大学ラグビー

特集:第56回全国大学ラグビー選手権

早稲田が明治を下し、11シーズンぶりの大学王者 「荒ぶる」を高らかに

早稲田大が11シーズンぶり16度目の優勝を飾り、みんなで齋藤主将を胴上げ(試合の写真はすべて撮影・谷本結利)

ラグビー第56回全国大学選手権 決勝

1月11日@東京・国立競技場
早稲田大(関東対抗戦2位) 45-35 明治大(同1位)
早稲田大が11年ぶり16度目の優勝

1月11日、新装なった東京・国立競技場でのラグビーの初めての試合として、第56回大学選手権の決勝があった。11シーズンぶり16度目の頂点を狙う早稲田大(関東対抗戦1位)と、2シーズン連続14度目の優勝がかかった明治大(同1位)の、23シーズンぶりの「早明戦」に、5万7345人の観衆が集った。

早稲田がセットプレーでキレのあるアタックを仕掛けた。前半に4トライを挙げ、31-0と大きくリード。後半は明治も巻き返して5トライを決めたが、早稲田も2トライを加えて45-35で勝利。早稲田が大学王者に輝き、第二部歌の「荒ぶる」を国立競技場に響かせた。早稲田が明治を下して大学日本一になったのは、1976年度大会以来43シーズンぶりだった。

早稲田と明治が大学選手権決勝で顔を合わせるのは、実に1996年度以来23シーズンぶりだった
新国立競技場で早明最終決戦 明治は連覇、早稲田は11シーズンぶりの頂にかける
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攻め続けた早稲田が31-0で折り返す

先制したのは早稲田だった。前半9分、相手のハイタックルで得たPG(ペナルティーゴール)を、キャプテンのSH齋藤直人(4年、桐蔭学園)が冷静に決めて3-0。さらに早稲田はディフェンスで素晴らしい出足を見せ、相手の反則を誘う。

前半12分、敵陣20mのラインアウトを起点に、SH齋藤、準決勝から復帰した大型CTB中野将伍(4年、東筑)、No.8丸尾崇真(3年、早稲田実業)とサインプレーでつないで、丸尾が飛び込んだ。丸尾が新国立競技場で初となる歴史的なトライを決め、10-0とリードした。

前半12分、早稲田の丸尾が新しい国立競技場で初となるトライを決めた

その後はキックを蹴り合う拮抗した状態が続き、早稲田のSO岸岡智樹(4年、東海大仰星)が24分、25分と2度も長いDG(ドロップゴール)を狙ったが入らず。ディフェンスで相手のアタックを封じていた早稲田は26分、またも敵陣のラインアウトを起点に、SO岸岡のパスから縦に入ってきたCTB長田智希(2年、東海大仰星)が抜け出す。長田のトライで17-0とした。

攻撃の手を緩めない早稲田は34分、ゴール前のモールを押し込み、最後はHO森島大智(4年、早稲田実)が押さえて24-0。39分にもスクラムを押されながらもブラインドサイドにボールを展開。WTB古賀由教(3年、東福岡)が左ライン際を大きくゲイン、ワンパスでFL相良昌彦(1年、早稲田実)が抜け出し、そのままトライ。31-0で試合を折り返した。

前半39分、両チームの先発メンバーで唯一の1年生だった相良が、早稲田にとって4本目となるトライを挙げた

前半の早稲田はセットプレーでは劣勢でも、ディフェンスからリズムをつかみ、セットプレーからすべて2フェイズ以内に4トライを取りきった。早稲田の相良南海夫監督は「明治を分析して、ある程度絞って準備しました。中野が戻ってきたのが大きいんですけど、中野を絡めたプレーがはまりました」と口にした。

後半は明治が猛追の5トライ

後半は明治も意地を見せる。ラインアウトからボールを大きく動かす。3分、副将のWTB山村知也(4年、報徳学園)を皮切りに、WTB山﨑洋之(同、筑紫)らで計5トライを重ねた。

だが早稲田もWTB古賀、WTB桑山聖生(4年、鹿児島実)の両ウィングがトライを挙げて、リードを守った。昨シーズンの大学選手権準決勝、さらに昨年12月の「早明戦」のリベンジを果たした。11シーズンぶりに大学選手権を制し、令和最初の大学チャンピオンとなった。

明治も後半、5本のトライを決めて猛追した

アタックの連続が相手に脅威を与える

早稲田・相良南海夫監督の話
「6万人の大観衆の前で新国立競技場での初のラグビーということで、さらに相手が明治大というめぐり合わせでした。試合ができたことだけでも幸せなことですけど、勝利できました。そして11年ぶりに「荒ぶる」を歌えました。本当によかった。選手の頑張りに感謝したいです。昨シーズンからディフェンスのチームということでフォーカスしてきましたけど、メンバーを見てきたときに、ディフェンスにフォーカスしながらも、アタックし続けることが相手に脅威を与え、自分たちのリズムをつくることになると思いました。とにかく準決勝以降は『攻め続けよう』と話をしてました。本当に勝つか負けるか、相手あっての話ですし、今日は本当に選手たちには『自分たちがやってきたことをやりきろう』と言ってグラウンドに送り出しました。しっかりやりきった結果、獲得したものだと思います。監督として、長らくできなかった年越しをし、準決勝に勝ってこの決勝の舞台に立てました。このステージに立てたことで僕自身の役割は果たせたと思います。(『荒ぶる』を歌えて)最高でしたね。僕も卒業するとき、歌えなかったですから。本当に、感無量。いいものだなと思いました」

早明戦で明治に敗れ、ディフェンスを鍛え上げた

早稲田主将・齋藤直人(4年、桐蔭学園)の話
「前半、あれだけ点を取れて、ハーフタイムを迎えて、絶対に気が緩むと思っていたので、ハーフタイムでしっかり締めて後半を迎えようと思いました。追い上げられたということはどこか自分たちに緩みがあったということだと思います。そこは反省しなければならない部分ですけど、最終的には勝ててよかったです。試合を終えて、ディフェンスの部分が一番、40日前の対戦の時点に比べると成長したと思います。とくに1対1のタックルの部分。あそこで早明戦ではテンポを上げられてゲインされて得点されてしまった。タックルの練習を増やすというよりは、タックルに入る前の姿勢(やポジションニング)を自分たちは「勝ちポジ」と呼んでるんですけど、ディフェンスのみだけでなく、アタック(のポジショニング)も、練習の始めから終わりまで意識しようと、早明戦で負けてからやってきました。その意識付けが、今日の試合は80分(すべて)とは言えないですけど、前半の40分はできたと思います。終わった瞬間は安心しました。早明戦以降は負けたら終わりの戦いでした。早明戦もあのような負け方で、どうにかしてチームを変えなければというプレッシャーをチーム全体で感じていました。そのプレッシャーをはねのけて、チーム全員が努力してきた40日間だったと思います。これまで支えてくださった多くの方や、試合に出られない部員のこれまでの努力を、メンバーの23人で肯定できたのはよかったです」

記者会見で「齋藤主将(左)はあまり喜んでいないように見える」という質問に「これでも喜んでいるつもりです」(撮影・松永早弥香)

早稲田SO岸岡智樹(4年、東海大仰星)の話
「中野が準決勝から復帰して、ダイレクトプレーや彼をおとりにした裏プレーなど、明治さんも予想してなかったんじゃないかなっていうサインプレーも用意してました。そういう風なことができるのは、彼のポテンシャルありきなところですし、僕らとしては彼がいることでオプションが増えました。中野の存在は大きかったです。ディフェンスに関しては1年間積み上げてきたことをしっかりやりきるだけだと思ってました。そこでしっかり取りきれたことで、明治さんとしては早稲田のプレッシャーをかなり感じてたのかなと思いました

早稲田FL相良昌彦(1年、早稲田実)の話
「親子初Vなるか、という記事を見て『ああそうなんだ。できたらしたいな』って思ってました。実際にできて本当にうれしいですし、父も喜んでくれたのかな? 今日は回数こそ多くなかったけど、ファーストタックルで誰かが入って素早くダブルタックルに入るというのを意識してました。とくに(明治の)箸本選手だったり、武井選手、坂選手に対してダブルタックルを仕掛けて、そこからのブレイクダウンでプレッシャーをかけられたと思います。(自身初の日本一は)率直に言ってあまり実感が沸いてないですけど、スタンドの3階席まで満員で、その景色がすごかったし、感動しました」

早稲田大学ラグビー蹴球部の第二部歌「荒ぶる」は、大学選手権で優勝したときにだけ歌われる特別な歌だ

早稲田のすべてが素晴らしかった

明治・田中澄憲監督
「(観客は)5万7000人ですかね、最高の舞台で、決勝ができたことを幸せに思います。負けてしまったけど、早稲田大学さんのすべて、アタック、ディフェンスすべてが素晴らしかった。ほかにはない。明治は意地を見せたと思いますけど、前半の0-31がこの結果につながった。間違いなく、早稲田大学さんがしっかり準備してきた。アタックで主導権を握られて、コントロールされました。アタックに関しても(相手の)粘り強いディフェンスで一時的にパニックに陥ったのかなと思います。前半は相手のアタックに対してすごくディフェンスが狭かった。とくにブレイクダウンになったときに、接点に寄ってしまったのが多かった。後半は修正できましたけど、(前半は)一人ひとり差し込まれて寄ってしまった。(決勝に向けて)自分たちではいい準備できたと思ってましたし、それで勝てなかったということは、準備の段階で何か足りなかったということ。こういう結果が出たので、レビューして次のシーズンに向かいたいです」

立ち上がりに連続失点、パニックに

明治主将・武井日向(4年、國學院栃木)の話
「新国立競技場で決勝戦をできたこと、多くのみなさんの前で試合ができたことは幸せに思います。キャプテンとしてチームを勝たせられなくて申し訳ない。前半立ち上がりの失点から、ずるずるパニックになってしまって、あのスコアで折り返したことが敗因かなと思います。前半、早稲田大学さんのアタックにディフェンスが我慢しきれず、本当に一人ひとりにゲインラインを切られてしまったこと、そこからディフェンスが整備されずアタックが始まって……。その繰り返しだった。本当に自分たちのディフェンスが我慢しきれなかったこと、早稲田大さんのアタックが素晴らしかったこと、それぞれがフィジカルで負けたことがあのような結果になったと思います。(後半は)本当に、勝つことしか考えてなかったですし、スローガンの『真価』というのが苦しい状況で試されるという話をして、それがチームとして入りから逆転するぞという気持ちにもう1度、統一されたかなと思います。後半は苦しい場面でもアタックし続けたこと、体を張り続けたこと、あきらめない姿勢を後輩につなげられたと思います」

田中監督(右)も武井主将も「早稲田大学は素晴らしかった」とたたえた(撮影・斉藤健仁)