高校でも大学でもV 「史上最高」の主将が社会人野球を選んだ理由
慶大の野球部主将として昨年の春、秋の東京六大学リーグ戦を制し、6月の全日本大学選手権でも優勝した福井章吾捕手(22)は、次なる舞台に社会人野球を選んだ。
高校時代から「大阪桐蔭史上最高の主将」と言われ、注目を集めてきた。
周囲やファンから「プロに行かないの?」と質問を多くもらったという福井だが、プロ志望届を出さなかった。社会人野球に進もうと思ったのには、いくつか理由がある。
多くの野球少年がそうであるように、福井も野球を始めた頃から高校生の途中までは「プロ野球選手になりたい」という夢を持っていた。
大阪桐蔭高では下級生のころから試合を経験。決して目指せない舞台ではなかった。
しかし、2人の後輩の存在が、その夢を軌道修正させたという。
大阪桐蔭高で1学年下だった、根尾昂(中日)と藤原恭大(ロッテ)だ。
「あの2人はとんでもなかったっす。あいつらが1年生の秋くらいですかね。バッティングの飛距離のレベルが違う。ライトのネットなんて軽々越えていくし、センターの奥にある工場までぶちこむ。こんなんいるんだなって」
毎年のようにプロ選手が輩出する大阪桐蔭高にあっても、2人の存在感は圧倒的だったという。
「こういうやつがプロに行くんだなって思いました。僕も下級生から試合に出て、順調にはきていましたけど、あいつらが実力をつけるにつれて、鼻をパキッと折られました」
福井には自分を育ててくれた野球界に「何かを残したい」という目標がある。
それをかなえる方法は大きく二つあると考えている。
一つは「大谷翔平選手や鈴木誠也選手のようなスター選手になって、子どもたちに夢を与えること」。
もう一つは、「野球の指導者になって、選手を育成し、素晴らしい人材を世に出していくことで、『野球っていいスポーツなんだよ』と世の中の人に知ってもらうこと」だ。
大阪桐蔭高では西谷浩一監督、慶大では大久保秀昭監督、堀井哲也監督と、「人生の師」と言える指導者に恵まれた。いつしか、「指導者になりたい」という夢が、プロ野球選手よりも先に立つようになったという。
もちろん、まずは選手として高校、大学に続き、社会人でも日本一になることが目標だ。今月9日、トヨタの野球部寮に入寮。大学まで着慣れた紺色のアンダーシャツからトヨタの赤に変え、社会人野球をスタートさせた。
(山口史朗)=朝日新聞デジタル2022年01月12日掲載