フィギュアスケート

特集:フィギュアスケート×ギフティング

関大・木科雄登 コロラド合宿で養った4回転の感覚、シニアで再び世界の舞台へ

木科にとって今年の全日本選手権は6年連続6回目の出場となるが、シニアとしては初の舞台となる(代表撮影)

昨シーズン、世界ジュニア選手権出場を目指していた木科(きしな)雄登(関西大2年、金光学園)は、全日本ジュニア選手権4位で世界ジュニア選手権の最終予選である全日本選手権への出場権を獲得した。しかし、全日本ジュニア選手権を終えた翌日、新型コロナウイルスの影響により、世界ジュニア選手権の中止が決定した。目指していた大会への出場は叶(かな)わなかったが、なおのこと、最終目標である「冬季オリンピック出場」への思いは強い。

島田高志郎と三宅星南との3人で表彰台を独占

5歳の時、通っていた地元・岡山の体操教室主導で行われたスケート教室に参加したのが、フィギュアスケートとの出会いだ。その時は体操教室の友達と一般営業の時間中に滑っていたが、そこでジャンプの練習している選手を見て「やりたい!」と思い、帰るなり母にそのことを伝えた。当時は体操教室の他、水泳やピアノなどたくさんの習い事をしており、忙しい日々を送っていた。小学校に上がるタイミングで「スポーツの中で何か1つやりたいことある?」と母に聞かれ、数ある選択肢の中から選んだのがフィギュアスケートだった。

スケート教室に入った時、担当してくれたのが今もサポートをしてくれている無良隆志コーチだ。選手を目指して練習を開始した頃、息子の無良崇人さんも無良コーチの元で練習をしており、無良崇人さんは木科の憧れの存在であった。同じ貸し切りのリンクで練習する機会も多く、ジャンプの跳び方や練習の仕方など、自然と真似(まね)をするようになっていた。

また同じリンクの別のコーチの元には、同じ歳の島田高志郎(早稲田大2年/木下グループ、就実)や三宅星南(せな、関西大2年、岡山理科大学附属)が練習しており、競技を始めた頃から互いを認識していたという。身近なところで日々切磋琢磨(せっさたくま)しながら練習に取り組み、その結果、ノービス最後の年の全日本ノービス選手権では、3人で表彰台を独占した。

ジュニアでの日々は、シニアを前にして「世界」を知る機会となった(撮影・諫山卓弥)

ジュニアに上がってからは、ジュニアグランプリなど様々な国際大会に出場して経験を積んだ。そんなジュニアで戦った期間を、木科は「世界の舞台がどういった世界なのかを学ばせてもらい、シニアで戦うための準備期間だった」と振り返る。

「大阪で頑張ってこい」無良コーチに背中を押され

2018年に無良崇人さんが競技生活に別れを告げ、一緒に練習できる機会がなくなってしまった。木科にとって無良さんと練習できる時間が刺激となっていたため、急に目標とする人がいなくなり寂しい毎日を送っていた。その様子に無良コーチが気づき、「濱田(美栄)コーチの元で練習をしないか?」と提案をしてくれた。「大阪で頑張ってこい」と背中を押してもらい、高校3年生の時に完全に拠点を岡山から大阪に移した。当時、濱田コーチは関西大学のリンクを練習拠点としていたこともあり、木科は学業とスケートを両立するため、関西大学社会安全学部への進学を決めた。

大学では所属する社会安全学部の授業だけでなく、栄養などアスリート生活にも生かせる学びも得ている(代表撮影)

入学当初はコロナ禍ということもあり、リモートでの授業となった。社会安全学部では、地震が多い日本で生きていくために必要な防災や日々の安全について学ぶことが多いが、木科は栄養の授業などアスリートとして必要な授業も選択している。

今年から部活の規制が緩和されたこともあり、時間の合う時は部活にも参加。大学生からフィギュアスケートを始めた部員に、先輩後輩関係なく指導をすることもあるという。また、濱田コーチが拠点を京都の木下アカデミーに移したため、現在は主に京都で練習をしているが、岡山に帰った時は無良コーチからアドバイスを受けている。

4回転と振り付けのために再びコロラド合宿へ

今シーズン、夏に腰をけがしてしまい、思うように練習ができない日々が続いている。全日本選手権への最初の予選となった10月の近畿選手権では、ジャンプを入れずにプログラムを滑った。続く11月の西日本選手権では、1週間前よりジャンプの練習を再開し、トリプルの数を制限して演技をした。できる範囲で力を出した結果、3位となり、全日本選手権への自信にも繋(つな)がった。ジュニアの時から強化選手に選ばれているため、「引き続き強化選手に選ばれることはもちろん、全日本選手権では一つひとつの技のクオリティを高く、クリーンで完璧な演技を滑りたい」と語った。

全日本選手権(12月23日開幕)ではけがの影響でプログラムに入れるのは難しそうだが、現在、4回転の練習にも取り組んでいる。以前、アメリカのコロラドに合宿に行った際、ジャンプに高さが出やすい標高が高い環境でいい感覚をつかむことができた。今はコロナ禍ということもあって渡航は難しいが、振り付けも兼ねてまた春休みなどに合宿をしたいと考えている。

コロラドでの合宿は1つのきっかけにもなった(代表撮影)

そんな中、知人にスポーツギフティング「Unlim(アンリム)」を紹介してもらい、いいきっかけだと感じた。「ファンの方と一緒に頑張れるサービスだなと思い、参加することにした。また支援はコロラド合宿のための費用に活用させていただきます」

間もなく開幕する全日本選手権は、今シーズン初の有観客試合となる。ショートはマイケルジャクソンの曲を使用し、ジャンプ3つ終えた後のステップは、観客も一緒に盛り上がるプログラムになっている。フリーはクラシックで、ボーカルがない分、自分の中から溢(あふ)れるものを表現し、サポートしてくれている全ての人に感謝の気持ちを込めて滑りたいという。

トリプルアクセルの調子も上がっている今、大勢の人たちの前で4回転を披露したいという思いも膨らんでいる。ジュニアでは手応えを実感できた世界の舞台に、木科雄登が再び挑む。



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