卓球

東京富士大・西村卓二監督 時代に合わせた指導、個人の目標達成がチーム力を生む

東京富士大学の西村卓二監督。時にはラケットを握り、選手の状態をつかむ(撮影・全て朝日新聞社)

東京富士大学の女子卓球部の監督になって50年目を迎えた西村卓二さん(73)。半世紀近く同じチームで指揮を執り続けるのはスポーツ界でも珍しい。今年も部員9人で全日本大学総合卓球選手権(インカレ)3位など健闘した。個人戦と団体戦がある卓球で、学生たちは4年の間でどのように成長していくのか。西村監督に聞いた。

なぜスポーツをやるか問い続けて成長を促す 東京富士大・西村卓二監督

シーズンオフに強化練習のわけ

学生卓球界は、春の新人戦とリーグ戦に始まり、夏はインカレ、秋はリーグ戦とインカレ個人戦、そして、年を越して全日本選手権までシーズンが長い。「全日本が1月で終わると、4年生は卒業していき、新人が入ってくる。2、3月に強化練習、合宿をやる。きつい体力トレーニングなどで新人も精神的に大学生としてスタートしていく。鉄は熱いうちに打たなくてはいけない」と西村監督。

東京富士大に入学が決まった高校3年生は冬の強化練習に参加、いったん卒業式などで戻り、4月に正式に入部となる。在校生もこの期間にステップを一つ上げる。これで、春からほぼ休みなく試合に向かう準備を整えるという。「2、3月に1年分鍛える感じです。外に出て行って練習試合を組むなど人数や選手の力によって練習方法を変えていく。一番重視しているのは大学生としてどういう学生生活を送り、卓球ではどういう目標を持っているか。これは1年間通じ、選手がリポートを書くなど自分の足りないところをどう伸ばすか計画を持つ。こちらの指導計画も伝えるので、選手と会話をしていかなくてはいけない」。男性が女性を指導する上でコミュニケーションの大切さと同時に難しさを感じてきた。

時代のスピードについていく

西村監督は半世紀の指導の間にインカレでは4度の優勝に導き、世界選手権の日本代表18人を含む400人を超える選手を育ててきた。学生気質の変化を感じている。「昔は『こうやろう』と言えば、その通りやる選手がほとんどだった。今は『なんで』と聞き返す選手も多い」と言う。

指導者も変化して対応していく必要がある

インターネットをはじめ情報があふれている。一流選手の映像などをすぐ見られるようになった。高校生でも豊富な卓球の知識を持っている。「僕が知らないようなこともみんな知っている。だから、理論武装して、より丁寧に教えなくてはいけない時代になった」。例えばひじの使い方を指導すると、選手から「中国の選手はこういう形だった」と返ってくることがある。これに対し、映像はあくまでも一面をとらえたもので、ひじが上がると、次の動作に戻して打つのが難しくなり、力も分散してしまう。それよりもラケットの先端がスムーズに出ていく方がボールも強く打てる、などと説明している。「手間がかかり、なかなか1人では難しくなった」。コーチやOGの協力者がいて、監督の意をくみ選手に伝えてもらう。

昔は良かった、という話ではない。西村監督は「今の時代に合わせていかなければ。いろんなものがスピード化し進んでいる。富士大学の理念というものを大切にしつつも、乗り遅れてはいけない。ただ、選手に気付きをいかに与えるかは難しくなってきた」とみている。「『あの時はこうで、よかったのに』と昔の話はあまりしない。自分が負けちゃう気がして。彼女たちにとったら今は今ですから」と続けた。

インカレ優勝のためにも個を磨く

少数の女子卓球部だが、入ってくる選手のレベルは様々だ。「低いレベルに合わせていると、上の選手は物足りない。上に合わせてばかりだと、下はできなくなる。低い人も上げながら、上の人もさらに上げていく。そういう作業が必要になってくる」

送り出したOGが体育館に戻ってきてくれるのがうれしい

毎年、チームの目標としてはインカレ優勝がある。個人の目標はそれぞれ違う。西村監督は「個人の目標をしっかり達成できれば、強いチームになれる」と言う。主将に指名した選手が強いリーダーシップを発揮して、日常の寮生活ら大事にして団体優勝に導く。うまくいけば、いい人選だったと心地よいが、次も同じようにやろうとしてもぴったりとはまらない。
「その時のチームの人間関係を読むなど眼力がなかったらダメです。難しい」。アテネ五輪の女子日本代表監督の時も観察力を大切にした。そもそもどんなに素晴らしい計画を立てても選手が自ら動かなければ、成功は得られない。

卓球はマスターズの大会があり息長く続けられるスポーツだ。東京富士大OGは30代をはじめ各年代で活躍を続けている。「良い母親になろう」が卓球部の一つのテーマでもあり、子育てを終えたOGが卓球を再開するケースも多い。東京で大会があると、「学生時代を思い出したい」と試合前に体育館に来て練習する地方のOGがいる。「その子の人生の中で、東京富士大で卓球をやったことが生きている。うれしいですね」。半世紀指導を続けて得られた大きな財産だ。

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