法だ。「サッカーで生じる現象を一つずつ分解して、データにし、なぜそれが起きたのかを突き詰めていた。日本との一番の差はそこだった」

 目の見えない5人制サッカーの選手たちに、欧州のトップクラブで学んだことを応用してたたき込んだ。

 味方同士の距離を3メートル以内に保ったまま相手を囲む守備を磨き、ドリブルでは簡単に抜かれないようになった。低酸素トレーニングを導入して体力を強化。選手の走行距離や心拍数を調べ、交代のタイミングをパターン化した。

 02年から代表に選ばれている黒田智成は「新しい手法で、サッカーをたくさん勉強させてもらった」と感謝する。

 5、6位決定戦。決勝点は選手とボールの動きを細かく決めていたセットプレーから生まれた。川村怜(りょう)が右CKで浮き球のパス。バウンドしたボールのかすかな音を聞いた黒田が右足のダイレクトで決めた。

 黒田は「奇跡のようなゴール」と言いつつ、偶然ではなかったことを強調した。「怜のイメージと自分のイメージとがぴったりシンクロしてあのシュートが決まった。自分は信じて右足を振り抜いた」

 高田監督は言った。「目が見える僕でもできないプレー。だけど彼らは『人間の可能性を証明したい』と、たくさん練習してきた。それがここでできたことが、本当にうれしい」

 「サッカー」に向き合った6年が生んだスーパーゴールだった。

(岩佐友)

=朝日新聞デジタル2021年09月02日掲載

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