陸上・駅伝

特集:第34回出雲駅伝

駒澤大・佐藤圭汰 初の大学駅伝で鮮烈デビュー 世界を意識する先輩を「成功例に」

15分27秒の区間記録は高校の先輩・三浦龍司をも上回った(撮影・新井義顕)

第34回 出雲全日本大学選抜駅伝競走

10月10日@島根・出雲大社~出雲ドームの6区間45.1km
優勝  駒澤大学    2時間08分32秒
2位 國學院大學   2時間09分24秒
3位 中央大学    2時間09分48秒
4位 青山学院大学    2時間10分18秒
5位 順天堂大学   2時間10分50秒
6位 創価大学    2時間10分52秒
7位 法政大学    2時間11分54秒
8位 東京国際大学  2時間11分59秒

10月10日に開催された第34回出雲駅伝で、駒澤大学が9年ぶり4度目の優勝を果たした。全6区間で区間2位以内と盤石のレース運びを見せたが、その中でもあえてMVPを選ぶとしたら、2区(5.8km)で区間新記録の走りを見せ、チームをトップに押し上げた佐藤圭汰(1年、洛南)だろう。

プレッシャーは感じなかった

高校時代に1500m、3000m、5000m各種目の高校記録を打ち立てて、駒澤大に入学したスーパールーキー。進学後も5月の「ゴールデンゲームズinのべおか」で5000mを走り、13分22秒91のU20日本新記録を樹立。大学駅伝デビュー戦となった今回の出雲路でも鮮烈なデビュー。早くも、その怪物ぶりを発揮している。

「プレッシャーは感じませんでした。走る前から区間新は意識していて、(1位が)見える位置で渡してくださったので、トップで3区の田澤廉(4年、青森山田)さんに渡すイメージでした。イメージ通りで練習の成果を発揮できました」

第1中継所で襷(たすき)が渡ったのは、トップの中央大学と9秒差の2番目。先頭でスタートした中央大の2区は、千守倫央(とものり、4年、松山商)。9月の日本インカレ1500mで、2位に輝いた大学界トップクラスのスピードスターだ。

トップと9秒差の2位で初の大学駅伝スタート(写真提供・高野みや)

その実力者に対し、佐藤は1km付近で早くも追いついてしまった。「(自分の中では)抑えている感じでした。突っ込もうと思ったら、もっと早く行けたんですが、突っ込んで走ったら(最後で)つぶれちゃうなと思ったので。自分のペースで行ったんですけど、すぐ追いついたので、突き放してやろうと。ハイペースではありましたけど、その中でもラストまで余裕を持って動けるくらいで、ある程度のペースでいっていました」。あくまで冷静だった。

田澤廉は後輩の区間新に「妥当ですよ」

本人が「とばしていない」というそのペースに、後続は付いていけなかった。千守に並走する間を与えずに突き放すと、2017年の第29回大会で当時青山学院大学の田村和希(現・住友電工)が出した区間記録を20秒も更新。15分27秒で第2中継所に飛び込んだ。5kmに換算すると、13分18秒の5000mのトラックでの自己記録を上回る好記録。強い追い風が吹いていたとはいえ、驚異的なタイムだった。

第2中継所で佐藤を待ち構えていたエースの田澤は、にやりと笑みを浮かべて駆けだした。「(田澤に襷がトップで渡った)あの時点で、正直優勝はほぼ決まっていたのかなと」

全6選手が区間2位以内の走りで、大会記録を更新した(撮影・新井義顕)

どういうことか。レース前日の記者会見で、各大学の監督が口をそろえたのが前半3区間の重要性だった。前日から強い西風の天気予報で、後半3区間はコースの特性上、向かい風になり、追い上げが難しくなるため、どうしてもアドバンテージが欲しかったのだ。その思惑を反映して、他の大学も3区にエースをずらりと配置する中、田澤が区間2位の走りで引き離し、後半3区間は中継車を風よけに利用しながら、悠々と逃げ切った。

田澤は、後輩の区間新の走りをどう見ていたのか。「妥当ですよ。(練習で)自分のペースについてこられるくらいですから。区間新って言われても『まあだろうな』って感じですね」。本人も、自分の走りには満足していなかった。「残り2kmで(お腹に)差し込みが来てしまったので、80点の走り。100点ではないです」。それもそのはずだ。「5000mで12分台を大学在学中に達成したい」と、すでに世界水準を見据えている。

駒澤大は目標とする「学生3大駅伝三冠」に挑戦する権利を得た(撮影・新井義顕)

走るためのスタミナは、トラックでも生きる

だからこそ、「世界を意識している選手を、自分は常に意識しています」と言う。今回なら京都・洛南高の先輩で、東京オリンピックの3000m障害で7位となり、日本選手初の入賞を果たした三浦龍司(3年)も同じ2区で出走していた。佐藤は三浦より4秒、タイムが短かった。「他校(のランナー)は三浦さんしか意識してなくて。今回は勝てましたが、一緒に走っているわけではないですし、自分の中で三浦さんに実力で勝ったとは思ってないので。これがまぐれではなくて、次も勝てるようにレベルアップして、いずれは勝てるようにしたいと思います」

鮮烈な大学駅伝デビューを飾ったルーキーは、今後も駅伝に対して前向きだ。「5000mとか1500mとかは、スピードと思われがちなんですけど、スタミナは必要になってきます。箱根に向けた練習とか、走るためのスタミナは絶対にトラックでも生きてくるので、三浦さんとか田澤さんとか、箱根もしっかり走られていますし、そういった事例を成功例として、トラックの世界につなげられるようにしていきたいと思います」。これから4年間、一体どれだけの区間記録を塗り替えるのか、今から楽しみでならない。

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