陸上・駅伝

特集:2022日本学生陸上競技個人選手権大会

創価大・葛西潤、個人選手権10000mで独走V けがしたことで知ったありがたみ

10000mで葛西(右)と嶋津とでワン・ツーフィニッシュを飾った(撮影・藤井みさ)

2022日本学生陸上競技個人選手権大会 男子10000m決勝

4月15日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
1位 葛西潤(創価大4年) 28分30秒65
2位 嶋津雄大(創価大4年) 28分38秒27
3位 篠原倖太朗(駒澤大2年) 28分43秒03
4位 小澤大輝(明治大4年) 28分50秒28
5位 野村優作(順天堂大4年) 28分51秒50
6位 中山雄太(日本薬科大4年) 28分51秒94
7位 藤木宏太(旭化成) 28分53秒01
8位 吉居駿恭(中央大1年) 28分56秒95

日本学生個人選手権が4月15日に開幕し、初日の最終種目は男子10000m決勝だった。終盤に独走態勢となった創価大学の葛西潤(4年、関西創価)が、28分30秒65で優勝をつかんだ。当初の目標は3位以内。「ちょっと良すぎたかなという感じはします」と葛西は少しはにかみながら明かした。

嶋津と互いに引っ張りながらワン・ツーフィニッシュ

今大会は6月26日~7月7日(陸上は6月30日~7月5日)に中国・成都で開催予定のFISU ワールドユニバーシティゲームズの選考も兼ねていた。同大会は1年延期して開催されるため、特例として学部卒1年目や大学院修士1年目の学生も選考の対象者となった。そのため今レースには実業団1年目の選手も加わり、16人でレースが行われた。

当日は朝から冷たい雨が続き、ときおり強い風も吹いていた。そんな中、最初に前に出たのは順天堂大学の野村優作(4年、 田辺工)。野村を先頭に大きな一塊となってレースが進み、最初の1000mは2分59秒だった。葛西は集団の中ほどにつけていたが、1000mを過ぎてからは少しずつペースを上げ、1500mほどで一気に前へ。すると中央大学のルーキー・吉居駿恭(仙台育英)と明治大学の小澤大輝(4年、韮山)ぴったりとつく。2000mでは2分51秒とペースを上げ、大きな集団も葛西に続いた。

葛西は1500mほどで先頭に立ち、集団のペースを上げた(撮影・藤井みさ)

4000mになると同じ創価大の嶋津雄大(4年、若葉総合)がスッと前に出て、葛西を引っ張る。5000m過ぎで再び葛西が先頭に立ち、その後ろに小澤が続いた。葛西はペースを上げ、小澤を振り切る。嶋津も切り替え、小澤を抜いて2番手へ。葛西は1000mを2分50秒ほどのペースで後続ランナーを引き離し、嶋津との差も開く。最後の直線で葛西は帽子を手に取り、両腕を広げてゴール。2位に嶋津が入ったのを確認すると、笑顔で互いの健闘をたたえた。

先輩の嶋津が今年もチームに、「めちゃめちゃ心強いです」

レース前、葛西は嶋津と「レースを自分たちで作っていこう」と話していたという。もしレースがスローペースになったら、自分が前に出る。普段の練習では、コンディションが良くない時や自分が集団を引っ張っている時でも、10000mを28分30秒ほどでまとめられていたこともあり、実際に前に出る時に躊躇(ちゅうちょ)はなかったという。途中で嶋津が前に出たことも、葛西にとっては馴染みのある風景だった。「ふたりで練習をしてきた分、信頼関係があります。どちらかが前に行って、ちょっとペースが落ちてきたもうひとりが行く。レース展開はお互いに言わなくても伝わりますし、そのおかげもあってイメージ通りの走りができたかな」

練習の時でも試合でも、嶋津(18番)は自らの走りで引っ張り、チームを鼓舞してくれる(左が葛西、撮影・松永早弥香)

嶋津は1学年上だったが、3年生の時に半年間休学した関係で、今年度も4年生としてチームに残った。葛西は言う。「本当にもう、力はすごいですし、ムードメーカーでもあるので、そこはすごい頼りがいがあります。練習でももちろん引っ張ってくれますし、残ってくれてラッキーで、めちゃめちゃ心強いです」。今回のレースでも頼りがいのある姿を見せてくれた嶋津と、ともにワン・ツーをとれたことが本当にうれしかった。

けがから学んだこと・知ったこと

葛西は2月26日のクロスカントリー日本選手権男子10kmで2位(学生トップ)と結果を残し、今大会でも強さを見せつけた。強さの秘密を問われると、「継続していい練習ができていることだと思います」と答えた。

葛西は昨年の箱根駅伝(3区区間3位)を終えた後に左足底のけがに苦しみ、レースに復帰できたのは11月になってからだった。今年の箱根駅伝にはなんとか間に合わせたものの、1区区間15位と苦しいレースとなった。再び足を痛めてしまい、休養を経て、クロスカントリー日本選手権に挑んだ。現状を確認するという意識で臨んだレースだったが、優勝した松枝博輝(富士通)に食らいつく積極的な走りを見せた。

1年生の頃から「けがさえしなければ走れるかな」という感覚があったという。だが実際にけがをしてしまった時も、様々な人にサポートしてもらいながらケアの仕方や体作りなどを学び、「それが今につながっている」と自信を持って答える。

葛西もけがをしないことが大事だと感じているが、けがをしたことで得たものもあった(撮影・藤井みさ)

ラストイヤーでの目標は、まず全日本大学駅伝初出場をつかみ、学生3大駅伝をしっかり走ること。そして駅伝で区間賞を獲得すること。特にどの区間というこだわりはなく、「チームがいい順位をとるために、自分はどこでも期待された区間を走れたらいいかな。そのあたりは自分以外のメンバーの走りも関わってくることなので」と、チームとして結果を出すために最大限の貢献を目指す。

もうひとつ、けがをしたことで実感したことがある。「ずっと走れていなかったので、試合に出られるだけでも本当にありがたいなと思うんです。だからかみしめながらしっかり走りたいです」。後悔のない日々を重ね、このチームとともに戦う。

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