陸上・駅伝

特集:第101回関東学生陸上競技対校選手権

筑波大・高良彩花、関カレで走幅跳4連覇と三段跳とで2冠 主将として「一体感」を

高良は主将としての覚悟を胸に、仲間の応援を背に、最後の関東インカレを戦い抜いた(撮影・藤井みさ)

第101回関東学生陸上競技対校選手権大会 

5月19~22日@国立競技場(東京)
高良彩花(筑波大4年)
女子1部走幅跳 優勝 6m38(+0.2)
女子1部三段跳 優勝 12m93(+0.5)
女子1部4×100mリレー 4位 45秒67

筑波大学の高良彩花(4年、園田学園)は「絶対に16点をとる」と自分に言い聞かせ、自身最後の関東インカレに挑んだ。走り幅跳びで6m38(+0.2)とセカンドベストをマークし、4連覇を達成。三段跳びでは12m93(+0.5)で優勝し、走り幅跳びと合わせて2冠。有言実行の16点を獲得した。加えて4×100mリレー決勝で1走を務め、筑波大は4位(5点)だった。疲労で体の節々に痛みを感じながらもやり切れたのは、4年生の意地、243人もの部員を抱える筑波大学陸上競技部の主将としての意地だった。

走り幅跳びも三段跳びも最終試技で記録を更新

初日の5月19日には本命の走り幅跳びに出場。1回目に6m14を跳んで首位に立ち、以降もファウルを除き6m台をマーク。最終試技の前には客席に手拍子を求め、その勢いにのって6m38とさらに記録を更新した。特に後半3本は30cm台(6m32、6m34、6m38)を並べられたことに自身の成長を感じた。

走り幅跳びで高良はファウルを除き、唯一6m台で記録をそろえた(撮影・藤井みさ)

同日にあった4×100mリレー予選に高良は出走しなかったが、筑波大は+2で拾われ、翌20日の決勝に駒を進めた。決勝で狙うは表彰台。1走の高良は決勝前のチーム紹介から勢いづけようと仲間に笑顔を向けた。結果は4位とあと一歩で表彰台を逃したが、「それでも8位通過だったのに4位まで上げられました。1走で流れを作れたんじゃないかなと思います」と高良は振り返る。

主将として勢いをもたらすために、高良は4×100mリレー決勝の1走を務めた(撮影・藤井みさ)

大会3日目の21日、リレーを走った影響もあり、全身に疲労感と右のもも裏に違和感があったが、自分を応援してくれる仲間の期待に応えるためにも、絶対に優勝をすると心に決めた。三段跳びは4月16日の学生個人選手権で13m19(+2.1)を跳んで優勝した以来。日々の練習では走り幅跳びを優先し、三段跳びは試合を通じて感覚を高めているという。

1回目に横浜国立大学の芦田陽菜(4年、敦賀)が12m52(+0.2)をマークし、高良は12m46(+0.2)で2番手だったが、2回目で12m91(+0.1)を跳んで首位につけた。最終試技では選手が続々と記録を更新し、芦田も12m82(+0.2)の自己ベストを記録。

優勝が確定した高良は走り幅跳びの時と同様、客席に手拍子を求めた。「会場を盛り上げて、と先生に言われることが多く、本当にこれが私にとって関東インカレでの最終試技だったので、最後もみんなから力をもらって跳びたいと思ったんです」。13m付近で着地し、客席からは歓声代わりの拍手が送られた。髪が砂に触れてしまい、12m93(+0.5)と13mには届かなかったが、疲労がある中でも確実に13m近くを跳べていることは自信になった。

日本選手権ではともに自己ベストを

2冠は目標通りの結果だったが、自己ベスト(走り幅跳び6m44、三段跳び13m20)を狙っていただけに、記録には満足していない。次の試合は6月9日開幕の日本選手権。前回は「足がつってしまい、思うような跳躍ができなかった」と言うが、走り幅跳びは6m30(-1.0)、三段跳びは13m03(+2.1)とともに2位につけている。今シーズンは一度も足がつることなく跳べていることもあり、走り幅跳びは6m50を跳んで優勝、三段跳びは13m30~40で3位以内を目指す。

疲労を感じながらも、高良は三段跳びで12m93をマークした(撮影・松永早弥香)

高良自身、三段跳びの練習をほとんどしていないため、「自分の三段跳びは本当に三段跳びと言っていいのか、という感覚」だと言う。走り幅跳びをしている分、跳ぶ力の強さや助走スピードは武器であり、そこに三段跳びの技術がかみ合えば、まだまだ記録を伸ばせると高良は実感している。日本選手権までには三段跳びも何かひとつでも技術を習得し、自己ベストの更新につなげたい。

強豪校の主将として

競技力向上とともに主将の高良が力を注いでいるのが、一体感のあるチーム作りだ。1973年に設立され、例年200人を超える部員がそろう筑波大陸上部で、女性が主将を務めるのが高良が3人目だ。仲間からの推薦だけでなく、高良自身もこのチームの主将となりたいという気持ちがあったという。

今シーズンの部員数は243人。5ブロック(短距離、障害、中長距離、跳躍、投てき、混成)があるチームの中で、どうしたら全員が同じ目標を持って戦えるか。高良はチームビルディングやリーダーシップに関する知見を広げ、それを現場に落とし込んでいった。例えばブロック長を中心にして部員に目標の共有を促し、部員一人ひとりの意見や思いを吸い上げる。またプロフィールに顔写真を加えたのは、チームとして少しでもみんなのことを知り、理解し合えることを狙ってのこと。「この関東インカレでは想定よりも順位や得点が上回っています。頑張ってきたことの成果が出たのか分からないんですが、なんとかチームをまとめられたのかな」と高良は言い、チームの勢いを感じている。

三段跳びの表彰式に駆けつけてくれた仲間に、高良(中央)は笑顔で応えた(撮影・松永早弥香)

高良が4×100mリレーのメンバーに入ったのも、先陣を切ってチームを盛り上げていくため。ラストイヤーは個人として記録を狙うだけでなく、主将として部員243人全員の思いをひとつにし、筑波大学の力を見せつける。

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