明治大期待のルーキー・尾﨑健斗 予選会の悔しさを飛躍のきっかけに
第98回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会
10月23日@陸上自衛隊立川駐屯地周回コース(21.0975km)
1位 明治大学 10時間33分22秒
尾崎健斗 個人114位 1時間04分29秒
10月23日に行われた第98回箱根駅伝予選会。前回大会明治大は本戦11位で惜しくもシード権を逃し、悔しさをぶつける形で臨んだ今大会は2位と4分以上の差をつけ圧倒的なレースを見せた。その中で唯一の1年生として出走を果たした尾﨑健斗(浜松商)はチームメイトも認める実力者だ。駅伝主将・鈴木聖人(きよと、4年、水城)は「ケガから復帰して調子が上がってきているし、やはり強いなと思う」と期待を寄せている。将来の明治大競走部を担うルーキーに注目が集まる。
自分で考える力を磨いた高校3年間
尾崎が本格的に陸上を始めたのは高校入学時。それまではテニスと掛け持ちしながら陸上を続けていたが、大学や実業団などの道を考えた上で陸上を選んだ。元マラソン選手の母の影響もあったという。「特別指導とかはしてもらっていませんが、普段から『ここストレッチした方がいいよ』などアドバイスを受けていました。特にメンタル面で支えになってくれました」
高校は静岡県の強豪・浜松商業高校。「平日はコーチがいないため自分で(練習を)考えてやらなければいけない環境で、そういう力は大学でも必要だなと感じていました」。1年次は練習についていくのが精一杯だったが、先輩に食らい付いていくことで記録を伸ばしていった。2年次にはチームのエースに成長。静岡県代表で都道府県駅伝にも出走した。「想像以上にいい走りができて(1区区間7位)、何より全国の強い選手と競り合う経験ができました。今思えば僕の中ではすごく重要な大会だったと思います」
最終学年になり全国高校駅伝(都大路)を経験し、5000mでも13分54秒88と現在の静岡県高校記録をマーク。卒業後は「考えてやらないと強くなれない環境」である明治大に入学した。しかし、高校時代と比べハードになった練習から入学早々にケガをしてしまう。その後もケガを繰り返し予選会まで公式戦経験はゼロ。「悔しさはありましたが、結果を出すためには我慢するしかありませんでした」。悔しい思いを経験しただけに、この夏にかける思いは強かった。「1次、2次合宿をしっかりこなせているので、今まで出遅れてしまった部分を挽回できるように頑張っていきたいです」。合宿中の取材でこう話してくれた尾﨑。長い夏が終わり、駅伝シーズンの幕開けとともにチーム内でも頭角を表し始めた。
「力不足だな」公式戦初レースで痛感した差
予選会前の取材でコンディションについて問われると「ケガなくしっかりとチームの練習の流れに乗れています。疲労とかも特別あるわけではないので、いい流れのまま来ていると思います」と答えてくれた。その理由として「ケガのサインを気にかけて練習する」ことを挙げた。
ここまで多くのケガに苦しみ、走れないもどかしさや悔しさを人一倍味わってきた尾﨑。その経験があったからこそ「ケガのサイン」は決して見逃さない。自分で考える能力と自分で気付ける能力を持ち合わせたことでさらなる成長を遂げた。エントリーが決まった時の心境は「ケガをしてきて予選会も間に合わないだろうと思っていましたが、こつこつやってきてここまで戻ってくることができました」と振り返る。尾﨑にとっては予選会が公式戦初レース。特別な思いを胸に当日を迎えた。
当日は快晴となった立川駐屯地。明治大勢はエース格の鈴木と手嶋杏丞(きょうすけ、4年、宮崎日大)が先頭集団に付き、その他の選手は単独走という形でレースが進んでいく。「序盤から後ろの方のスタートとなってしまい、精神的余裕がない状態で走らなければなりませんでした」。中盤から後半にかけて櫛田佳希(3年、学法石川)、児玉真輝(2年、鎌倉学園)らは日本人トップ集団へつけたが、そこに尾﨑の姿はなかった。
明治大は10時間33分22秒で2位の中大とは4分以上の差をつけトップ通過。加藤大誠(3年、鹿児島実)は日本人2位の好走を見せた。尾﨑の結果は64分29秒。チーム内順位では10位に入り「悔しい部分も多かったですが、最低限チームに貢献できたのは良かった」。しかし目標の63分台に届かなかった要因として「15キロ以降の失速をしてしまった」。一方で「(先輩たちは)15キロからペースが上がって、最後もスパートをかけていたのでそういったところで差が出ていると感じました」。他大学の選手だけではなく、チームの先輩たちからも多くの収穫を得る機会となった。
予選会の悔しさを糧に見据える全日本、箱根
予選会も終わり、明治大もいよいよ本格的に駅伝シーズンに突入する。初陣は昨年度3位に入った全日本大学駅伝。尾﨑もエントリーメンバーに入っている。「先輩たちが強いので走るのは難しいと思いますが、残り期間しっかり練習をしていきたいです」。その後は記録会や競技会を挟み、箱根駅伝を迎える。
山本佑樹駅伝監督は尾﨑について「(予選会で)20キロの距離をまとめて走ったというのは、十分箱根駅伝本戦につながると思う」と評価した。尾﨑自身も「本戦では予選以上の力を付けた状態で納得のいく走りをしていきたい」と箱根を見据えている。古豪復活へ、ルーキー尾﨑健斗の活躍に期待がかかる。