バレー

特集:全日本バレー大学選手権2021

愛知学院大・赤星伸城主将「悔いはありません」、鎮西を経て自由な発想で戦った4年間

鎮西時代に二冠を達成した後、赤星は愛知学院大に進んだ(撮影・全て松永早弥香)

第74回 全日本大学男子選手権 3回戦

12月2日
愛知学院大学 0(19-25.16-25.10-25)3 近畿大学

負けて終わっても、悔いはない。愛知学院大学の赤星伸城主将(4年、鎮西)の表情は清々(すがすが)しかった。

「昨日(の東亜大学戦)も今日も、これが最後の試合になるかもしれない、と思って臨みました。だから何も縛らず『楽しんでやろう』と。思いっきり、自分たちがやりたいことをやって爆発した結果が昨日出たので、今日負けても全然悔いはありませんでした」

強豪・鎮西で「余裕はありませんでした」

鎮西高校(熊本)3年生の時には、インターハイと春高で二冠を成し遂げた。鍬田憲伸(くわだ・けんしん、中央大4年)、水町泰杜(たいと、早稲田大2年)の両エースを擁し、大会前から優勝候補の大本命と目される。期待されることは嬉(うれ)しいし、苦しい練習をしてきた以上勝ちたいと思う一方で「絶対に勝たなければいけない」と過度なプレッシャーを感じ、春高初戦の直前に体調を崩すほど追い込まれた。それでも重圧に打ち克(か)ち、最後に勝って終わることができたのはただただ素晴らしい、と周囲は見るが、当時を振り返り、赤星は苦笑いを浮かべる。「上げれば決めてくれるエースがいるのは心強いけれど、楽しいと感じられる余裕はありませんでした」

決定力を高めるだけでなく、ここぞという勝負所でも逃げずに決められる精神力を磨く。そのために鎮西ではエース勝負を重んじ、相手ブロックが2枚、3枚つこうとエースに上げ、エースはそこで決めなければならない、と全員で貫いてきた。だがセッターとしては、大エースに託し、得点を取ってくれるのはありがたいが、時に相手の裏をかくようなゲームメイクをしてみたい、と思うのも自然なこと。

「とにかくバレーボールを楽しみたい」という思いを持って、赤星は大学バレーと向き合った

赤星も愛知学院大に入学後は「とにかくバレーボールを楽しみたい」と、自由な発想でのゲームメイクを磨いた。エースに託すだけでなく、相手が「ここはエースに上がるだろう」というところでミドルを使ったり、オポジットに上げてブロックをノーマークにしたり、枚数を減らしてスパイカーに気持ちよく決めさせる楽しさを味わった。

「勝たなければいけない」より「やりたいことをやってみる」

最後の全日本インカレ、愛知学院大の初戦となった12月1日の2回戦・東亜大戦でも、「こんな風にやったら面白いんじゃないか」と思うコンビを次々試し、得点を重ねるたびにチームが勢いづいた。3回戦の近畿大学戦でもミドル、レフト、ライトと様々な場所から攻撃をしかけ、劣勢になってもとにかく楽しむ。高さで勝る相手と対峙(たいじ)しても、「クイックを打つのも、ただその場から打つだけじゃなくて、動きながら打ったら面白いんじゃない?」とその都度チャレンジし、決まれば盛り上がる。「勝たなければいけない」ではなく「やりたいことをやってみる」。大学の4年間で磨いたバレーを存分に味わい、全力で楽しんだ。

「愛学が自由だったのもありますが、自分自身も自由に楽しむことで、ちょっとずつプレーも良くなって、気持ちに余裕が出た。同じように、後輩たちもその時々で『これやってみたら面白いんじゃない?』『カッコいいよね』というアイデアをどんどん出して、楽しんでほしいです」

みんなでやってみたいプレーを考え、実践し、ともに楽しみながらバレーと向き合ってきた

東海リーグでは対戦できない関東や関西、九州など様々な相手と対戦できるのも全日本インカレの楽しみだ。特に鎮西高でともに戦ってきた仲間の存在は離れていても常に刺激をもらえる存在だった、と振り返る。

「中大とは練習試合をする機会が多かったので、鍬田との対戦はもうお腹いっぱい味わいましたけど(笑)、水町や荒尾(怜音、2年)がいる早稲田とはやってみたかったです。僕が知っている中で、一番バレーがうまいのが水町なので、これからも楽しみだし、応援しています」

高校での全国優勝から4年。ベスト16で終わった学生最後の大会を最後まで楽しんだ。

「もうこれで十分というぐらい、バレーボールをやり尽した気持ちです」

最後は笑顔で、学生生活の締めくくりに胸を張った。

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