バレー

慶應大・松本喜輝「チームを勝たせられる真のエースに」 2部降格の悔しさを早慶戦に

ベストスコアラー賞にも満足することなく、春の悔しさを胸に戦う

慶應義塾大学体育会バレーボール部は、今年の春季関東大学リーグ戦で3年ぶりに1部へ復帰。数ある強豪相手にも臆することなく戦い、4勝を挙げる好成績を収めた。中でも、松本喜輝(3年、九州産業)は個人賞としてベストスコアラー賞を獲得するなど、チームのエースとして大活躍。だが7月9日の1部2部入れ替え戦で、慶大は国際武道大学にセットカウント1-3で敗れ、無念の2部降格が決まった。松本は勝負の秋を前にして、7月30日の早慶戦での活躍を誓う。

決め切れない「悔しさ」

松本は春季リーグ戦の自身の出来を60点と厳しめに評価する。残りの40点はミスの多さ。ミスをなくさなければ1部では勝てないと実感した。そのことをより強く意識したのは、リーグ最終戦の専修大学との試合。慶大は4勝7敗、専修大は3勝8敗と両校とも入れ替え戦に回るか否かの大事な一戦だった。相手のマッチポイントの場面、セッターが託したのは松本。しかし、松本のスパイクは相手ブロックに捕まりシャットされて試合終了。

「めちゃくちゃ悔しかったです。最後、大事な局面で2本託してもらったボールが2本とも相手ブロックにシャットされて、みんなに申し訳ない気持ちもありましたし、そこで決め切れない自分に対して悔しさがありました」

松本はサウスポーのオポジットとして得点を量産し、大車輪の活躍を見せた

入れ替え戦においても、「勝たなければいけない試合ということで結果を求めすぎて固くなってしまった」と振り返る。しかし、そういう時こそ「フロー」の状態でいなければならない。フローとは「揺らがず、とらわれずの状態」のことで、慶大バレー部の取り組んでいるメンタルトレーニングで講師の辻秀一先生が常に口にする言葉だ。高いパフォーマンスを発揮するには、いい心の状態から。チームがうまくいかない時や負けている時でも揺らがない心を持たなくてはいけない。松本は「技術面だけではなく、精神面でもチームを支えられるようになりたい」と話す。

点を取る選手からチームを勝たせられる選手に

松本は今季ベストスコアラー賞を獲得したが、「チームが勝てなかったら意味がない」と言い切る。エースとして期待されることに関して、「期待されると期待以上をしないと評価されないじゃないですか」と、プレッシャーを感じることもあるようだ。しかし同時に、最後にトスを任せてもらえることの嬉(うれ)しさもある。みんながつないでくれたボールを決め切らないといけないという責任感が松本を奮い立たせるようだ。チームが苦しい場面でボールが集まってくるポジションがオポジット。その1点を決め切り、チームを勝利に導いてこそ真のエースとなれるだろう。

「もう少しサーブを安定させたい」と話す松本。練習時から試合の苦しい場面での1点を想定して取り組んでいる

伝統の一戦、早慶戦にかける思い

7月30日、慶大は永遠のライバル・早稲田大学と対戦する。有観客で行われる早慶戦は実に3年ぶり。今年の春季リーグ戦は一部有観客で行われ、松本はその時に応援のありがたさを身に染みて感じたという。やはり応援の声は選手にとって大きな力になるようだ。

早慶戦には長い歴史があり、両校の名を背負う選手にとって絶対に負けられない戦いと言える。バレーの早慶戦は今年で86回目。その歴史の中には勝敗だけでなく、これまでの伝統を受け継いできた多くの選手の様々な思いが詰まっている。松本は「OBの先輩方がたくさん見に来てくださるのも楽しみの一つ。どの部活も早慶戦に対しての思いが強いし、常日頃からバレー部を支えてくださるOBの方々や応援してくださる方に、感謝の気持ちをもっていい試合が見せられたらなと思います」と、気合いも十分だ。

来たる早慶戦においても、松本の強烈なスパイクとサーブに注目だ

伝統の一戦を制すのは連覇中の早大か、はたまた春の悔しさをバネに成長を遂げた慶大か。この早慶戦は、入れ替え戦で涙をのんだ慶大の再出発となる大事な試合になるはずだ。早慶戦は観客の盛り上がり、応援、歓声など、独特の雰囲気が漂う。その雰囲気にのまれることなく、最高のパフォーマンスを発揮し、チームを勝利に導く真のエースとなれるか。松本のプレーから目が離せない。

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