陸上・駅伝

特集:第101回関東学生陸上競技対校選手権

東洋大・児玉悠輔、関東インカレ1部10000mで3位「チームに勢いをつけられた」

児玉は男子1部10000mで3位に入った(撮影・すべて藤井みさ)

第101回関東学生陸上競技対校選手権大会 男子1部10000m決勝

5月19日@国立競技場(東京)
1位 伊豫田達弥(順天堂大4年) 28分42秒85
2位 井川龍人(早稲田大4年)  28分44秒82
3位 児玉悠輔(東洋大4年)   28分45秒74
4位 児玉真輝(明治大3年)   28分47秒06
5位 富田峻平(明治大4年)   28分47秒71
6位 松山和希(東洋大3年)   28分47秒86
7位 佐藤真優(東洋大3年)   28分49秒54
8位 阿部陽樹(中央大2年)   28分50秒23

9年ぶりに国立競技場で開催されている関東インカレ。初日となる5月19日の夕刻、男子1部10000m決勝があり、東洋大学の児玉悠輔(4年、東北)が3位に入った。レース後、児玉は充実した表情で取材に応えた。

冷静に全体を見て走り、最後に先頭へ

「率直に嬉(うれ)しいという感想ですね」。レース後、感想をたずねられると児玉はそう答えた。個人としての目標は最低でも入賞。ともに走ったチームメートの松山和希(3年、学法石川)、佐藤真優(3年、東洋大牛久)とも「3人で入賞しよう」と話してレースをスタートしたという。

入りの1000mは2分57秒とスローペース。児玉は集団の中ほどに位置を取り、様子をうかがった。酒井俊幸監督には「ハイペースになっても後から(前の選手が)落ちてくるから」と言われ、前半は抑えて5000mぐらいから徐々に前に行き、残り2000mから1000mで先頭を狙いたい、と考えていた。「冷静に走れました」と振り返る通り、序盤は大きな集団の後方についた児玉。4000m手前で国士舘大学のピーター・カマウ(2年)がひとり飛び出し、そのあとは大きな集団となって進んだ。

児玉(左から2人目)は集団の後方で冷静にレースを進めた

集団の中で児玉は後半に入ってから徐々に位置取りを前にしていった。残り5周となったところでも第2集団はまだ10人超。東洋大の3人は全員この集団の中にいた。残り2周手前で集団はカマウを吸収。ラスト1周手前で児玉はいっきに先頭を走っていた順天堂大学の伊豫田達弥(4年、舟入)につき、そのままラストスパートへ。いったん2位に浮上するが、ラストの直線で早稲田大学の井川龍人(4年、九州学院)にかわされ3位となった。

「大学ではラストスパートがもの足りてなかったんですけど、今回はまずまずのスパートだったと思います。抜け出した時に全体で3番目だと思っていたので、『意地でも表彰台』と思って走って。なんとか表彰台に入れて良かったです」

児玉は松山(手前)、佐藤(右)と喜びを分かち合った

松山は6位、佐藤は7位で3人入賞。3人はゴール後に笑顔でハイタッチし、互いをねぎらった。レース中はほとんどの時間、松山と佐藤が児玉の前を走っていたが、その姿に「離れるわけにはいかない」と鼓舞された。「全員で入賞できて、喜びを分かち合えたかなと思います」と笑顔を見せる。

最後の関東インカレで「有終の美」

児玉は今年最高学年になり、チームでは副将を務めている。「(関東インカレ)1日目、最上級生としても副将としてもいいスタートが切れたかなと思います」。主将の前田義弘(4年、東洋大牛久)は時には厳しく声をかけ、練習でも引っ張り、正しい方向にチームを導いてくれているといい、「すごいいい主将だなと思って一緒に頑張ってます」

昨年、東洋大は前半シーズンにけが人が続出し、なかなかメンバーをそろえられない状況だった。関東インカレでは児玉自身も5000mにエントリーしたが、棄権。長距離種目ではまさかの入賞者ゼロに終わった。その時と比べると自身も、チーム全体としても練習がしっかり積めているという。「最後の関カレで表彰台で終われたっていうのは、『有終の美』じゃないですけどそんな感じです。国立で走れて良かったなと思います」

副将としてチームのことを考える言動が印象的だった(28番が児玉)

全日本選考会ではトップ通過が目標

東洋大は昨年の全日本大学駅伝で10位となり、14年ぶりにシード権を落とした。そのため6月には関東地区選考会が控えている。予選会は10000mを走り、8人のタイムの合計で競われるため、今回の3人入賞の結果は弾みになると児玉。酒井監督からの「予選会から1番でいかないと駅伝では戦えないよ」という言葉を胸に、選手たちはもちろん、トップ通過を目標に選考会に臨むつもりだ。「その上で出雲、全日本、箱根と、3大駅伝優勝を狙っていけたらと思っています」

東洋大の今年のスローガンは「闘争心をとき放て」。そのスローガンを体現するような、チームに勢いをつける快走だった。

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