陸上・駅伝

特集:第98回箱根駅伝

創価大は「強さの追求」でふたたび箱根路に臨む 目標は総合3位「以上」

16人のエントリー中、3年生が7人。着実に下級生が成長してきた(写真提供:すべて創価大学)

前回大会で往路優勝、総合準優勝。箱根駅伝出場わずか4回目にしての快挙に、「創価大学」の名前は陸上ファンのみならず多くの人が知るところとなった。今年は前半シーズン出遅れたものの、秋以降は好調が目立つ。「総合3位以上」を目標に、チームの状況は上り調子だ。

準優勝からの空回り、「強さ」を求めて

前回大会では4区で首位に立つと、そのまま往路優勝。復路も単独トップを走り続け、最終10区で逆転されるまで安定した強さをみせつけた。第91回大会で初出場してから、20位、12位、2大会前の9位で初シード権獲得、その翌年の快挙。「自分たちのレベルでもしっかりと目標にむかっていけば準優勝できる」と自信が生まれ、榎木和貴監督も「やり方は間違っていなかったな」と思えた。周囲からは「準優勝だから次は優勝だね」と言われることも多かったが、しっかりと「頂点に立つには何をしなければいけないか」と改めて考えたという。

「ゴールを決めるのではなく、この先3年、5年と、強いチームが継続するような体制を作っていきたいと考えました」。その結果決めた目標は、箱根駅伝で総合3位以上。「以上」の中にはもちろん優勝も含まれている。「優勝も狙えない位置ではないとは思っています。取り組んできたことを自信にして、どう力を発揮できるかだと思っています」

チームを率いて3年目の榎木監督。選手たちは飛躍的に強くなってきた

新チームとなってから、基本的な練習の取り組みは昨年度と変えていないが、距離走の距離を伸ばしたり、設定タイムを速めたりと一つひとつの練習の質を高めていった。だが、予想外の好結果を残したことにより、選手たちの中には空回りしてしまう者も少なくなかった。強度の高い練習によって、疲労も徐々に蓄積していた。そうした中で迎えた6月の全日本大学駅伝関東地区選考会。榎木監督は「絶対行ける」という自信を持って、選手たちもそのつもりで臨んだはずだったが、7校が通過という中で14位と大きく出遅れ、出場はかなわなかった。

「当日走った選手たちが、自信を持ってスタートラインに立てていたのかというと、そうでなかったなと今は思います。本来の走りができない精神状態だったりと、本当の強さがまだまだ足りていないと感じました。『強さの追求』として練習の質、量ともに増やすとともに、関東インカレなど試合を追いすぎてしまったところがあるかもしれません」と振り返る。

薄底シューズで走り込み、秋の成果につなげる

夏合宿はじっくりと足づくりに取り組み、月間900kmを目標として走った。特に厚底シューズではなく、薄底であえて走ることにより、選手たちの力は着実にあがった。10月の出雲駅伝では、3位を目標にしたものの、気温30度を超える過酷な条件下で苦しみ、7位だった。「どんなときでも100%力を出すという目的で向かって、挑んだ結果が7位でした。3区で順位を2位に押し上げながらもキープできませんでした。その点で強さの追求ができていなかったなと感じられました」。出雲で得た課題をもとに、選手一人ひとりが自分の力でペースを作っていけるように、あらためて練習に取り組んでもらった。その結果、秋の記録会で選手たちは自己ベストラッシュ。29分台以下が留学生のフィリップ・ムルワ(3年、キタテボーイズ)を含め9人となり、10000mの上位10人の平均タイムは昨年度よりも30秒も速くなった。

全日本大学駅伝予選で敗退したことで、チームは一つに固くまとまったという

下級生が大きく成長し、選手層の厚みが増した結果、前回大会8区の永井大育(4年、樟南)と10区の小野寺勇樹(4年、埼玉栄)はエントリーメンバーの16人から漏れた。「2人の競技力が落ちたわけではなく、それ以上に3年生以下の成長が上回っていました。小野寺も本当に前回の失敗から、この次取り返すんだと強い思いで1年間やってきてくれました。リベンジをはたせず残念な思いは私もありますが、それ以上にチーム全体が成長してくれたことを評価したいと思います」。前回大会同様、往路から出し惜しみなく、実力のある選手から並べていくつもりだと榎木監督。特にムルワ、嶋津雄大(4年、若葉総合)を「往路優勝の流れを作るキーマン」だと挙げた。

嶋津、日本人エースとしての自覚「魂の走りを」

嶋津は2年時に10区区間賞・区間新記録。3年時には4区区間2位で、チームを首位に押し上げる走りを見せた。今年は自らの役割を「日本人エース」と自覚して1年間取り組んできた。米満怜(現・コニカミノルタ)、福田悠一ら歴代の日本人エースを見てきて、「ただ速いだけではなく、どれだけチームの精神的支柱になれるか」がエースとして必要なのだと考えてきた。全日本大学駅伝予選の際も「4組目に嶋津さんがいてくれるから」と後輩たちに言われたが、「その時はまだ、絶対的なエースではなかったと思います。本当の心の奥の緊張をほぐせるような選手じゃなかった」と思い返す。

夏を経て10月、出雲駅伝に初出場した際も、「嶋津さんがアンカーにいてくれるから」と言われ、頼りにされていると感じた。11月の早稲田大学記録会で28分14秒23の大学日本人歴代最高タイムをマークし、「タイムとしても目でわかるように、エースだと示せたと思います。みんなに安心感を与える走りをするのが自分の役割です」と話す。

「心をエネルギーに走る」という嶋津。だからこそ試合でも強くなれる

嶋津が一番大事にしているのは、「心で走る」ことだ。心を燃やしてエネルギーにして走る、魂の走り。「応援の力が、じかに走りにつながているのを感じています。トラックレースとか練習のときも、応援してくれるチームメートやファンの方のことを考えながら走ります。箱根駅伝はそれだけじゃなくて、全国の応援が一気に集中する場なので、それが一番の力になっていると思ってます」。沿道での応援は自粛が求められているが、「テレビの前で応援してくれる人、その人達全員の気持ちを想像しながら走りたい。魂の走りをしたいです」と熱い言葉を口にした。

箱根駅伝で重要な役割を担っているということは、本人もはっきりと自覚している。「1回目はあれだけ注目される走りをして、2回目もチームに貢献する走りができました。自分には毎回何かしらの役目、使命が待ち受けていて、それが怖いんですけど楽しみな気持ちもあって。どんな運命が待ってるのか気になるところです。3回目、ワクワクしながら臨みたいと思います」

三上(左)は主将として、嶋津はエースとして、チームの中心となってきた

榎木監督も「明るい性格」と評価し、チームのムードメーカーであり精神的支柱である嶋津。榎木監督は「往路優勝のキーマン」と挙げたが、嶋津が一番走りたいのは9区だという。「どの区間でも走りたいという気持ちは正直あります。前回4区で思い通りの走りができなかったから、もう1度という思いもあるし、一番強い自分で臨む今年は『花の2区』にも興味があります。あとは10区を、今の自分ならどこまで走れるかという興味もあって……でも、9区は10区より100mだけ距離が長いけど、9区の区間記録は10区より1分近く(39秒)速いんです。だから9区で区間新を出せば、10区の自分も越えられたことになるんじゃないかなと……」と独特の解釈を明かす。より強くなって臨む箱根路が楽しみだ。

主将・三上の姿勢がチームを底上げ

チームを1年間支えた主将の三上雄太(4年、遊学館)は、昨年までは自分の競技だけに集中していたため、主将になったばかりの頃はメンバーに目を配ることからはじめた。「練習でも前を引っ張っていかないといけないと思ったり、あまり言葉で強く発信できない中で、チームに前に立つ姿を見せていかないとと思って、思いつめてしまったりしました」。しかし榎木監督は三上について「競技で結果を残すために何が必要か理解して動ける。それを手本として、選手たちが三上を慕っているのがチームの成長の要因」と働きを評価する。三上の姿勢を見て、選手たちが休みの日の朝も走るなど、練習ひとつとっても「何のためにするのか、どこを目指すのか」と考えるようになったという。

三上は主将として走り、態度でチームを導いてきた。最後の箱根でも5区を希望する

前回は5区を走り区間2位、後ろとの差をさらに広げて芦ノ湖のゴールテープを切った。今年も5区を希望しているが、現在の状態を問われると、練習の中で疲労がたまっていると感じるとの答え。「ここから少しずつ疲労をとって、本番に合わせられたらなと思います」。目指すのは70分台、そして区間賞。5区の候補には区間記録保持者の東洋大学・宮下隼人(4年、富士河口湖)や青山学院大学の飯田貴之(4年、八千代松陰)、國學院大學・殿地琢郎(どんぢ、4年、益田清風)などの選手たちがいるが、三上は「あまり他の選手を意識すると考えたことがないです。それよりも自分と向き合うほうが大事だと思います」と話す。

4年生は7人と少数。結束も固く、三上を中心にチームを引っ張ってみんなで強くなってきた。今年のチームスローガンは「ストライプインパクト」。昨年同様、いやそれを超えるインパクトを、箱根路で与えることができるか。

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