取り戻した伝統の堅守 「心と心がコネクトした」慶大ラグビー部8強
(18日、ラグビー全国大学選手権大会4回戦 慶大13―10近大)
慶大ラグビー部の防御は「魂のタックル」と形容される。全国大学選手権に入って、伝統の堅守が改善された。
前半26分が象徴的だった。自陣で近大の選手に中央付近を抜かれたが、WTB佐々木隼、SH小城大和らが素早く戻ってタックルし、球に絡みつく。あわやトライという場面を未然に防いだ。
ゴールラインに迫られ、防御が前に飛び出す場面。そこで空いたスペースを周りの選手がすかさず埋められたところに、チームの充実ぶりがにじむ。
栗原徹監督は「防御のコネクト(つながり)がよかった。何本か抜かれても、今日は最後まで追いかけた。メンバーの心と心がコネクトできていた」。
関東対抗戦の終盤は明大、早大、帝京大との3試合で計150点を失った。堅守のチームカラーが失われかけていた。
主将のフッカー原田衛は、対抗戦の後に4年生だけでミーティングを開いたという。
「もう一段階、意識を上げていこうと話した。あれでチームが変わったかな」
大学王者の天理大を破るなど、今季、関西大学リーグで旋風を起こしてきた近大相手に小差の接戦を勝ち切った。
ただ、まだスキはある。後半16分の失点シーン。自陣のピンチで、慶大反則の笛が鳴る。近大にとっさにキックパスを通され、WTBのトライにつなげられた。
笛が鳴ったことで慶大はセットプレーからの再開と考え、足が止まってしまった。FB山田響は反省する。
「WTBとの連係が不足していた。これからは一瞬の気の緩みが命取りになる。次までに修正したい」
近大の中島茂総監督は試合後、言った。
「慶大さんは学生らしい、ひたむきなチーム。最後は全国大会での経験値の差が出た」
我慢の防御、そして取るべき時に点を取る慶大の戦いぶりは、一発勝負のトーナメントには向いている。
好チームの近大を破り、関東リーグ戦王者・東海大への挑戦権を得た。その内容を更に研ぎ澄ますことができるか。
(野村周平)=朝日新聞デジタル2021年12月19日掲載