野球

特集:2021年 大学球界のドラフト候補たち

慶應義塾大学の正木智也、個人でもチームでも最高の形で締めくくり次の舞台へ

春の早慶戦で通算10本目の本塁打を放つ慶大の正木智也(撮影・全て朝日新聞社)

東京六大学野球で連覇を目指す慶應義塾大学の打線の軸に座るのが正木智也(4年、慶應義塾)だ。チームは春季リーグ戦に続き34年ぶりに全日本大学野球選手権も制し、秋のリーグ戦と明治神宮野球大会を合わせた慶大初の「四冠」を見据える。春はリーグ4本塁打、12打点で打撃二冠だった正木は「三冠王」を目指し、リーグ途中の10月11日に開かれるプロ野球ドラフト会議を待つ。

春は打撃二冠、目指すは三冠王

身長182cm、体重90kgの正木は慶応義塾高校では1年秋の新チームから打線の中軸を担ったが、甲子園には届かなかった。2年の夏は神奈川大会の決勝で横浜に敗れ、秋は県大会を制して関東大会8強だったが、選抜大会には選ばれず。最後の夏も神奈川大会準々決勝で桐光学園に敗れた。慶大に進み、1年春には神宮デビュー、2年春から外野手のレギュラーとなり、優勝した2年秋と3年秋(2位)はベストナインに選ばれている。

大学選手権首位打者の渡部遼人(左)とは中学時代同じチーム、高校最後の夏は渡部がいた桐光学園に敗れた

今春はチーム事情で一塁を守ったが、優勝争いをしていた立教大2回戦で好調だった宮海土(みや・かいと、3年、國學院栃木)から放った勝ち越し3ランなど計4本塁打はどれも価値ある一発だった。2年春から2、1、1、2、4と本塁打を積み上げ通算本数を2桁に乗せた。3季ぶり38度目のリーグ優勝を飾り六大学王者として臨んだ第70回全日本大学野球選手権では、準決勝に続いて決勝でも先制本塁打を放ち、大会の最高殊勲選手に選ばれた。

カギは高めへの対応

学生最後のシーズンに向け、高めの球への対応に取り組んできた。正木は「チーム全体としても個人としても、試合の中で甘い高めからくる変化球に対しての見逃しが多かった。もう少し長打を増やそうという狙いがあり、長打は高めの球を打つことで増えていくので、そこに対しての打ち方というのを意識してやった」と振り返る。どちらかと言えばローボールヒッターで、これまではベルト付近や低めに対する打ち方を意識することはあったが、高めの打ち方を意識することはなかったという。堀井哲也監督も春よりは高めの球を力強くはじき返す力がついたとみている。

春の早慶戦1回戦の四回、同点本塁打を放ち生還する

内野陣が充実してきたこともあり、正木の守備位置は再び外野に戻る。「打撃への影響は、外野をやっていた時もファーストをやっていた時もそこまで感じることはない」と言い、「外野に戻って、改めて外野は外野の難しさを感じた。内野をやったことで、それが外野に生かされたこともあり、やってよかったと思う」と野球の幅を広げることができた。

今年の慶大は、野球はもちろん、環境整備と生活習慣に力を入れて取り組んできた。充実した春を終えた後、福井章吾主将は「時間の使い方やグラウンド周りをもう一度、チームとして見直した」と手綱を緩めることはなかった。同じように生活面から見直して、2018年度に22年ぶりに大学日本一に復活した明治大学ラグビー部のドキュメンタリーを見るなどして意識を高めてきた。

全日本大学選手権決勝で先制本塁打を放つ

正木が個人的な目標に掲げる三冠王には春.257でリーグ26位だった打率の向上が欠かせない。「これまでの最高打率が.378(3年秋=リーグ3位)なのでそれを上回るように4割ぐらいの打率を残す高い目標を置いてやっていきたい。ホームランと打点は春を超えられれば、それなりの結果はついてくると思う」と意欲をみせる。高めへの対応が実り、春はチームでノーヒットに抑えられた法政大学の三浦銀二(4年、福岡大大濠)ら好投手を打ち崩せれば、19年秋の慶大の先輩、郡司裕也(中日ドラゴンズ)以来の三冠王もみえてくる。

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