バレー

特集:全日本バレー大学選手権2021

日体大・市川健太主将「対応力」を磨き続けてきた1年、全カレ準優勝の悔しさを今

市川はこの1年、「強いチームに勝つために何をすべきか」を考えてきた(撮影・全て松永早弥香)

全日本インカレ決勝で何もできずに敗れた悔しさから1年。日本体育大学の主将としてチームを牽引(けんいん)する市川健太(4年、 大村工業)は、秋季リーグを制した自信だけでなく、昨季とはまた違う手応えを感じていた。

「去年は(コートに立つ)7人で戦っている感覚が強かったですが、今年は積極的にメンバーチェンジができるし、それぞれの個性や長所を活(い)かしながらも、誰が出ても同じようにディフェンスできる強みがある。(ベンチ入りの)14人全員で戦えている実感があります」

準優勝の悔しさを胸に、頭を使ってバレーと向き合う

目の前で見せられた4連覇。決勝までいけたという喜びも打ち砕かれるくらい、昨季の早稲田大学に圧倒的な力の差を突きつけられた。相手の攻撃に対して、磨き上げてきたディフェンスも思うように機能せず、サーブで攻められ、相手にブレイクチャンスを与える一方、仕掛けるべき攻撃も通らない。

「決勝でボコボコにされて悔しかったけれど、それ以上に今の自分たちの力ではそうなるよね、と。優勝するために、ああいう(昨季の早稲田大のような)強いチームに勝つために何をすべきか。今まで以上に頭を使った1年でした」

昨年の全日本インカレ決勝で早稲田大の強さを見せつけられた一方で、自分たちが目指すべきものも見えた

公式戦や練習試合が軒並みなくなった昨年から、合宿ではボール練習やウェートトレーニングに加え、「考える」時間を増やした。ポジションごとにそれぞれが自分に足りないもの、今伸ばしたいことは何かを考える。それも自分だけで完結するのではなく、同じポジションの選手から助言を受けることで気づきを得て、フィードバックする。徐々にその対象を個人からポジション全体、チームへと広げることで、自然に課題が浮き彫りになり、取り組むことも明確になったと振り返る。

「ミーティングでも、頭を使いながらバレーボールと向き合うことができた。そうやって積み重ねることができたから、曖昧(あいまい)に『こうしよう』と思うのではなく、『これをやればいい』『これはやっちゃダメ』というのが今まで以上にハッキリしました」

「藍がいないと勝てない」と言われるのも悔しい

昨季まではある程度試合前にチームとして戦う形を定めて臨んでいたが、試合になれば相手の調子や相性、事前の準備だけで対応しきれるものばかりではない。特に「最初のセットを相手のペースで進められるとそのままズルズル負けパターンになることも少なくなかった」という反省を活かし、戦い方だけでなくマインドそのものを変えたと市川は言う。

「目の前の1試合を、どんな状況になっても勝ち切る。対応力を1つのテーマにして取り組んできました。例え2セットを取られても3セット目からは戦い方そのものを変えるのも対応力だし、相手に対して『じゃあ次はこうしてみよう』と自分たちが変化するのも対応力。試合の中でも成長できているのを実感しています」

自分たちが変化することも含めた「対応力」を意識して、チームを鍛えてきた

顕著だったのは、秋季リーグの日本大学、筑波大学、明治大学との試合。全て相手に先行されたが、リードされた状況から戦い方を変えることで好転し、勝利を収めた。勝ったというただの結果だけでなく、チャレンジした成果が結果につながった事実が自信となり、秋季リーグは早稲田大との全勝対決を制して優勝。東京オリンピックを終えて以後、コンディション調整に務めた高橋藍(2年、東山)が最後の2戦で期待通りのパフォーマンスを見せたのもチームにとって収穫であり、新たな刺激が加わったと市川は言う。

「藍もオリンピックを経験して、今まで以上に相手との勝負を楽しんでいるのが分かるし、もともとバレーはうまいし、すごいヤツだったけど、更にすごいな、と(笑)。でもだからこそ、『日体は藍がいるから勝てる』と言われるのも、『藍がいないと勝てない』と言われるのも悔しい。見てろよって思います」

周りを活かして、相手を圧倒する

自身も高校時代からアンダーカテゴリー日本代表に選出されるなど、様々な経験を重ねてきた。リベロとして、レシーブ力に自信はあったが、現役時代はリベロとして日本代表にも選出された山本健之監督に「相手が打つ瞬間まで見て動け」とたたき込まれ、どんなボールにも反応する新たなスキルも習得。これまで以上に守備力にも磨きがかかり、大学の4年間はリベロの醍醐味を味わう時間でもあった。

「リベロは自分で点を取ることができないですけど、“コイツが上げれば絶対点につながる”という1本がある。周りを活かして、相手を圧倒する。単純なレシーブだけじゃない面白さが、リベロにはあるんです」

リベロだった山本監督の下で、市川(右端)はリベロだからできる戦い方を学んだ

11月29日、最後の全日本インカレが開幕する。トーナメントの連戦はどの試合も全て負けられない1戦ばかりだ。最後に目指すべき場所へ立つために。市川が掲げる目標にブレはない。

「ここに勝てばいいではなく、全部のチームに勝たないと優勝できないのが全日本インカレ。でも、どんな相手に対してもボールを落とさないことが全てだと思うし、ボールを落とさなければ絶対に勝てる。泥臭くてもとにかくつなげて、つなげて、落とさない。そういうバレーができれば、絶対勝てる自信があります」

秋季リーグを制したおごりなどサラサラない。全ての試合に総力を尽くし、4年間の成果と思いを出し切るだけだ。

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