バレー

特集:全日本バレー大学選手権2021

大体大がフルセットの末に明治大を下す、架谷也斗主将「勢い」も力に主導権を握る

フルセットの末に大体大が明治大に勝利し、選手たちは喜びを爆発させた(撮影・全て松永早弥香)

第74回 全日本大学男子選手権 2回戦

12月1日
大阪体育大学 3(25-23.21-25.25-22.22-25.15-13)2 明治大学

11月29日、全日本インカレが開幕し、12月1日には男女ともに2回戦が行われた。大阪体育大学は1回戦で北翔大学を下し、2回戦が初戦となった明治大学と対戦。勝利の瞬間、コートに歓喜の輪ができた。ビクトリーポイントを自らのスパイクで決めた大体大のエースで主将の架谷(はさたに)也斗(4年、石川県工)の声も弾む。

「負けたら終わりで相手は格上。家族や友達、応援してくれる人たちのいろんな思いや顔が浮かんできました。何が何でも勝たなきゃいけない、と思いっきり打ちました」

ピンチサーバーの篠森「1球1球に全てをかけた」

関東1部秋季リーグ6位の明治大に対し、関西1部リーグ6位の大体大。チームとしてだけでなく、選手個々のキャリアも相手が上で、高校時代も「全国大会出場」が目標ではなく「全国優勝」を目的としてきたエリート揃(ぞろ)い。

とはいえ、シード校の相手はこれが初戦で、自分たちは昨日勝利した自信がある。「とにかくサーブで攻めて、相手を勢いでそのまま飲み込んでしまおう、と話して臨んだ」と架谷が言うように、第1セットから大体大が主導権を握った。事前の分析から明治大はミドル中心の攻撃が多いことを踏まえ、各々がベストサーブで攻めることを徹底した。

架谷は攻めのサーブで流れを大体大にもたらした

もちろんそれはスタメンでコートに立つ選手ばかりでなく、ワンポイントで投入される選手も同様。象徴的だったのが、リリーフサーバーとして送り出された篠森勇希(2年、松山工)だ。

昨年の秋季リーグではスタメンで試合出場していたが、サーブの効果率はマイナスでいい結果を残すことができず、今大会はスタメンを外れた。その悔しさと、「試合に出られるのは当たり前じゃないのだから、チャンスが回ってきた以上、何が何でもつかむ」という強い意志。大会前から、ジャンプサーブに入る前のルーティーンや、トスや助走、「ピンチサーバー(リリーフサーバー)は1回ミスしたら終わり。1球1球に全てをかけた」という練習の成果が最高の場面で発揮された。

リベロの堀田が声掛けでチームを支える

1、3セットを大体大、2、4セットを明治大が取り、2-2のタイスコアで迎えた最終セット、11-10と大体大が1点をリードした場面で篠森がコートへ。何をすべきか、覚悟は決まっていた、と振り返る。「勝負の場面で(サーブを)入れにいっても、格上の相手には簡単に切り返されているのが目に見えていた。前のセット(第4セットでもリリーフサーバーでサービスエース)でも結果を出していたので、自信だけ持って、思いきり打ちました」

クロスに打ったサーブはそのままノータッチで明治大コートに落ち、12-10。一気に盛り上がる仲間と喜びを分かち合いながらも次の瞬間は冷静に、同じルーティーンで今度はストレートに打ったサーブも相手のレシーブを崩し、ダイレクトでチャンスボールが返ってきたが、相手ブロックもすぐさま対応し、大体大のスパイクをシャットアウト。架谷とともにチームの2枚エースとして活躍し、大事な場面ではやる気持ちがブロックにかかり、肩を落とした松岡大樹(4年、高松工)に声をかけたのはリベロの堀田晃雅(4年、社)だった。

「架谷は喝を入れたら『ヨッシャ!』と燃えるタイプだけど、松岡は力が入り過ぎてしまうタイプ。2人とも個性があって、それぞれ違うので、ブロックされた時の声掛けも微妙に違う。(第5セット終盤の場面では)松岡を笑かそうと『相手のブロック、あれ人間ちゃうよ。機械やろ。止められてもしゃあない。むしろ決まる方がすごいで』って。リベロができることはレシーブしかないけれど、ああいう時にかけられる声もあると思って、自分の役割に徹しました」

それぞれがやるべきことを徹する。まさにその言葉通り、最後の1点を取りきるまで全員が各々の役割を全うした。

“魅せる”バレーで恩返しを

第5セットも序盤は5-3とリードしながら明治大に5連続得点を許し、5-8と15点先取のセットで大きな3点ものビハインドを背負った。だが、相手に傾きかけた流れを再び引き寄せた架谷のレフトからのスパイクで再び蘇り、山崎泰雅(1年、鎮西)のブロックや松岡のスパイクで盛り返し、最強のリリーフサーバー篠森の活躍で突き放す。

全員で取り、全員でつないだ1点を守り抜き、最後は決めるべき人が決める。昨年の全日本インカレは初戦敗退を喫した大体大が、まさに“最高”のチームワークと積み重ねたバレースタイルを発揮し、明治大をフルセットの末に退けた。

一人ひとりが自分が果たすべき役割を全うした(右から架谷、堀田、篠森)

試合中は「楽しもう」とかけ合ってきた声が、勝利の瞬間は「ヨッシャー!」と絶叫のごとく響き渡り、皆で喜びを分かち合う。自らの役割を果たし、ベンチで祈るように最後の瞬間を見ていた、という篠森が笑顔で誓う。

「嬉(うれ)しすぎて、涙が出ました。支えてくれる人たちにも伝わるような、“魅せる”バレーで1個でも多く勝って、恩返ししたいです」

会心の勝利でベスト16進出。どんな相手にもひるむことなく食らいつき、サーブで攻める。最高に楽しいバレーを、明日も精いっぱいやりきるだけだ。

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