陸上・駅伝

特集:第101回関東学生陸上競技対校選手権

慶應大・細井衿菜主将「みんなのために勝ちたい」、最後の関東インカレで流した涙

細井は主将の覚悟を胸に、最後の関東インカレに挑んだ(撮影・すべて松永早弥香)

第101回関東学生陸上競技対校選手権大会 女子1部800m準決勝

5月21日@国立競技場(東京)
7着 細井衿菜(慶應義塾大4年) 2分14秒55

準決勝を走り終えて、しばらく電光掲示板を見つめた。競技場から引き揚げると、涙を我慢することができなかった。

関東インカレ3日目の5月21日、女子1部800mの準決勝1組目で2分14秒55で7位に終わり、決勝に進めなかった慶應義塾大学の細井衿菜(えりな、4年、中京大中京)はこう言葉をふりしぼった。

「ちょっと今、頭が真っ白です……」

関東インカレ前、チームメートからのメッセージ

同日にあった予選4組目では先頭で引っ張るレースを展開し、2分13秒26の3位で通過。準決勝も積極的に前に出たが、最後の直線で後続の選手にかわされた。「これまでの試合でできなかったところが出てきたのかなと思う。最後、もう一歩というところで足がもつれてしまった」

最終学年。そして、主将として強い決意で最後の関東インカレに臨んだ。大会前にはチームメートからこんな熱いメッセージをもらっていた。そこには、「たくさんの時間を共有することで、一人の先輩、人間として心から応援したいという気持ちになりました」「いろいろな感情を知った細井は今までで一番強くなっている」などという言葉が並んでいた。

チームメートからのメッセージは細井(前から2人目)の背中を押してくれた

昨年までは「結果を出さなきゃ」というプレッシャーを感じることが多かった。でも、主将になって「みんなのために勝ちたい」という思いが強くなっていったという。「今年はみんなが一緒に『結果を出す』というのを背負ってくれている感じがした。勝って、この人たちと喜び合いたいというのがやっと出てきた」

横田真人さんたちとTWOLAPSで学んだこと

もう一人、いい報告をしたい恩師がいた。陸上クラブ「TWOLAPS」の代表兼コーチを務める横田真人さん(34)だ。自身も所属し、指導を受けている。前日には「予選、準決勝をしっかり走って、また決勝の前に話そうね」と言われていたという。実は、決勝がある最終日の22日は横田さんがテレビ中継の解説者として現地に来ることになっていた。だからこそ、決勝で成長した姿を見せたかった。

TWOLAPSでは東京オリンピック女子1500m代表の卜部蘭(積水化学)ら日本のトップレベルの選手と練習を共にし、刺激を受けてきた。細井はここで過ごした時間を「自分の当たり前を上げてくれる時間」と表現する。

横田さんから約2週間前に言われた「大事なのは技術やスキルどうこうではなく、最後はどれだけ勝ちたいか、なんで勝ちたいか」という言葉が印象に残っているという。細井は言う。「横田さんのこの言葉にはっとさせられた。どれだけ能力や力があっても、気持ちに勝てるものはないんだなって」

この悔しさも、次のステージの力に

「今度は自分がやる番」

大学で陸上は一区切りと考えている。卒業後は広告代理店で働きたいという。この新たな目標も、昨年にTWOLAPS主催で開催された賞金レース「ミドルディスタンスサーキット(MDC)」の運営に携わったことが大きかった。「人の熱い思いをどのように伝えていくのかというのをこの場所で学んだ。今度は自分がやる番だという、使命感がある」

TWOLAPSはトラックを2周することを意味する。最後は涙をぬぐい、こう力強く言った。

「次のステージが私にとっての2周目です」

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