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特集:2022年 大学球界のドラフト候補たち

近畿大学・大石晨慈、3ボールで「信じた」自分の球 完封で始まった最終シーズン

立命大から10三振を奪い、完封勝利を挙げた近大の大石晨慈

4月2日に開幕した関西学生野球リーグ戦。立命館大学との2回戦に先発した近畿大学の大石晨慈(4年、近大付)は、丁寧に低めへ投げることに徹した。150キロ台のストレートを投げ込む相手先発・長屋竣大(2年、浜松開誠館)とは、対照的な姿だった。終わってみれば9回を投げ切り、10奪三振の完封勝利。八回には自ら三塁打を放ち、この試合唯一となる生還を果たした。近大は前日の開幕戦サヨナラ勝ちに続く連勝。大石は投打にわたって、勝ち点獲得の立役者となった。

監督が称賛した「粘り」

この日の投球で田中秀昌監督が称賛したのは、大石の「粘り」だ。「今までは3ボールになると簡単に四球を出してしまっていたけど、2ストライクに持っていけていた」。カーブやチェンジアップを決め球として使い、ピンチになるほど球の精度は上がっていった。

大石は、いつも通りに投げることを心掛けていた。両チーム無得点の展開が続き、「いい緊張感の中で、投げられました」。田中監督が指摘する「四球癖」も自覚している。「3ボールになると、打たれるのが怖くて四球を出すことが多かったんです」。ただ、この試合は「自分のボールを信じて投げられました。真っすぐで空振りを取れたし、真っすぐで押していけたところが良かったです」

近大付3年夏の南大阪大会で、力投する大石(撮影・山口史朗)

走塁は、冬場の走り込みが生きた?

打席では、周囲を驚かせた。0-0で迎えた八回2死走者なしから、右越えに三塁打を放った。続く1番打者、谷口嘉紀(4年、神戸国際大付)の左前適時打で先制のホームを踏み、この1点を守り切った。

「(打てたのは)たまたまです。2アウトだったので、思い切り振ったら芯に当たりました。足には自信がないんですけれど、とにかく走りました」と笑った。冬場は「20球を投げるごとにライトとレフトのポール間を走る」という練習も繰り返していた。この日の試合で、その鍛錬が生きたとも言える。

3年夏の甲子園で、5者連続奪三振

高校時代は近大付のエースとして、3年夏の第100回全国高校野球選手権大会に南大阪代表として出場した。1回戦で前橋育英に0-2で敗れたものの、5者連続三振を奪うなど、甲子園に強い印象を残した。

1年の夏からエース番号を背負っていた。だが当時から「一番の長所は何か」と尋ねられると、大石は困ってしまう。「先発しても早い段階でマウンドを降りることが多かったですし、ゼロに抑えたことも少なかったんです」。3年夏にストレートの最速は141キロをマークしていたが、変化球の種類が少なく、相手打者を凡退させる技術が足りないと自覚していた。

大石は近大付3年のとき、南大阪大会を制し、夏の甲子園出場を決めた(撮影・金居達朗)

コロナ禍で実家から練習場へ通うことに

2日の開幕戦では、最速147キロを誇る右腕の久保玲司(4年、関大北陽)が十回途中まで投げ、4安打1失点の好投を見せた。チームは1点を追う十回裏に2点を挙げ、サヨナラ勝ち。同じ大阪出身の久保について、大石は「ずっと切磋琢磨(せっさたくま)しながらやってきたいい仲間」と、関係性を明かす。

新型コロナウイルスの影響を受けた中での練習やリーグ戦は、今春も続いている。近大の野球部はコロナ禍になる前、基本的には全員が入寮していた。ただ大人数が一つの部屋で生活すると、密が生まれてしまう。そのため最近は、遠方出身の選手だけが寮に残り、近隣地区に実家がある選手は、自宅から練習に通っている。

大石は大阪府藤井寺市に実家があるため、自宅から通うことになった。ただ「移動するのは、結構大変なんですよ」と苦笑いする。奈良県生駒市にあるグラウンドまで、電車の乗り継ぎ次第では、1時間半以上かかることもある。

大石晨慈は今シーズン、防御率0点台をめざしている

ライバルに開幕戦を譲っても

まん延防止等重点措置の影響で、全体練習に参加できない時期は、久保と一緒に練習することもあった。2人で考えながらメニューを組み、今年のラストシーズンに備えてきた。入学時からの互いを高め合ってきたライバルだが、開幕戦を久保に譲ったことについて、対抗心は燃やしていないという。

「自分はオープン戦から、調子が良くなかったですが、久保は良かった。1戦目に久保が投げるのは当然です。自分は点を取られていて不安を抱えたままだったけど、抑えられてホッとしています」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

立命大との2試合で失ったのは、1点だけ。近大は高い投手力を見せつけ、幸先のいいスタートを切った。「1戦目はサヨナラ勝ちで、2戦目も1点差の試合と、いい勝ち方ができました。個人的には、自分が投げる試合はすべてゼロに抑えて勝って、防御率0点台でいきたい。そのために先を見過ぎず、目の前のバッターに集中して、全力を出していけたらいいです」

クールに言い放った言葉には、今シーズンへの覚悟がにじんでいた。

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