愛知工業大が3大会ぶりの伊勢路へ 渡邉大誠主将、コロナ禍で棄権した悔しさも胸に
第54回全日本大学駅伝対校選手権大会 東海地区選考会
6月18日@マルヤス岡崎龍北スタジアム(愛知)
1位 皇學館大学 4時間07分34秒91
2位 愛知工業大学 4時間07分49秒37
―――――――――――
3位 名古屋大学 4時間09分09秒00
4位 岐阜協立大学 4時間10分11秒09
5位 中京大学 4時間13分31秒03
6位 三重大学 4時間25分30秒94
7位 静岡大学 4時間39分10秒64
8位 中部大学 4時間39分13秒95
9位 至学館大学 4時間47分15秒70
昨年6月12日、愛知工業大学は陸上部も生活する学内の合宿寮で新型コロナウイルスのクラスターが発生したため、翌13日の全日本大学駅伝東海地区選考会の棄権を発表した。PCR検査の結果、陸上部員は全員陰性だった。渡邉大誠主将(4年、愛知黎明)をはじめ、皆が悔しさを胸にこの1年を過ごしてきた。そして今年6月18日、愛知工業大は選考会で総合2位となり、3大会ぶり19回目となる本大会出場を勝ちとった。
2組目終了時点で暫定3位の名古屋大とは0.60秒差
選考会で1組目を任されたのは土方悠暉(ゆうき、2年、愛工大名電)と立松和馬(2年、津島東)の2人。スタートから皇學館大学の2人が抜け出し、第2集団には愛知工業大と岐阜協立大学の各2人を含む9人の集団でレースが進んだ。その集団を土方が引っ張り、後ろに岐阜協立大の2人がぴったりとついた。前回はこの舞台で岐阜協立大が総合2位となり、5大会ぶりの本戦出場をつかんだ。土方も本戦出場を競うチーム対してどのようにレースを作るかを考え、ペースを落として先頭を明け渡し、後ろにまわった。
思い描いていたのは、5月の東海インカレ10000m決勝で深谷涼太(愛工大4年、豊明)が見せたレースだった。ラスト3000mで一気に前に出ると、その勢いのまま5位でゴール。土方もラスト3000mでペースを上げ、独走態勢へ。最後は前を走る皇學館大に迫ったものの、そのまま3着でゴール。立松は9着に入り、愛知工業大は暫定2位につけた。
2組目は原田侑弥(4年、愛工大名電)と山本駿太(3年、伊賀白鳳)が出場し、2人そろってレースを進め、山本が3着、原田が4着だった。暫定2位ではあったものの、暫定3位の名古屋大学との差は0.60秒に迫っていた。その結果が競技場でアナウンスされたのは3組目のレース中。愛知工業大の渡邉主将は逆に燃えたという。「1秒なら勝てる」と気合を入れ直し、ラスト4000mほどで先頭を走る皇學館大の矢田大誠(3年、海星)の後ろにつき、ラスト2000mほどで前に出る。そこからはひとりで周回を重ね、1着でゴール。もうひとりの吉田椋哉(2年、豊明)は3着に入り、暫定3位の名古屋大との差は1分15秒に広がり、暫定1位の皇學館大との差は1分39秒から1分02秒に縮まった。
各校のエースがそろう4組目には深谷と苅谷真之介(3年、春日井東)がエントリーされた。スタートするとほどなくして中京大学の鈴木雄登(4年、中京大中京)が独走し、深谷と苅谷を先頭とする集団が続く。5000mの手前で皇學館大の柴田龍一(4年、三重)が集団を引っ張り、鈴木は集団に吸収された。
ほどなくして岐阜協立大の2人が前に出ると、深谷もその後ろに続いた。ラスト7周で岐阜協立大の中尾啓哉(4年、高岡向陵)がペースを上げて独走態勢へ。深谷は中京大の鈴木と競り合いとなり、鈴木は2着、深谷は3着だった。苅谷は8着に食い込み、愛知工業大は総合1位の皇學館大と14秒差での総合2位で、3大会ぶりの本戦出場をつかんだ。
チームで襷をつなぐため、ケガなく一体感をもって
昨年の全日本大学駅伝にチームとしては出られなかったが、東海学連選抜として愛知工業大から深谷が3区、渡邉が4区、堀田翔紀(現・志楽園福祉会)が8区を走った。だが渡邉は「あまり走っているという実感なくて、記録もそんなに良くなかった(区間22位)ので、やっぱり駅伝は自分のチームで襷(たすき)をつなぐのが重要だなと思いました」と振り返る。
主将として一体感を意識し、誰ひとりケガなく今大会に挑めるようにコミュニケーションを大切にしてきた。例年5月上旬開催だった東海インカレが今年は5月27~29日に開催され、今大会はその3週間後というスケジュールだった。渡邉は東海インカレで3000m障害(SC)に出場し、予選落ち。だがその反面、今大会ではコンディションも良くモチベーションも高い状態で挑めたという。1、2組目の選手の姿を見て、「想定以上の走りをしてくれたので、自分も熱い心をもって走ることができました」と笑顔を見せた。
渡邉は「エースは4組を走った2人(深谷と苅谷)なんで」と言うが、3大会ぶりにチームでつなぐ襷、最後の伊勢路への思いは誰よりも強い。「チーム状況によって変わってくると思うけど、良ければ1区とか前半の区間を走ってみたいです」と言い、チームに流れをもたらす走りを目指す。また土方も地元がコースの1区を希望しており、家族や友人たちに大きくなった姿を見せたいと考えている。
去年は挑むことすらできなかった。その舞台に帰ってきた愛知工業大は自信を深め、鍛錬の夏を越えて、実りの秋を誓う。