アメフト

西南学院大・古庄仁晟 競技歴は半年余り、屈指のパワー派RBは「トレーニングの虫」

アメフトの格好が様になるがっしりとした体格にスッキリ爽やかな表情(すべて撮影・北川直樹)

全日本大学アメリカンフットボール選手権準決勝

12月4日@博多の森陸上競技場(福岡)
関西学院大学(関西代表)49-9西南学院大学(九州代表)

12月4日に福岡市の博多の森陸上競技場であった、アメリカンフットボールの甲子園ボウル出場をかけた西日本代表決定トーナメント。関西代表の関西学院大学と九州代表の西南学院大学の試合は、49-9で関学が勝った。西日本代表決定戦の常連である西南学院は、スコア上では大敗を喫したが、随所でハートのこもったプレーを見せて観客を沸かせた。

数字以上に躍動した関学戦

私は恥ずかしながら、西南学院の試合を初めて生で見て、取材する機会となった。試合前の焦点は、甲子園ボウル最多優勝(32回)を誇る関学がどんな勝ち方をするのか、新たな戦力として台頭する選手がいるのかだった。ふたを開けてみると、ゲームの節々で生きの良いプレーを見せる西南学院の選手に、目が留まった。中でも印象に残ったのが、RBの古庄仁晟(こしょう・じんせい、1年、別府鶴見丘)だった。

張りのある立派な体格に、物おじしない走り。上級生でチームの中心選手だと思ってメンバー表を見ると、1年生とある。書かれた出身校にアメフト部はないので、大学から競技を始めた選手だ。身にまとった抜群の存在感から、間違いなく今後の西南学院を背負う選手になるだろうと感じた。

関学守備のタックルを引きずりながら前へ進む。「九州の怪物RB」へと成長するか

西南学院はこの試合で9点を取ったが、その内容は守備が相手のエンドゾーン内でタックルを決めるセーフティによる2点と、キックオフリターン・タッチダウン(TD)で取った7点によるもの。攻撃が攻め込んでTDを奪うことはできなかった。しかし古庄は、チーム最多の11回、ボールをキャリー。ロスを含めた総獲得距離は26ydに抑えられたが、タックル一発では倒されない力強い走りで、数字以上に躍動した。

強いからだと走りを生かせるRBを志望

2歳から小学3年まではサッカーをし、それから高校卒業までは野球少年だった。西南学院に来て、グリーンドルフィンズの熱烈な新歓を受けて、アメフトを始めた。野球部時代に鍛えた強い体や、得意としている走りが生かせそうだからという理由でRBを志望し、すぐに頭角を現した。熱心にトレーニングにも励み、入学時に82kgだった体重は90kgに。ベンチプレスは120kgを支え、40yd走は新入生の中で最速の4.6秒代の記録を出した(手動計測)。1年生の今、東西を見渡しても屈指のパワー派RBとして、すでに自信を持てるレベルにある。RBとして得意なプレーを聞くと、「中を走るのが好きです」と控えめな言葉が返ってきた。

競技を始めて、半年と少しながらに経験した大舞台。「今まで当たってきたチームと比べると、すべてが違いました。力の差を感じました。威圧感とかそういうのは、試合前にイメージしていたよりはなかったんですが、スピードとかタックルのうまさはやっぱ全然違うな」と学生界の王者・関学の洗礼を浴びた。

アメフトをはじめて半年あまり、走りからは1年生とは思えない風格が漂う

「今、自分がやれる力は、全部出しきれました。最初の方は相手もこっちをわかってないんで、プレーが出るのは当たり前だと思うんです。でも、アジャストされたときにどうするのかって部分で、自分の考えが浅くて、もっと改善しないとなと思いました」。学生王者にも気後れせず渡り合えたことに満足しない、ひたむきさと気持ちの強さがある。

立派な体格に、器用さも併せ持つ

1年生ながら、先輩RBの脇田大(3年、清風)が春の試合でけがしていたこともあり、脇田が復帰する11月までは主力としてラン攻撃を支えてきた。この試合では、関学に向けて用意した、QBの位置に入る「ワイルドキャット」からの走りも見せた。立派な体に器用さを併せ持っているのも古庄の強みだ。

関学戦に向けて用意した「ワイルドキャット」で脇田にボールを渡す。デカい、強い、速いに加え、器用さも売りだ

オフェンスコーディネーターを務める小林亮コーチによると、古庄はチーム1、2を争うトレーニングの虫で、提示したことに対し自分なりにプラスアルファの成果を上乗せできるという。「持ってる素質は天才。その上でしっかり努力ができる選手」というのが、小林コーチから見た古庄の評価だ。

「1年生ながら体もハートも強く、しっかり活躍してくれた。今はチームの核としてエース扱いしています。九州決勝の福岡大戦の最後のプレーが、4thダウン2ydのシチュエーションだったんですが、迷わず古庄にボールを持たせました。結果は失敗だったんですが、それくらい信頼しています」。小林コーチは、これからも人をワクワクさせられる選手を目指して努力を積み重ねてほしいと期待を込める。

アサイメント理解が課題と話すが、中を走るセンスはピカイチ。小林コーチの評価も高い

もっと1対1で勝てるように

背番号は42。似た体格、プレースタイルの選手が思い浮かぶ。聞くと「42番ってのは、先輩が『お前は42やろ!』とすすめてくれたんです。小林コーチからは、立川選手(玄明、立命大卒、現・パナソニック)みたいになれって言われています」と、うれしそうに話す。毎日のように立川選手のプレー動画を見てイメージし、ニーアップを意識して練習を積んできた。練習の成果は着実に実を結んでいる。

パナソニックインパルスの立川選手は42番の憧れ。タックルを跳ね除ける力強い走りをする

今の目標を聞いた。「まず身近な存在として脇田さんというお手本がいるので、身近な目標として目指しています。今日関学とやって、パワーだけでは勝てないっていうことがわかりました。もっとキレやスピードを磨きたい。次のシーズンまでにはアサイメント理解も突き詰めて、当たり勝てるようもっと体重も増やします」。あこがれの立川選手の体重は97kg。あともう一歩だ。

「アメフトをはじめてから周りの先輩方にずっと助けられてきました。今日も1対1でやられて、そのことを実感しました。もっともっと、自分が強くならないといけない」

「身近な目標」と話す脇田は、チーム唯一の高校アメフト経験者だ

向こう3年間で怪物に育つ可能性を持った、ストイックなセリフを口にする九州男児。古庄の成長曲線に注目したい。

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