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特集:第74回全日本大学バスケ選手権

吉田亜沙美さんから教え子へ「出し切って」 東京医療保健大ACの日々を振り返る

コーチを務めていた東京医療保健大の教え子にエールを送る吉田亜沙美さん(すべて撮影・松本麻美)

長く日本代表のポイントガード(PG)として日本の女子バスケットボール界を支えてきた吉田亜沙美さん。2021年に引退後、指導者の道を視野に活動している。2022年3月までの約1年間は、全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)の女子で5連覇を果たした東京医療保健大学でアシスタントコーチ(AC)を務めた。6連覇を狙う教え子たちに、「出し切ってほしい」とエールを送った。

未経験の大学バスケ界 素直に「すげーな」

――改めて、東京医療保健大学でアシスタントコーチを務めることになった経緯を教えてください。

吉田:大学がいいとかWリーグがいいとか、こだわりがあったわけではないんです。ただ、指導者の勉強はしてみたいなと思っていました。そんな時に、当時女子日本代表のアシスタントコーチを務めていた恩さん(現女子日本代表監督の恩塚亨氏)が「じゃあ僕のところでやってみる?」と言ってくれて。「行きます!!」とお願いした形でした。

――ご自身は東京成徳大学高を卒業後、WリーグのJOMO(現・ENEOS)に進まれました。経験したことのない大学バスケットの世界は、どのように見えましたか?

吉田:まず、東京医療保健大の子たちがすごくあたたかく迎えてくれて。自分もすぐになじむことができました。バスケットのレベルも想像以上に高く、Wリーグと遜色ないなと感じましたね。

昨年のインカレではベンチに入り、教え子を見守った

なにより、みんな本当にタフ。結構な量のフィジカルトレーニングをやって、全体練習もやって、その合間に授業を受けて課題をやって。とにかく忙しいんです。素直に「すげーな」って思いました。そこまでしてバスケットに向き合うって、簡単なことじゃないと思います。

6連覇へ向け、4年生の熱量に期待

――これまで5連覇を支えてきた恩塚氏が、日本代表監督に専念するため、2022年3月をもって東京医療保健大の監督を退任しました。後任は恩塚氏の「師匠」の一人である日高哲朗氏。チームにどんな変化があるでしょうか?

吉田:バスケットのベースは変わらないと思います。ただ、やっぱり監督が代わった年の難しさはあるんじゃないかな。試合中のコミュニケーションの取り方とか。私もENEOSで何回か経験しましたが、どのカテゴリーでも同じだと思うので。

そういう面があるからこそ、やっぱりチームの在籍期間が長い4年生に頑張ってほしいですね。下級生も「優勝したい」という思いは同じだと思うんですけど、4年生は熱量が違うと思う。社会に出る前の最後の舞台ですから、1~3年だった時とは、見える景色が変わっているはずです。

――教え子たちにどんな戦いぶりを期待していますか?

吉田:留学生で4年生のジョシュア・ンフォノボ・テミトペ(高知中央)がプレーの中心になると思います。ただ、相手も対策をしてくる。勝ちたい思いが人一倍強い子なので、うまくいかない時間帯にどれだけ周りが声をかけてあげられるか、がポイントになると思います。

8日の関西学院大学戦で20得点した東京医療保健大のジョシュア・ンフォノボ・テミトペ(8番)

今年はシューターも多いので、しっかりガード陣がリングにアタックして、うまく使ってほしいですね。3年生の古木莉子(アレセイア湘南)には、同じガードとして成長を期待しています。

結果よりも、コートで見せてほしいもの

――教え子たちにエールをお願いします。

吉田:他の大学もレベルが高い。優勝するのは簡単ではありません。ピック&ロールだったり、ディフェンスだったり、チームのルールをいかに徹底できるかが勝敗を分けます。徹底力。それがポイントだと思います。

みんながどれだけ頑張ってきたかを知っています。だから、結果はどうあれ、後で振り返った時に「やりきったぞ」と思えるものが残るよう、出し切ってほしい。「こうしておけばよかった」という後悔はしてほしくないです。

私も、Wリーグ時代は「王者のプレッシャー」を常に感じていました。でも、チームは毎年変化があるもの。今年のチームで表現したいものを、コートでしっかり見せてほしいなと思っています。

よしだ・あさみ 1987年10月9日、東京都生まれ。小学2年生でバスケットを始め、東京成徳大高校3年時に日本代表入り。卒業後にJOMO(現ENEOS)へ進み、1年目からチームの主力となり、リーグ11連覇に貢献。2016年リオデジャネイロ五輪では主将を務め、8強入り。21年に現役を引退し、指導者を視野に活動している。

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