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特集:2022年 大学球界のドラフト候補たち

白鷗大・曽谷龍平 吉田輝星、山口航輝の指名に「すごいな」から4年 今度は自分の番

先にプロの道へ進んだ高校時代のチームメートに追いつく日も近い(提供・白鷗大野球部)

最速151キロの速球とツーシーム、カットボールなどキレのよい変化球を武器に高い奪三振率を誇る白鷗大学の左腕投手・曽谷龍平(4年、明桜)。今春のリーグ戦では、7試合で46イニングを投げ55奪三振。秋も6試合の37イニングで52奪三振をマークした。10月8日にあった上武大学戦で登板した際には、巨人を除く11球団、計18人のNPBスカウトがスタンドから熱視線を送った。ドラフトでは1位候補として注目されている。

コロナ禍が「変革」の契機に

右打者の内角を突く「クロスファイア」が曽谷の最大の武器だ。「一番自信があるボールはストレートです。力感以上のストレートというか、70~80%の力感でいって、リリースのときに100%にするよう心がけています」

曽谷は、投手としての自身の強みをそう語る。力みのない投球フォームから放つ速球は、打者から見れば思った以上のスピード、力強さで捕手のミットに飛び込んでくる。

白鷗大では、1年秋から公式戦のマウンドを経験。「ボールのキレには自信があったけれど、コントロールがバラバラでした」と当時を振り返る。2年春のリーグ戦がコロナ禍で中止となったころから、「何かを変えなければ」という思いから体作りに取り組んだ。食事の回数を1日6食に増やし、筋力トレーニングに励んだ。これにより、体重は10キロ近く増加。3年春から3季連続で最多奪三振のタイトルを獲得し、3年秋には最多勝利、最優秀防御率にも輝いた。高校時代は最速140キロだった球速も、3年秋には151キロにアップした。

ドラフト会議では上位での指名が予想される(撮影・小川誠志)

阪神とロッテでプレーした経験がある藤倉多祐監督も「曽谷は向上心旺盛で、素直で、負けず嫌い。今のピッチングフォームは、強弱、リズム、角度など、自分で考えて試行錯誤しながら作り上げてきたもの。本人の努力のたまものです」と成長を喜ぶ。

今春の松本大学戦では、13三振を奪ってノーヒットノーランを達成した。夏には侍ジャパン大学日本代表の一員に選ばれ、7月にオランダで行われた第30回ハーレムベースボールウィークに出場した。リリーフで3試合に登板し、3回を投げて7奪三振、無失点の好投。国際試合初登板となったオープニングラウンドの第2戦・アメリカ戦では、マウンドに上がった最初のイニングで3者連続三振と見事なピッチングを披露した。

8月末の高校ジャパンとの壮行試合で、最後の1イニングを締めた(撮影・井上翔太)

高校最後の夏は、金足農に敗れた

出身は、奈良県生駒郡斑鳩町。斑鳩中学校時代は志貴ボーイズでプレーし、中3の夏は全国大会の8強に進出した。PL学園や青森山田などでスカウティングを担当し、辣腕(らつわん)をふるった井元俊秀氏から誘いを受けたことから、高校は秋田・明桜への進学を決意。現在、千葉ロッテマリーンズで強打の外野手として活躍している山口航輝は明桜時代のチームメートだ。

曽谷と山口を擁した明桜は、彼らが高2の夏、秋田大会決勝で金足農を破り、第99回全国高校野球選手権大会への出場を果たした。ところがエースだった山口が決勝で右肩を亜脱臼し、甲子園では登板できなかった。初戦で二松学舎大付(東東京)に2-14で敗れて敗退。曽谷は3番手でマウンドに上がった。
高3の夏、秋田大会決勝では2年連続で金足農と対戦した。しかしチームは0-2で敗れた。曽谷は四回途中からマウンドに上がり、4回3分の1を4安打、1失点、4奪三振と好投したが、打線が剛腕・吉田輝星(北海道日本ハムファイターズ)の前に、4安打で完封された。

最後の夏は吉田輝星を擁する金足農に敗れた(撮影・朝日新聞社)

「山口は2年からエースで4番としてチームを引っ張ってくれた。今度こそ山口を甲子園のマウンドに立たせたい、という思いでやってきたので、決勝で負けたのは本当に悔しかったです」。曽谷は高校最後の夏を振り返り、悔しそうな表情を見せた。明桜にリベンジを果たした金足農は、甲子園でも劇的な試合の連続で決勝へ進出し、高校野球ファンに強い印象を残した。曽谷も実家の斑鳩に帰省した際、甲子園球場に足を運んで金足農の1回戦を観戦したが、悔しさもあり、2回戦以降は見なかったという。
高校野球を終え、「レベルの高い関東のリーグでやりたい」という思いから、栃木県小山市にある白鷗大への進学を決めた。白鷗大は岡島豪郎(東北楽天ゴールデンイーグルス)、大山悠輔(阪神タイガース)、中山誠吾(埼玉西武ライオンズ)ら、過去に14人のプロ野球選手を輩出し、8度のリーグ優勝を誇る関甲新学生野球リーグの強豪だ。

プロの舞台で山口と対戦してみたい

高3の秋に行われたプロ野球ドラフト会議は、寮にあるテレビで見ていた。金足農のエース・吉田は日本ハムの1位、チームメートの山口はロッテの4位指名を受け、プロの世界へ進んだ。

「当時はプロ野球なんて、自分には遠い世界だったので、山口や吉田が指名されて、すごいなぁと思いながら見てました。山口のことはずっと応援しています」

山口とは高校を卒業してからも、連絡を取り合っている。今春のリーグ戦で曽谷がノーヒットノーランを達成したときには、山口からもLINEで祝福のメッセージが届いたという。

長い手足を生かした速球が持ち味だ(撮影・井上翔太)

今季16本塁打を放ち、ロッテの中心選手になりつつある山口とは来年以降、同じチームでプレーする可能性もあれば、敵味方に分かれて対戦する可能性もある。曽谷は「山口とは違うチームに行って、対戦してみたい気持ちが強いです。山口もプロですごく成長していますから、勝てるように自分ももっともっと努力したい」と闘志を燃やしている。最高の舞台で、山口の内角にクロスファイアを投げ込む日を楽しみに、運命のときを待つ。

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