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3年ぶり「3回戦」復活の東京六大学野球、9日開幕 各チームの特徴を探る

9日に開幕する東京六大学野球のリーグ戦を前に、各大学の主将が並んだ

東京六大学野球リーグが9日、神宮球場で開幕する。今季は2019年以来、1勝1敗の場合は3回戦以降も行われる2戦先勝方式の「勝ち点」制が復活し、延長戦も行われる。7日は、各大学の主将と監督が記者会見を行い、今年のチームの特徴を語った。

野手の柱が抜けた慶大、次の「柱」は?

昨年の春秋シーズンを制した慶應義塾大学は、打線の中軸を務めた正木智也(福岡ソフトバンクホークス)、センターラインの渡部遼人(オリックス・バファローズ)や福井章吾(トヨタ自動車)といった中心選手が卒業した。投手陣は増居翔太(4年、彦根東)をはじめ、渡部淳一、生井惇己(ともに4年、慶應)ら経験豊富な選手が最終学年を迎え、ある程度の失点は計算できる。それだけに打線の奮起が連覇へのカギとなりそうだ。

下山悠介主将(4年、慶應)は会見で、「中心選手が抜けたところを全員でカバーして、ノーヒットでも1点が取れるようなチームをめざしてきた」と語った。自身の打撃はこれまで「フェンス手前で捕られたり、外野の間を抜けない打球があった」と分析し、この冬はバットを振り込んで、パンチ力を強化。「力強いバッティングに注目してほしい」と語った。

慶大主将の下山悠介

早大の理想は「5対3、5対4」で競り勝つ

慶大とは対照的に、早稲田大学の小宮山悟監督は、投手陣の台頭を期待している。徳山壮磨(横浜DeNAベイスターズ)、西垣雅矢(東北楽天ゴールデンイーグルス)の両エースが抜け、「大変なことになってしまいました」。春のオープン戦で投手陣は「いい投球もあったけど、目も当てられない試合も多かった」。リーグ戦は相手打線との相性を考えながら、ベンチ入りしている投手全員を起用する覚悟も持つ。

未知数な投手陣をカバーするため、中川卓也主将(4年、大阪桐蔭)は「5点取れる打線というのが、今年のチームの特徴だと思います」。投手陣には、「3、4点は取られていいから、大量失点だけはしないように」と告げ、5対3または5対4で競り勝つ展開を理想にしている。

早大主将の中川卓也

コロナに見舞われた明大、執着心を胸に

明治大学は、不測の事態がチームを襲った。田中武宏監督によると、今年に入ってから、チーム内に新型コロナウイルス陽性判定を受ける選手が相次いだ。特にバッテリー陣に感染者が多く、試合が思うように組めなかったため、オープン戦の初戦は3月16日。「これだけ実践感覚がない中で戦うことはなかった。私よりも選手たちの方が、不安な点も多いのでは。ただ、言い訳にはしない」と言う。

戦力的には、昨秋のリーグ戦で打率4割をマークした捕手の蓑尾海斗(4年、日南学園)や山田陸人(4年、桐光学園)ら、内野陣が経験を積んでいるのが強み。村松開人主将(4年、静岡)は「昨年は1アウトや1球に泣いた試合が多かったので、新チーム発足当初から『1球を大事にしよう』ということをテーマにしてきた。1球への執着心は、すごくある集団だと思います」とチームの長所を挙げた。

明大主将の村松開人

ドラフト候補が率いる立大、3回戦を知る強み

立教大学は1年のときからレギュラーとして出場し、今秋のドラフト候補選手としても注目される山田健太(4年、大阪桐蔭)の活躍が、優勝のカギを握る。1年春で打率3割7分5厘、2本塁打をマークして鮮烈デビューを飾ったが、ここ2年間は「納得いくような結果が出ていない。冬はバッティングを中心に強化してきました」

山田にとって最大の強みは、経験値だろう。今季は山田が1年だった2019年以来、3回戦以降が行われる「勝ち点」制が採用される。「1勝1敗で迎えた3試合目は、大変な感覚になる」(早大の小宮山監督)と言うほど、緊張感が漂う大事な一戦。山田は「経験しているのは自分たちの代だけで、未知の世界の部員も多い。先を見ても仕方ないので、目の前の試合を勝ちにいく」と意気込む。

立大主将の山田健太

「得点圏打率5割超え」をめざす法大

早大と同様、法政大学も山下輝(東京ヤクルトスワローズ)、三浦銀二(横浜DeNAベイスターズ)とプロに進んだ二枚看板が卒業した。加藤重雄監督は「投手は7人ベンチに入れて、調子のいい投手をどんどんつぎ込む」と総力戦を見込む。

打線は昨年の春秋と、2季連続で二塁手のベストナインに選ばれ、主将に就いた齊藤大輝(4年、横浜)が中心。高校時代から打撃には自信があったため、冬は守備練習に重点を置いた。「しっかり守れれば、バッティングにつながるんじゃないかと」。昨秋は好投手がいながら、得点力不足が響き、10試合中6試合が引き分け。この春は「得点圏打率5割超え」をめざす。

法大主将の齊藤大輝

東大監督に、選手がマフラーのプレゼント

東京大学が、2戦先勝方式で勝ち点を挙げるためには、神宮のマウンドを経験している井澤駿介(4年、札幌南)、西山慧(4年、土浦一)両右腕の好投が欠かせない。捕手で主将の松岡泰希(4年、東京都市大付)によると、4年生の投手陣は「技術だけじゃなく、体の使い方を研究するようなマニアックなことをやってる人が多い」。そこで得た知見を他の選手にも広げ、新たなコミュニケーションが生まれるのが、今年のチームの特徴だ。

井手峻監督も「2人とも20歳を過ぎて、体ができあがってきた。去年よりいいピッチングができると期待しています」と、井澤、西山に信頼を寄せる。そんな井手監督には最近、うれしいことがあった。今年2月13日に迎えた78歳の誕生日に、選手たちが「品のいいマフラー」をプレゼントしてくれたという。冬の間は「それをずっと巻いて、球場に通いました」。選手と首脳陣の一体感は、他の大学に引けを取らない。

東大主将の松岡泰希

東京六大学野球リーグは9日、東大―慶大、早大―法大の対戦カードで開幕する。観客数は1万5千人を上限とし、5月末の早慶戦まで、熱戦が繰り広げられる。

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