ラグビー

特集:第58回全国大学ラグビー選手権

早稲田大のNo.8佐藤健次とSH宮尾昌典、王座奪還の鍵を握るルーキーコンビ(下)

26日の明治大学戦にも先発する早稲田大学のNo.8佐藤健次(左)とSH宮尾昌典(撮影・全て斉藤健仁)

ラグビーの全国大学選手権準々決勝(12月26日)の中で注目のカードは今季2度目の「早明戦」です。早稲田大学で関東対抗戦全7試合に続き明治大学戦への先発出場が決まったNo.8佐藤健次(桐蔭学園)とSH(スクラムハーフ)宮尾昌典(京都成章)のルーキーコンビに語り合ってもらいました。後編ではチームとして2大会ぶりの王座奪還を目指す大学選手権への意気込みや将来像を聞きました。

「ケンジ」と「まあ」と呼び合うルーキーコンビ(上)

倒れない佐藤、判断力ついた宮尾

――大学に入って成長を実感している部分はありますか?

佐藤 高校時代(相手を)抜けなかったところが抜けたり、倒れなかったりという、ボディコントロールのところは伸びたかなと思います。大学入って最初の頃は、フッカーへの転向も視野に入れてスローイングの練習とかやっていましたが、帝京大戦の前に、このまま中途半端にフッカーの練習をやるなら、その時間をフィジカル強化、コンタクト強化に重きを置こうと思って、タックル練習やコンタクト練習を増やしました。今季はバックローですね。

宮尾 キックはあまり上達してないかなと思います。対抗戦で、僕がちょっとボールを持ち出すことによって、(ディフェンスで)前に出てくる相手だと、(外で)1つパスができなくなるというシーンがあった。持ち出していい時と、持ち出さずに味方に放って任せる時と、その使い分けがだんだんできるようになってきました。大田尾(竜彦)監督にも言われますが、主に後藤翔太コーチに教えてもらっています。

――早大の先輩で、影響を受けている選手はいますか?

佐藤 僕は(フランカー相良)昌彦さん(3年、早稲田実)ですね。このクラブで、1番尊敬しているプレーヤーです。(副将プロップ小林)賢太さん(4年、東福岡)も強いですが、昌彦さんは違う強さがあり、体の使い方が上手(うま)くて、コンタクトが上手い。見習うべきものばかりだなとすごく感じています。

早大のバックローは伝統的に好選手を輩出してきた

宮尾 2年生の岡﨑颯馬さん(長崎北陽台)は仲良くさせてもらっています。僕がこれまでラグビーをしてきた中で、一番周りを見られている。プレーもすごく上手くて、気が利く選手です。センターでしんどいと思うのですが、全体が見えていて、攻守にわたって(人が)足りないとこに入ったりできる。私生活でも周りに気を遣えていて、後輩の僕にドアを開けてくれた。ゴミが落ちていたら絶対拾いますし、すごいなとずっと思っています。

帝京大戦の負けを無駄にしない

――対抗戦で、個人的にターニングポイントになった試合はありますか?

宮尾 (対抗戦の3試合目の)筑波大戦で、調子に乗ってしまい、いいプレーができなくて、そこからは自分のプレーに集中しようという考えに至りました。そこから順調でしたが、早明戦は僕の中で、ノックオンも2回あり、最高レベルに調子が悪かったです。ノックオンは僕の問題もありますが、ブレイクダウンの問題もあり、どういうミスだったのか話し合って変えたので、多分、これからは同じようなミスはないと思います。

「早明戦でのミスはない」と宮尾は2度目の対戦に自信も

佐藤 対抗戦の帝京大戦の敗戦が悔しかったです……。個人としては前に出られたと思いますが、「ここぞ」というところで何もできなかった。帝京大戦の後に思ったのが、毎回チームを勝たせるために、「ここぞ」という時に目立つような選手になろうというのを決めると、ウェートトレーニングの質も、普段の練習の質も変わったと思います。帝京大戦の負けをポジティブに考えて行動してきた結果が早慶戦、早明戦だと思います。帝京大戦は自分の中でターニングポイントになったかなと思います。

宮尾 僕も帝京大の敗戦は悔しかったですね。試合が終わってからチーム全体でミーティングをする機会があって、ボコボコにされて何もできなくて負けた試合ではなく、勝てる可能性があったし、負ける要素がなかったのに、それなのに負けたのが嫌でした。次に対戦するとしたら大学選手権の決勝ですが、圧倒できるように頑張りたいです。

佐藤 帝京大戦に負けて、本当に死ぬほど悔しかったです。春季大会で東海大にも負けましたが、自分がスタメンで出て、公式戦で負けたのが、高校1年生の花園の決勝(桐蔭学園24-26大阪桐蔭)以来で、久しぶりでした。本当に悔しくて、このまま負けるのは嫌だなと……。そのために、もう一回、帝京大とやるためにずっとレベルアップしていきたい。まずは準々決勝ですが、最終的には帝京大に勝ちたいです。

――大学選手権に向けてどんなプレーをしたいですか?

佐藤 相手がどこであろうとあんまり変わらなくて、僕の仕事はボールを持って前に出ることなので、それをチームのために80分間やり続けたい。そして、ピンチの時に最初に下がってジャッカルに入ったり、チャンスの時に最初に上がってサポートしたりして、ピンチ、チャンスに輝ける選手になりたいと思っています!

宮尾 (大学選手権は)負けたら終わりなので悔いないように、思いっきりやりたい。 めっちゃ、自分らしくやるということと、見ている人たちに、周りも見えていてパスもできて走ってという「何でもできる(スクラム)ハーフやねんな」と見てもらいたい。今以上に、もっといいテンポでいいパスを放って、ケンジとか、いいランナーにいいパスを放って、チームに勢いをつけられるように大学選手権も頑張っていけたらと思っています。

日本代表を見据えて

――ラグビー選手として将来の目標は?

宮尾 将来は、もちろん日本代表になりたいし、外国でもプレーしてみたいですね。ワールドカップも出たいです!

佐藤 僕も日本代表は目指していますし、日本代表でも海外のリーグでも世界に挑戦したいという気持ちがあるので、そこが自分の最終目標かなと思います。

――最後に、ファンの方に向けてメッセージお願いします。

宮尾 昨年度の大学選手権は、僕は見ていた側ですが、早大は決勝で負けてしまった(28-55天理大)。今季、あの悔しさを持った先輩方が細かい部分まで僕たち1年生に教えてくださっていて、大学選手権に向けていい準備ができているので、期待してほしいですね。

コロナ禍の高校の時、学校の垣根を越えオンラインでつなぎ体力強化などに励んだ

佐藤 僕たちは早大のジャージーを着ている責任がありますし、精一杯プレーしたり、楽しんだりしている姿を見てもらいたいです。僕たち1年生も、昨年度の大学選手権の決勝で天理大に負けたことをすごく悔しいと思っています。今季の4年生はセンター長田智希さん(主将、東海大仰星)、フルバック河瀬諒介さん(東海大仰星)、小林さんという世代の中でも一番の選手がそろっている。優勝への期待、プレッシャーもすごく高いですが、大学選手権では、それに応えられるように個人としてチームとしてさらにレベルアップした姿をファンの方々に見せられたらいいなと思います。

昨年度の花園(全国高校大会)の決勝で対戦した2人は、関東対抗戦を通して大きく成長し、1年足らずで早大になくてはならない存在となった。「国立でプレーして優勝したい」と声をそろえる2人は互いに競い合いながら、初めての大学選手権、そして初の大学日本一へと挑む。

佐藤健次(さとう・けんじ) 5歳の時に群馬・高崎ラグビークラブで始め、横浜ラグビースクールで続けた。桐蔭学園高2年の時にU17日本代表主将。第100回全国高校大会では主将でチームを引っ張り連覇達成。韓国ドラマにはまり、最近は「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」をみた。身長178cm、体重101kg、2003年1月生まれ。

宮尾昌典(みやお・まさのり) 3歳から始め兵庫県ラグビースクールで楕円球に親しんだ。京都成章高では寮生活。3年連続全国大会に出場し第100回大会ではチーム初の決勝へ進み、桐蔭学園に15-32で敗れた。曽祖父はドイツ人。風呂で歌ってリラックスしている。身長165cm、体重70kg、2002年6月生まれ。

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