中央大・吉居大和「前回以上の走り」に自信 箱根駅伝目標は「往路優勝」「総合3位」
前回の箱根駅伝で6位に入り、10年ぶりのシード権を獲得した中央大学。藤原正和監督は今大会「往路優勝」と「総合3位以内」を目標に掲げる。12月19日の記者会見では「往路で攻めた区間オーダーをする」と宣言。今季の出雲駅伝と全日本大学駅伝は本調子でない中で出走したエース格の吉居大和(3年、仙台育英)は、「前回以上の走りをしたい。できる自信はあります」と意気込みを語った。
ゲームチェンジャーとなる選手を多く
前回大会の1区で1時間00分40秒の区間新記録を打ち立てた吉居大和に、どうしても注目が集まるチーム。ただ今シーズンは、彼だけに頼らないチームへと仕上がってきた。本人が言う。「昨年までは1人で練習することが何度かあって、難しい練習もたくさんあった。けど今年に関しては、中野翔太(3年、世羅)が本来の力を出せるようになってきて、練習も一緒にできるようになった。弟(吉居駿恭、1年、仙台育英)や溜池(一太、1年、洛南)も刺激をもらえる存在になりました。みんなで引っ張り合いながら、質の高い練習ができて、試合につながっていると思います」
吉居大和と同じぐらいの力を持った選手が、複数人必要――。これは藤原監督が今季「総合3位以内」をめざす上での戦略とも合致していた。「前回大会を終えた後、今回『3位を取りたい』と思ったとき、青山学院大学さんをイメージしました。そのとき感じたのは『往路で乗せてしまうと、そのまま流れてしまう』。となると、まずは往路で勝負しないといけない。なら、吉居大和ぐらいの選手が5人は必要。ゲームチェンジャーとなる選手を多く持った方が、今の駅伝では勝てるというところを意識しています」
そこで、吉居大和と一緒に練習させる選手を意識的に加えた。藤原監督によれば中野、吉居駿恭、溜池のほか、湯浅仁(3年、宮崎日大)、阿部陽樹(2年、西京)、夏以降は山平怜生(2年、仙台育英)も参加。少々の入れ替えを経て、この12月になって「ゲームチェンジャーになり得るまで、高いレベルで力を付けてきた」と確かな手応えを感じている。
吉居大和、駅伝シーズン中も走り込みで補完
肝心の吉居大和。出雲に関しては「状態は7割ぐらいだった」。全日本は帯状疱疹(ほうしん)の症状が出て、レースの2日前まで休養するほど体調が万全ではない中、6区の区間記録を更新した。必ずしも本調子と言えない状況で実績を残してきた吉居大和が、箱根については「自信がある」と言うのだから、どんな走りを見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。
今シーズンは、東京オリンピック出場を狙った昨シーズンと同様、世界の舞台を見据えていた。アメリカ・オレゴン州ユージンで開催された世界陸上だ。しかし、ぎっくり腰のような症状が出たり、右足を痛めたりした影響でかなわなかった。「長期のけがは久しぶりで、足の痛みが取れないことはすごく不安でした」と本人は振り返る。「世界陸上は早めに諦めて、駅伝でしっかりと結果を残すことに切り替えました」。故障の影響もあり、昨年に比べて夏合宿での走行距離は思った以上に踏めなかった。ただ、10月の出雲、11月の全日本と駅伝シーズンが本格化する中でも、練習では走り込んできた。藤原監督は言う。「9月以降、試合の合間で走り込みの補完をしてきて、その効果が12月以降、出てきているのかなと思います」
中野翔太「往路で他大のエースと勝負」
箱根での区間配置は、チームが「往路優勝」を掲げているだけに、1月2日に主力を並べる形となりそうだ。
往路6位だった前回大会。チームは「1区の吉居大和で貯金を作って、2区は耐える区間。3、4区でアップして5区の山登りを阿部に託す」(藤原監督)というレースプランだった。ただ今大会は「1区から5区間通して、攻めのオーダーを組める。どう組むかは、まだ悩んでいる段階ですが、形にはなってきていると思います」。今シーズンから吉居大和と一緒に練習するようになったメンバーが往路を固める布陣が予想される。
中でも全日本を走ることができなかったもう1人のエース格・中野の走りが、目標とする「往路優勝」へ一つのカギになるだろう。10000mの自己記録は28分00秒86で、吉居大和をも上回る。「トラックでは吉居のタイムを抜かすことはできましたけど、駅伝ではまったく結果を残せていない」と中野。学生駅伝デビューとなった昨シーズンは、全日本大学駅伝が3区区間9位、箱根駅伝は4区区間5位だった。「駅伝でも『エース』と言えるようにしたい。往路でしっかりと他大のエースと勝負していくことで、チームの目標も達成できる」
今シーズンのチームスローガンは、「時代を紡ぐ軌跡を残せ」。2024年の100回大会で総合優勝をめざすために、いまの4年生たちで考えた。主将の若林陽大(4年、倉敷)によると、「新しい中大を作る上で、まず自分たちは土台を作りたい」という思いを込めた。藤原監督は4年生について「年間を通して成績も安定しているし、土台という意味ではスローガン通りのチームになってきている。コツコツと積み上げてきてくれた『たたき上げ』の世代」と評価する。
2016年には箱根駅伝予選会を突破できず、一度はどん底を見た伝統校。再び時代を築くためのステップを確実に踏んでいる。