陸上・駅伝

特集:第98回箱根駅伝

箱根駅伝2大会ぶり優勝目指す青山学院大 「パワフル大作戦」成功の鍵は山区間

誰が走っても強い。「史上最強軍団」で箱根に臨む選手たち(すべて撮影・藤井みさ)

12月17日、青山学院大学相模原キャンパスにて陸上競技部壮行会と共同取材が行われた。作戦名「パワフル大作戦」のもと、原晋監督が「史上最強チーム」と呼ぶ充実したチーム力で、残り2週間あまりと迫った箱根路での戦いに臨む。

前倒しの取り組みで生まれた「史上最強軍団」

昨年はオンラインでの開催だったため、キャンパスでの壮行会は2年ぶり。集まった学生たちと報道陣の前で、「原節」が炸裂(さくれつ)。チーム内に10000m28分台の選手が23人、5000m13分台の選手が27人いることに触れ、「史上最強軍団が誕生しています。残り3週間を切ったこの状態で、しっかり調整して今の状態以上のものに仕上げていきたい。何よりも最後のひと押しは、学部生の皆さんの力です。パワフル大作戦、一緒に断行していきましょう! パワフル大作戦、スタート!!」とぶち上げた。

力強く「パワフル大作戦、開始!」と宣言した原監督

その後の記者会見でも、「力は過去最高のメンバーが揃(そろ)っています。勝つのは、青山学院です」と言いつつ、「ビッグマウスにならないように、残りの時間学生としっかり向き合って調整し、この言葉が噓偽りない事実になれるように、1月3日に証明できるように頑張っていきたいと思います」と油断のないように本戦まで過ごしていきたいという気持ちがうかがえた。今年は春先から400m、1000mなどのインターバルの設定タイムを例年より少し速めることから始めた。故障者が出ることもなく、その分取り組みをすすめ、いままでより2~3週間すべての取り組みを前倒しして、距離走や各自ジョグの設定タイムも上げてこなすことができるようになってきた。原監督自身がアスリートキャリアセンターという社団法人を立ち上げ、絆記録会やMARCH対抗戦など、独自の大会で成長を促してきたことも、チームの強化につながったと話す。

しかし、選手層が厚くなったことで、「嬉(うれ)しい悩み」というべきものも発生してきた。10000m28分台の選手が23人いるとしても、箱根駅伝を走れるのは10人のみ。「誰を選ぶか」ではなく、「誰を外さなければいけないか」という考え方になってきた。「そういう面で、出雲、全日本はデコボコになったかと思います」と、特に2区間で区間順位が2桁になり、あと1歩で優勝を逃した全日本大学駅伝についても言及。その経験を踏まえて、コースや距離との相性、気象条件などをトータルで勘案して選手選定をしていきたいと話した。「戦国駅伝」と言われ、戦力が拮抗している近年。原監督は「1区間の区間2桁順位があれば優勝から遠ざかり、2区間の区間2桁があればシードからも離脱する」とみる。区間5位以内で走破していきたいとし、鍵になる区間については山の5、6区と考えている。

主将・飯田は「5区で貢献したい」

山登りの5区を希望しているのが、主将の飯田貴之(4年、八千代松陰)だ。過去3回箱根駅伝を走り、いずれも区間2位。その中でも2年時に5区を走ったときが、一番チームに貢献できたという実感があった。「1年目(8区)と3年目(9区)は優勝できなかった年でしたが、その年は往路が終わった時点で厳しい状況でした。今年は往路で貢献したいので、そういう意味では5区間全部が希望区間です」ともいう。3回連続区間2位、出雲、全日本もともにチームが2位となっているため、「区間賞をとって優勝したい」という思いは強い。

時折笑みも交えながら質問に答える飯田

飯田は前回の箱根駅伝が終わってから両足大腿骨の疲労骨折が判明し、2カ月以上チームの練習に合流できなかった。新チームが始まり、主将としてミーティングで言葉を発しなければいけない状況でも、「練習に参加していない身分で」と悩んでしまい、その時期が一番主将として大変だったと振り返る。飯田が理想とする主将は、昨年卒業した神林勇太のような競技力もリーダーシップもある存在。「でもそこまでの領域には届かないので、練習面で見せることを心がけてやってきました。3年目までやってきた各自ジョグでの質の高さや寮の多さなど、もう一度意識して取り組んできました。競技力でチームの一番上にいるわけじゃないので、みんながちゃんと聞いてもらえるような取り組みをやらないといけないと、言葉を選んで伝えてきました」。4年生として、主将として、最後の箱根駅伝でチームに貢献したいと改めて話した。

エース・近藤幸太郎(3年、豊川工)の希望区間は2区。以前の取材でエース区間を走るのは嫌だと言っていたが? と問われると「いまでもエース区間を走るのは嫌なんですけど」と苦笑い。「エースとしてチャンスを作って次の走者に渡すことが仕事だと思うので、しっかり自覚を持ってやろうと思いました」と自らの立場を理解し、腹をきめた。理想は、全日本大学駅伝で同じ区間を走った駒澤大学の田澤廉(3年、青森山田)のような姿だ。

「エース区間は嫌」だという近藤だが、自分がエースとしていかなければという自覚は日に日に高まっている

戦力の充実度は間違いなくナンバーワンの青山学院大。全日本大学駅伝のレース後は「監督の采配ミス」と反省の弁を述べた原監督だが、箱根駅伝ではピタリと采配を決め、頂点をつかめるだろうか。

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