明治大学・瀨千皓、初打席で2ランデビュー 監督は「早く4番を打たせたい」
2022春季リーグ戦 第2週1回戦
4月16日@明治神宮野球場(東京)
明治大学 12-1 東京大学
昨年春の第93回選抜高校野球大会、トレードマークのメガネをかけた姿で、天理(奈良)の4番打者を務め、4強まで勝ち上がった瀨千皓(せ・ちひろ)が、東京六大学リーグでデビュー戦に臨んだ。明治大学にとって開幕戦となった16日、「6番ライト」で先発出場。3点を先取した一回1死一塁から迎えた第1打席で、レフトスタンドへ2点本塁打を放った。初の公式戦、初打席で初本塁打というメモリアルな1打席となった。
緊張しても、忘れなかった積極性
結果とは裏腹に、初打席は「緊張していました」。打った球種も「たぶん真っすぐじゃないと思うんですけど、あんまり覚えてないです。カットボールか、スライダーかなと」。答えは128キロの横に曲がる変化球。俗に「半速球」と呼ばれ、速球のタイミングで打ちに行くと、腕が伸びたところでとらえることができ、ときに長打になりやすい。
緊張したと本人は振り返るが、「1年生らしいプレーができたらいいな」と思っていたそうで、初球から強くバットを振り、積極的な打撃を見せた。「器用なバッターじゃないんで。(球を)見ながらタイミングを合わせることができない。初球から振って(タイミングを)合わせようと思って」。この打席、2度目のスイングで快音を残し、左越えへの2点本塁打とした。「距離は(スタンドまで)足りると思ったんですけど、切れるかなと」。柵越えを知ると、「気持ちよかったです」。笑顔でダイヤモンドを1周した。
「中学時代の先輩がいる」と憧れの明大へ
瀨は天理高校時代から、右の強打者として名をはせた。1年秋に近畿大会を制し、進出した明治神宮大会では、仙台育英の向坂優太郎(現・仙台大2年)や愛知・中京大中京の高橋宏斗(現・中日ドラゴンズ)から、本塁打を放った。
翌年春に出場予定だった選抜大会は、新型コロナウイルスの影響で中止となったが、昨秋のプロ野球ドラフト会議で北海道日本ハムファイターズから1位指名を受けた達孝太らとともに、昨春の選抜大会に出場。準決勝で神奈川・東海大相模に敗れるまで、全4試合で4番を務めた。
最後の夏は、奈良大会の準決勝で惜敗し、甲子園出場はかなわなかった。高校通算21本塁打というスラッガーは進路を決める際、「中学時代のチームの先輩が、明治大学にいる」と憧れ、進学を決めた。
二枚看板が卒業した外野陣の一角に?
高校野球を終えた後は、昨年秋ごろから月に1度ほどのペースで、大学でも練習をしていた。その場で「先輩との力の差を感じていた」と言い、天理で続けていた練習にも、さらに身が入ったという。田中武宏監督は、「適応能力が上級生に比べてもある」と当時から瀨を高く評価していた。
明大の外野陣は、二枚看板だった丸山和郁(現・東京ヤクルトスワローズ)、陶山勇軌(現・日本製鉄鹿島)が卒業し、「三つのポジションを誰が務めるのかは、毎日が競争」(田中監督)という状態だ。加えて田中監督は、開幕前の記者会見で「生きのいい1年生が入ってきているので、期待の選手が出てくることを感じております」と語っていた。そこへ該当するのが、瀨なのかもしれない。
野球人生を通じて「一度も日本一の経験がない」
2019年秋に就任した田中監督は、新戦力を大舞台で抜擢(ばってき)する傾向がある。
2020年秋のリーグ戦では、1年生だった上田希由翔(3年、愛産大三河)を4番に据えた。このとき上田は、打率3割4分4厘をマーク。当時の記憶を瀨にも重ねているのだろうか。「(瀨にも)4番を打たせたい」と16日の試合後に明かした。伝え聞いた瀨は、「これから任されるように頑張ります」と一言。もしかしたら、その日は遠くないかもしれないと感じさせるような一発でもあった。
瀨は野球人生を通じて、「一度も日本一を経験したことがない」という。それだけに明大での目標は「日本一をつかむこと」と明確だ。
この日はライトの守備につくと、ベンチにいる先輩たちから、ジェスチャーを踏まえて細かく守備位置を指示されていた。いくら甲子園という大きな舞台を経験しているとはいえ、初戦は周りを見る余裕がさほどなかったようだ。
「ベンチにいる先輩全員が、背中をたたいてくれて、気持ちが入りました。すごく緊張している自分に声かけをしてくれて、やりやすい環境でプレーさせてもらいました。感謝しています」と瀨。これからの4年間で、どれほどスケールの大きな選手に成長するのか、今から楽しみな存在だ。