陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

「史上最強」チームで箱根駅伝に臨む創価大 総合優勝をめざし100%引き出す走りを

笑顔で写真におさまる16人のエントリーメンバー(写真提供・創価大学)

創価大学駅伝部は今シーズン、創部以来初めて学生3大駅伝すべてに出場。締めくくりとなる箱根駅伝では、総合優勝を目標としている。20日、オンラインで会見が行われ、榎木和貴監督と選手たちは「史上最強のチームになった」と口をそろえた。

100%の力を引き出し「ジャイアントキリング」を

創価大は新シーズンのスタート当初、「出雲駅伝、全日本大学駅伝では3位以内、箱根駅伝では総合優勝」を目標に掲げた。駅伝だけでなくトラックでも戦える力をつけるために強化し、4月の学生個人選手権男子10000mでは葛西潤(4年、関西創価)と嶋津雄大(4年、若葉総合)がワンツーフィニッシュ。ワールドユニバーシティゲームズ(中国・成都で7月開催予定だったものの中止)の代表に内定するなど、早速強化策が実った。

6月には寮が新築され、10月にはトラックの改修工事も完了。「日本一とも言えるような素晴らしい環境の中でチーム強化を行えて、チームにとってもいい刺激になったと思います」と榎木監督は言う。秋の駅伝シーズンは出雲駅伝で6位、選考会から初出場した全日本大学駅伝で5位となりシード権を獲得。3位の目標には届かずとも、しっかりと他大学と戦えるという感触を得てきた。

積み上げてきた4年生の力に、勢いのある下級生が融合している(写真提供・創価大学)

榎木監督は就任4年目。いまの4年生が入学した時からともにチームをつくってきた。入学当初は決して世代トップレベルではなかったが、4年間努力を積み重ねて、しっかりとまとまりのあるチームになったと選手たちの成長をたたえる。前々回大会では準優勝と躍進したが、この時はあくまでも3位を目標にしながらの流れ、勢いにのっての結果。「この時は狙っていった準優勝ではなかったのですが、今回は新体制がスタートしてから総合優勝を目標にチームづくりを行ってきた結果、チームとしても過去最高の戦力が整っています」と手応えをにじませる。

「下馬評では注目度が高いチームではないですが、走る10人が100%の力を発揮することで、サッカーW杯の日本代表のような『ジャイアントキリング』を達成できるのではないかと思っています。そのために準備を丁寧に行いたいと思っています」

主将・緒方貴典が作り上げた風通しのいいチーム

1年間チームを引っ張ってきた主将の緒方貴典(4年、熊本工業)は、歴代の3人の主将を見てきて、彼らがいつも明るくて、いつも話しかけやすいオーラがあり、その明るさがチームに影響して風通しのいいチームを作っていっているという印象を受けていた。自分が主将になってからも、「いつも明るくいること」を意識して1年間過ごしてきた。

緒方は2年生の時、箱根駅伝の16人のメンバーには選ばれたが、最終的に出走はかなわなかった。その時に榎木監督から「緒方には強さを求めたい」と声をかけられ、その言葉を胸にずっと努力を続けてきた。「1人でしっかり走る、攻めることを課題としてやってきました」。前回も16人のメンバーには選ばれながらも、出走できずだった。

榎木監督も緒方がチームをまとめてくれたと評価する(写真提供・創価大学)

最後の箱根駅伝で希望するのは9区、10区の復路の最長区間だ。「区間賞を取る気持ちで果敢に攻めた走りをして、チームの総合優勝に貢献したいです」。4年生は16人中7人がエントリー。「この4年間、楽しいこともあれば苦しいこともあったんですが、ずっと生活や寝食をともにしてきた仲間です。4年生の思いを背負って、チーム全員で頑張りたいと思います」と活躍を誓った。

「5年生」嶋津雄大、自分らしい心の走りを貫く

休学を経て、実質5年生として最後の箱根駅伝を迎える嶋津。自らがチームとともに成長してきたという実感がある。もともと入学時に「この大学を箱根駅伝のシード常連校にしたい」という気持ちがあったといい、「強豪校と言われるまでに成長しているのは、すごくうれしく思います」と話す。嶋津から見ても今のチームは速さ、強さともに歴代最強のメンバーがそろっている実感があるという。

嶋津がその名を全国に知られるきっかけになったのは、3大会前、10区を走って区間新記録を樹立した時だ。榎木監督にも「箱根駅伝を走ると人生が変わる」と言われていたことがあるが、嶋津の場合は自分の走りがきっかけで、自らが患う目の病気「網膜色素変性症」について発信するきっかけにもなった。「1回走ったことで考え方や生活も大きく変わりました」と箱根駅伝の影響力の大きさについて話す。

今年の出雲駅伝ではアンカーを務めた(撮影・藤井みさ)

今年1年、嶋津は「残った意味を確かめる」をテーマにずっと過ごしてきた。シーズン当初はこのチームにいていいのだろうか? 他の選手にどう思われるだろうか? といった不安もあったと明かす。最後の箱根駅伝では、10区で塗り替えられてしまった自分の記録をもう一度上書きしたいという気持ちも、過去2回走った4区で限界に挑戦したいという気持ちもある。「ですが、どの区間でも『心で走る』、自分らしい走りは必ずできると思うので。全力で自分らしく走って、1年残った意味を確かめたいです」。そしてチームの全員が自信を持って走ることができれば、総合優勝の目標をかなえられると思う、と力強く話した。

エース葛西潤、最後の箱根は恩返しの走りを

チームのエースとして結果を残し続けてきた葛西は、この1年を振り返って「本当にすごい充実していた1年だった」と振り返る。前述の通り、4月には個人選手権10000mで優勝。出雲駅伝では2区を走り区間5位、全日本大学駅伝では2区を走り、駒澤大のルーキー・佐藤圭汰(1年、洛南)とのデッドヒートを制して区間新記録で区間賞を獲得した。

4年生となり、チームを引っ張っていかなければという強い思いが葛西を動かしている。走りでチームを引っ張り、それについてきてくれる後輩たちもいる。「横のつながりだけでなく、縦のつながりもあって、すごく風通しのいいチームができています。コミュニケーションも取りやすく、練習でも切磋琢磨(せっさたくま)し合える環境になって、雰囲気、実力ともにすごくいいチームになっていると思います」と話す。

4年生の意地を見せ全日本大学駅伝で区間賞を獲得した葛西(撮影・藤井みさ)

前回の箱根駅伝では1区区間15位。最後の箱根駅伝で走りたい区間は? と問われると、「監督の使いたい区間で使っていただければ、そこで力を発揮するだけだと思うので、監督の采配を楽しみにしながら最大限準備していきたいと思います」と答える。就任4年目となる榎木監督とは同じスタートラインからともにチームを作ってきたという気持ちが大きい。「同じ景色を見続けて4年間戦ってきたこともあって、強いつながりを築いてこられたんじゃないかなと思います。これだけ信頼できる監督に出会えて幸せですし、お世話になった分しっかりと恩返しをしたいと思っています」

チームとしてのまとまり、選手と監督の強い絆。「過去最高」の手応えをもって挑む箱根路で、創価大は2大会前の時のように台風の目として旋風を巻き起こせるか。

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