野球

駒澤大・与倉良介主将は前向きな姿勢を絶対に崩さない 秋こそは優勝で恩返しを

与倉は主将として、8年ぶりの秋季リーグ戦優勝を狙う

東都大学野球秋季リーグ戦は9月3日、県営あづま球場(福島)にて開幕する。駒澤大学は第3試合に中央大学との初戦を迎える。春季リーグ戦では入れ替え戦を回避し、リーグ3位という結果で終えた。今永昇太(現・横浜DeNAベイスターズ)を擁した2014年の秋季リーグ戦から8年間、優勝に遠ざかっている。

今季こそは栄冠を手にしたい。そんな駒澤大を主将として選手としても引っ張っているのが、与倉良介(4年、向上)だ。秋季リーグ戦は、与倉にとって大学生として最後のリーグ戦となる。主将として、1人の選手としてラストシーズンにかける思いとは。

ターニングポイントとなった駒澤大1年目春の鮮烈デビュー 横浜DeNA・今永昇太1

2年生の秋季リーグ戦で一躍注目される存在に

強豪校がひしめく神奈川県の向上高校から駒澤大に進学した与倉。進学を決めた理由は、高校時代の監督が駒澤大出身で、薦めてもらったことがきっかけだという。

駒澤大では1年生の時からメンバー入りし、代打で出場機会を重ね、入れ替え戦も経験した。新型コロナウイルスの影響で中止となった春季リーグ戦の期間を経て、迎えた2年生の秋季リーグ戦では、打率.400をマーク。首位打者とベストナインのタイトルを獲得し、一躍注目される存在となった。「一球一球を本気で勝負して、打てるボールは積極的に打ちに行った結果が首位打者につながった」と当時を振り返る。

最初4試合は代打での出場となったが、中央大戦で7番右翼手に抜擢(ばってき)されると、その後はスタメンに定着し、安打を重ね続けた。立正大学戦では、大学生になって初の公式戦ホームランも生まれた。

一球一球を本気で勝負し、2年生の秋にはスタメン入りを果たした

これらの結果が生まれたのは、タイトルを獲得した秋季リーグ戦前のオープン戦が、関係しているという。「オープン戦に代打で出場した時、甘いボールを見逃して、とても後悔した。それからは打席前の準備の仕方、心構えを考えてから打席に入るようにした」と準備の大切さを痛感したと話す。この打席が与倉にとって、4年間の中で1番のターニングポイントだと言い、自身を成長させる打席となった。

3年生からはレギュラーとして駒澤大を支える立場となった。その3年生の秋季リーグ戦では、全試合を3番右翼手でスタメン出場し、3番与倉、4番鵜飼(現・中日ドラゴンズ)、5番新田(現・JFE西日本)と強力なクリーンナップをともに築いた。与倉は攻守に亘る活躍を見せ、2度目となるベストナインを獲得。チームを2位という好成績に導いた。

与倉は3年生の時、先輩たちと駒澤大の強力なクリーンナップを築いた

主将としての責任を胸に

主将には4年生間での投票によって選出されたという。任された際には「伝統のある大学なので、責任を感じる」と話していた。そして、主将として迎えた春季リーグ戦、終わってみればリーグ3位と好成績で終えたが、与倉は「思っていたよりもうまくいかなくて、悔しいリーグ戦になった」と振り返った。そう言うのも、駒澤大は最終戦まで入れ替え戦に回る可能性があり、勝利数も6勝7敗と負け越してしまったからだ。

主将になってからは、「チームを勝たさなければならないという責任もあって、今までとは比べものにならないプレッシャーがあった」と話す。ただ、与倉はその中でも下を向くことは決してなかった。「リーグ戦期間中はどんなことがあっても前向きにいこうと決めていた」と、チームが暗くならないように声をかけ続けた。与倉の声は、打席、外野、ベンチと場所を問わず、球場に響き渡った。それは、たとえチームが負けを喫したとしても「明日勝つぞ」とチームを鼓舞し続ける声がチームを支え、明るくした。

与倉は練習でも試合でも、「明るくいたい」「前向きでいたい」という気持ちを大事にしてきた

ただ、そんな明るい与倉でも主将として苦悩した点があったという。チームの中でも意識の高さやモチベーションに差があるため、全員が同じ熱量で日本一を目指すことにはとても苦労したという。それでも、同じ目標に目を向けることができたのには、副将である林琢真(4年、東邦)の存在が大きかったと話す。「1人ではキツイところもあったが、副将である林琢真などが支えてくれたおかげで、僕も頑張れた」と、自身1人の力だけでなく、周りのサポートがあったからこそ、主将を成し遂げられているという。

中学の顧問から授けられた「凡事徹底」

「凡事徹底」。この言葉は、与倉が中学生の時に顧問の方に教えてもらった言葉だと言い、今もその言葉を大切にしている。「当たり前のことを当たり前にできることは意外と難しい。当たり前のことをしっかりとやり切れる人になりたい」と与倉にとって常に明るく、前向きであることは当たり前のことなのかもしれない。

与倉は主将になったこの1年で特に、「明るくいたい」「前向きでいたい」と多く口にしてきた。どんなに厳しい練習やトレーニングにも後輩たちが見ているからと、前向きな姿勢は崩さなかった。自身が打てず、調子を落としていたとしても、マイナスな空気は出したくないと、周りを引っ張り続けた。与倉がそこまで、明るく前向きでいることを意識するのは、それが与倉にとっての選手像であり、主将像であるからである。これはラストシーズン、最後までやり切り、貫きたいと覚悟を示した。

ラストシーズンは首位打者、ベストナイン、MVPの3タイトルの獲得を選手としての目標とした。その上で、主将として「今までお世話になった方々に恩返しができるように頑張りたい。そしてチーム全員で喜び合えるように必ず優勝したい」と意気込んだ。

in Additionあわせて読みたい