陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

2年ぶり箱根駅伝出場の城西大 山候補2人とチーム初の留学生を擁しシード権獲得へ

城西大の主力を担う(左から)山本、キムタイ、斎藤(写真提供・城西大学男子駅伝部)

箱根駅伝予選会を3位で通過し、2年ぶりに箱根路に戻ってきた城西大学。今年はチーム始まって以来の留学生を迎えるなど、新しい展開にも注目が集まっている。3週間後と迫った本戦を前に、櫛部静二監督と主力の山本唯翔(3年、開志国際)、斎藤将也(1年、敦賀気比)、ヴィクター・キムタイ(1年、マウ)がオンラインでの取材に応じた。

小さな積み重ねで確実にチーム力向上

城西大は前々回大会で16位となり、昨年の予選会では15位で本戦出場を逃した。それから1年。櫛部監督は「予選会を通過するまでは不安と、これまでちゃんとやってきたという気持ちが入り混じっていましたが、通過することによって一気に学生の力がプラスの方に働いた印象があります」と率直に口にする。

着実にチームの力がついてきていると話す櫛部監督(写真提供・城西大学男子駅伝部)

昨年予選落ちしてから日々の練習は大きく変えていないが、1日1日を大切にという思いでやってきたという櫛部監督。暑さや湿度、悪天候などが苦手な選手が多かったため、条件が悪い中でも通常の練習を行うようにして苦手意識を払拭するようにしてきた。さらに5000m、10000m、ハーフマラソンなどのタイムを集計し、他大学と比較。「チームとしてタイムを上げよう」と話し、毎月記録を確認しながらやってきた。

また、距離を踏むことの大切さ、けがを予防するための心構え、けがをした後の対処法などについても慎重に指導。「そういう小さいことしかやっていませんが」と櫛部監督は言うが、その積み重ねが着実にチーム力の向上につながっていった。

チーム初の留学生・キムタイが刺激に

これまで、城西大では村山紘太(現・GMOインターネットグループ)、菊池駿弥(現・中国電力)、砂岡拓磨(現・コニカミノルタ)など、実力の抜きん出た選手が中心となっていることが多かった。昨年度砂岡が卒業し、「大エース」不在となったが、4月にチーム初となる留学生のキムタイがケニアからやってきた。「学生たちも驚いていましたが、想像以上に彼の面倒をみたりと、すぐにチームになじんだ感じはありました。チームとしても力をもらっている選手ですね」と櫛部監督。性格は非常に実直・真面目で、コーチが立てたトレーニングは絶対のものとして取り組んでいるという。

10000m記録挑戦競技会、最終組トップだったキムタイ(撮影・藤井みさ)

キムタイ自身はケニアにいた時から5000mを走っていたが、当時はスタミナへの課題を感じていた。日本に来てからトレーニングを積むことで、順調に成長。箱根駅伝予選会では、初ハーフマラソンながら総合6位の1時間2分21秒で走り切った。その後も11月13日の日体大記録会で13分31秒18、20日の10000m記録挑戦競技会で28分35秒74をマーク。キムタイも「日本の環境にも慣れてきたので、しっかり走れると思う」と自信を見せる。

城西大学への入学が決まってから、以前の大会の映像などを見て箱根駅伝の大会の大きさや人気を理解してきたというキムタイ。「楽しみにしていました。あと1カ月ないですが、準備ができていると信じています」。走りたい区間を問われると、平地でスピードの出る3区をあげた。

山本「5区で区間賞をとりたい」

現状、チームを引っ張る存在となっているのが山本だ。櫛部監督も「普段の練習の時から引っ張っていて、非常に助かっています。責任感を持ってやってくれています」と信頼を寄せる。山本はテレビで5区を見て箱根駅伝にあこがれ、箱根駅伝を走りたいと城西大に入学した。1年から5区を担当し、区間6位。今回も5区を走りたい、区間賞を取りたいと意気込みを語る。

5区にあこがれ、5区での活躍を誓う山本(写真提供・城西大学男子駅伝部)

昨年の予選会で本戦出場を逃してから、悔しい思いは二度としたくないという気持ちで取り組んできた。圧倒的なスピードはないが、持続して押していけること、中だるみをしない走りが強みだと話す。1年の時の箱根駅伝では、とにかく順位を一つでも上げようと前を追った結果の好走だったが、それでは区間賞には届かないと考え、単独走になっても走り切れる力をつけようと強化してきた。

普段の練習のジョグでも、何のためにやるのかと目的意識を持って取り組み、ペースに強弱をつけるなど工夫。ポイント練習でも速いペースに余裕を持って取り組めるようになり、自らの成長を感じると話す。11月12日の日体大記録会10000mでは28分25秒21のタイムをマークするなど、準備は上々だ。「箱根駅伝は走りをアピールできる場だと思うので、自分の中では特別な大会です」と思い入れを語る。

負けず嫌いの強力ルーキー・斎藤が台頭

5区は山本で決まり、と思われていたが、11月19日の激坂王決定戦上りの部では、山本を抑えて斎藤が優勝した。13.5kmの上りを51分50秒で走り切り、2位の山本に59秒の差をつけた。櫛部監督はこの結果に「5区が弱いチームだったので、非常に頼もしく思います。(山本と斎藤の)どちらでいくかは決めかねています。最後まで慎重に考えたいと思いますが、いずれにしても楽しみです」と嬉(うれ)しい悩みを口にする。

斎藤は入学してから、7月のホクレンディスタンスチャレンジ網走大会で5000m13分53秒14、11月12日の日体大記録会で28分37秒90をマーク。箱根駅伝予選会では初ハーフマラソンながら、キムタイに次ぐチーム2位、総合27位の1時間3分18秒で走り切った。

ルーキーながらチームの中心選手になりつつある斎藤(写真提供・城西大学男子駅伝部)

斎藤自身が希望しているのは1区か2区。ハイスピードで入って粘ることを強みにしており、1区ではその強みが存分に生かせる。しかしここにきて自分の実力が上がってきている実感があるため、「他大学のエースと走ってみたい」という気持ちもあり、2区も希望していると話す。激坂王の結果を受けて5区に挑みたいですか? と問われると「こだわりはないですが、どの区間を任されても何区でも行ける準備をしています。もし5区を走ることになったら1時間10分台は狙っていきたいです」と強気な発言だ。実際に、山本とともに5区の準備もしていると明かした。

切磋琢磨し、さらなるレベルアップを

大学卒業後も競技を続け、日本トップレベルで活躍したいと考えている斎藤にとって、箱根駅伝は「通過点」だという。高い志を持って競技に取り組むルーキーの存在は、山本にとっても大きな刺激になっている。「とても頼もしい存在だと思うし、負けてられないなと思います。夏のホクレンでは1試合目は勝ったけど2試合目は負けて、自分の中でも負けられない存在です。そう言う関係をチーム内で築けるのはとてもいいと思います。もっと切磋琢磨して、レベルアップしていきたいです」と山本が言えば、斎藤は「インターバルも全部引っ張ってもらっていて、走りも人間性も尊敬できる選手です」と山本へのリスペクトを表現。しかし「ホクレン2試合、日体大、激坂王と一緒に4回走って2勝2敗なので、箱根駅伝では自分の方がいい区間順位で勝って終わりたいです」と負けず嫌いなところを隠そうとしない。

今大会の城西大の目標は、シード権獲得。櫛部監督は4区が終わった時点で最低でも12位、5区での巻き返しを含めて往路8位ぐらいのところで折り返したい、と話す。復路にも候補に考えている選手が7人ほどおり、まだ誰にするか決めかねている区間も多々あると話す。「以前はこの選手がここを走る、ともう決まっていたようなものでしたが、少しは層が厚くなってきたのかなと思います」。確実にシード権を取り、次回の100回大会で優勝争いができるチームになりたいとも話した櫛部監督。山区間を誰が走るのかも含め、箱根路での戦いぶりに注目だ。

in Additionあわせて読みたい