陸上・駅伝

特集:第91回日本学生陸上競技対校選手権大会

青山学院大・中村唯翔が日本インカレ10000m日本人2位「3大駅伝を全部走る」

中村は果敢な走りを見せたが、ラストで亀田(左)にかわされ、日本人2位になった(撮影・すべて藤井みさ)

第91回日本学生陸上競技対校選手権大会 男子10000m決勝

9月9日@たけびしスタジアム京都
1位 フィリップ・ムルワ(創価大4年)   28分36秒70
2位 ボニフェス・ムルア(山梨学院大4年)   28分38秒37
3位 チャールズ・ドゥング(日大4年)   28分41秒11
4位 亀田仁一路(関西大3年)         28分49秒45
5位 中村唯翔(青山学院大4年)      28分51秒55
6位 伊豫田達弥(順天堂大4年)      28分58秒45
7位 横田俊吾(青山学院大4年)      29分02秒22
8位 中山雄太(日本薬科大4年)      29分05秒35

9月9日、日本インカレ1日目の最終種目として男子10000m決勝が行われた。留学生が表彰台を占め、日本人トップは関西大学の亀田仁一路(3年、姫路商)。次いで青山学院大学の中村唯翔(4年、流通経済大柏)が入った。

留学生に食らいつくも、逃した日本人トップ

蒸し暑く、風もほとんどないコンディションの中で行われたレース。スタートすると創価大学のフィリップ・ムルワ(4年、キテタボーイズ)が先頭に立ち、集団は大きな縦長になった。中村は集団の前から7~8番手をキープし、ペースを刻んだ。2分47秒、2分49秒、2分53秒と、1km2分50秒前後でレースが進んだ。5000mの手前で集団が割れ、先頭は7人に。さらに6000mの手前でムルワと山梨学院大学のボニフェス・ムルア(4年、キトゥムラ)が出て、中村はいったん2人に離された。しかし果敢に食らいつく姿勢を見せ、ムルアに追いつき、日本大学のチャールズ・ドゥング(4年、札幌山の手)とともに3人で2位集団を形成した。

留学生とともに走る場面も。力がついてきた証拠だ(10番が中村)

8000mを過ぎたところでムルア、ドゥングに離され、8600mほどで後ろから追ってきた亀田にぴたりとつかれた。そのまま2人で走り続け、ラスト1周のスパート。残り150mで猛烈なスパートをかけた亀田に最後の直線で抜かれ、2秒差で5位(日本人2位)となった。走り終わった中村は悔しそうな表情を見せ、口からは「まじか!」という言葉が漏れた。

練習消化に自信も「弱さが出てしまった」

中村は昨年の5月に仙骨を疲労骨折。そこから2カ月間走れない時期が続き、8月1日からリハビリとして走り出した。昨年8月の月間走行距離は100km足らず。9月から本格的に走り始め、全日本大学駅伝では2区区間10位、箱根駅伝では9区で1時間7分15秒と、従来までの区間記録を46秒更新する区間新記録を樹立した。大学ラストイヤーとなる今シーズンはけがもなく、夏合宿の練習消化率も100%。月間走行距離は600kmに迫るなど、しっかりと距離を踏んできた。

夏合宿が終わってから1週間程度でレースに臨み、完璧に疲労が抜けていたわけではない。しかしいい流れを感じていたこともあり、レース前に立てた目標は「8位入賞」。「でも4000mあたりからズルズルと選手たちが落ちていって、そこから留学生につかせてもらって。『もしかしたら表彰台いけるのかな』という気持ちもありました。自分的には合格点じゃないのかなと思います」。留学生と走ったことについて問われると「自分がついてるのが信じられなかったですね。気持ち良かったです」と手応えを話した。

レース直後、中村は悔しそうな表情を見せた

しかし、日本人トップを狙える位置にいたが、最後の最後でかわされてしまった。正直なところ亀田のことはまったくノーマークだったと言い、「陸上は何が起きるか分からないですね」と正直な気持ちを口にする。高校時代からの癖で、ラスト400mで後ろにつかれていると勝てない、という意識があったという。「でもここまで練習を積んできたので勝てるかなと思っていたけど、弱さが出てしまったかなと思います。スピードのキレをもっと磨いていって駅伝シーズンに入りたいです」

「自分の持ち味が出るのは全日本、箱根」

青山学院大の駅伝シーズンの目標は、箱根駅伝総合優勝と今年樹立した総合成績(10時間43分42秒)の記録の更新。個人としての目標は5000m、10000mの自己ベスト更新、そして3大駅伝すべてのメンバーに入って走ることだ。「4年目なのでしっかり3本とも走りたいです。特に出雲駅伝はメンバーに一度も入れていないので、走りたいなという気持ちがあります」。だが中村は自分をスピードよりは距離タイプだと自覚しており、「自分の持ち味が出るのは全日本、箱根」だとも言う。

チーム内競争も熾烈だが、アピールを続けメンバーをつかみとりたい(右が中村)

「出雲は比較的短い距離で、僕よりもスピードに特化している選手もいますけど、それでも出雲に合わせていけたら。厳しいけど狙っていきたいです。そこから全日本、箱根といい流れをつなげていきたいです」。今回ともに出場したチームメートの横田俊吾(4年、学法石川)、西久保遼(4年、鳥栖工)に先着したのはいい材料となった。「2人とも実力のある選手なので。ここで勝つのはアピールにもつながるので、(チーム内で)1番を取れて良かったです」と話す。

箱根駅伝9区で区間新記録を出したため、周りからは「また9区を走って、さらなる区間新を狙ってほしい」と言われることもあるという。「でも自分としては往路を走りたいなという気持ちがあります。3区か4区を狙っていきたいです」。駅伝シーズン直前、自らの手応えと改めての課題を見つけたレースとなった。

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