ラグビー

特集:第56回全国大学ラグビー選手権

早稲田の1年生FL相良昌彦がトライ 父の相良南海夫監督とチーム初の親子鷹V

冷静な判断とキレのある動きで、相良がチーム四つ目のトライを決めた(撮影・谷本結利)

ラグビー 第56回全国大学選手権 決勝

1月11日@東京・国立競技場
早稲田大(関東対抗戦2位) 45-35 明治大(同1位)
早稲田が11シーズンぶり16度目の優勝

23シーズンぶりの「早明戦」となった大学選手権決勝は、31-0で折り返した早稲田が11シーズンぶり16度目の優勝を飾った。両チームの先発メンバー30人で唯一の1年生だったFL相良昌彦(早稲田実)はチーム4本目のトライ。父は早稲田の相良南海夫監督(50)だ。監督就任2シーズン目の父は「いいプレーヤーですね」と、一人の選手としての息子をたたえた。

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24-0とリードした前半終了間際、ハーフウェーライン付近中央のスクラムから左に展開。パスを受けたWTB古賀由教(3年、東福岡)がタッチライン際を駆け上がり、敵陣22mライン付近でタックルされた。早稲田はラックから右に展開。SH齋藤直人(4年、桐蔭学園)からのパスを受けたFL相良が明治の2人のFWのタックルを振り切って縦に抜け出し、ゴールポスト中央にトライした。

相良は自身のトライをこう振り返った。「ゲインして、相手のセットが整わないところで逆をつけたのがよかったのかな。自分の感覚的に『いけるかな』ってのがありました。うまく抜けました」

相良は明治の2人のタックルをかわし、そのまま中央へトライ(撮影・谷本結利)

試合後の記者会見で、父の相良監督は「こういう舞台でトライをとるとは大したもんだな」と口にし、「お父さんに似てますか?」という記者からの言葉に「そうですかね」と顔をほころばせた。ただ、そのトライで相良はつい、右の人さし指を立てたパフォーマンスをしてしまった。それに対しては監督から「ガラ悪いな」と苦言を呈されたのだという。監督であり父親からの言葉を、相良はバツが悪そうな表情を浮かべながら明かしてくれた。

完敗を外から見て「自分がもっと走る」

早実高3年生のときに主将として花園に出場。大学では3軍からのスタートとなったが、着実にステップアップし、対抗戦の初戦から先発出場を続けてきた。昨年12月1日の早明戦はけがで欠場。そしてチームは7-36と完敗。相良は先輩たちがディフェンスで前に出られていなかったのに着目した。

「だったら自分が多く走って、とにかく相手のアタックにプレッシャーをかけよう」。この日は2人がかりで相手を止める「ダブルタックル」にかけた。「とくに箸本(はしもと)選手(LOの箸本龍雅、3年、東福岡)だったり、武井選手(主将のHO武井日向、4年、國學院栃木)、坂選手(No.8の坂和樹、4年、明大中野八王子)に対してダブルタックルを仕掛けて、そこからのブレイクダウンでプレッシャーをかけられたと思います。運動量が前回の早明戦よりも増したことで、少しはチームの勝利に貢献できたのかな」と、具体的に語った。

試合に出られなかった人以上の働きをする。相良はそう心に誓い、やりきった(撮影・安本夏望)

前述の通り、相良は両チームで唯一先発したルーキーだ。「出られなかった先輩とか同期ができないようなプレーをして、自分が出ている価値を示したい」と志を語った。そして決勝でのプレーを振り返り「それができたと思います」と、満足げに言った。

繰り返し聞いた「荒ぶる」

第2部歌の「荒ぶる」は、大学選手権で優勝したときだけ歌うのが許されている特別な歌だ。昨年の夏合宿最終日にはチームで歌う練習をし、相良も伝統の歌に触れた。そして決勝前夜、さらに当日の国立競技場に向かうバスの中でも、繰り返し「荒ぶる」を聞いてはイメージを膨らませてきた。2年生のときに大学日本一になって「荒ぶる」を歌っている父も「感無量でした」と振り返った。

「荒ぶる」を歌い上げた直後の早稲田の部員たち(撮影・安本夏望)

創部101年目の早稲田大学ラグビー蹴球部に「初の親子鷹V」という歴史が刻まれた。相良は「親子初Vなるか、という記事を見て『ああそうなんだ。できたらしたいな』って思ってました。実際にできて本当にうれしいですし、父も喜んでくれたのかな?」と笑顔。お父さんの背中にどのぐらい追いつけたと思いますか? 「大学1年目で優勝できたので、そこは父を超えられたのかな。実際に今日はトライもできましたし、ワークレート的にもかなりよかったと思います。同じ年代に生きているわけじゃないから分からないけど、自分的にはよかったと思います」

記者会見では息子のトライについての質問が上がることを、相良監督も当然予期していただろう。そして最後の質問でその問いが投げかけられた瞬間、監督は目を細めて笑い、一人の選手として高い評価をした。そうした監督の様子を伝え聞くと、相良ははにかんだ。

息子についての質問に、相良監督は表情を崩した(撮影・松永早弥香)

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