東洋大学が創部10年目で日本一 ボール保持時間を長くし「攻撃は最大の防御」を体現
創部10年目となる節目のシーズンに、日本一になった。
東洋大学女子サッカー部だ。この冬にあった全日本大学女子選手権。ともに初めての決勝進出となった山梨学院大学との一戦を1-0で制し、初のタイトルを手にした。準々決勝では、最多18度の優勝を誇る日本体育大学をPK戦の末に破っていた。2022年度のシーズンは、関東大学女子リーグ1部も制覇した。今、勢いのあるチームだ。
高校生の選択肢に入れてもらえるようになってきた
「守るより、攻める方が楽しいので」
そう話す石津遼太郎監督が作り上げたスタイルが、チームの強みになっている。安易にロングボールは使わず、GKからパスをつないで攻める。「ボールを持って主導権を握る。保持しながらゲームを進めていく。そんな選手たちに少しずつなっていった」
石津監督は、東洋大が関東大学女子リーグの1部に初昇格した2016年、コーチに就任。20年から監督を務めている。33歳の若手指導者は、J2大宮アルディージャの育成組織出身で、東洋大の男子サッカー部のOBでもある。
「1部リーグに定着して、年々いい選手が入ってきてくれるようになった。高校生の選択肢に入れてもらえるようになったのかな」
確かに選手たちの出身チームを見れば納得だ。宮城県の常盤木学園高校や東京都の十文字高校、JFAアカデミー福島、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18……。強豪チームから集まってきている。
全日本大学女子選手権で、大会MVPに選ばれたFW北川愛莉(えり、4年)も常盤木学園で全国高校総体を優勝した実績を持つ。そんなストライカーにとっても、東洋大のサッカーは新鮮だった。「常盤木は、蹴って前から勢いよくいくみたいな感じだった。最初はギャップについていけない部分もあったけど、このサッカーの方が楽しいなって、今は思います」
ペナルティーエリアでは2タッチ以内のシュートチャンスを
練習で取り組むのも、攻撃ばかりだという。特に意識しているのは、ゴール前。石津監督は「ペナルティーエリアでは2タッチ以内のシュートチャンスを作ろうと言っている」。山梨学院大から奪った決勝点は、まさにそれ。相手GKが防いだこぼれ球を拾って素早くつないだパスを、北川が1タッチで決めたゴールだった。
攻撃は最大の防御。そんな格言を実践しているとも言える。全日本大学女子選手権は計4試合で9得点し、失点はゼロだった。決勝でも、GKからしっかりパスをつないで攻め、シュート数は山梨学院大の2本に対し、10本放った。精度に欠けていたという見方もできるが、主導権を握っていたことを物語る数字でもある。石津監督は攻守でいいデータを残したことについて、「僕らがボールを持っている時間が長いというのが要因」。ボールを失わなければ、守備に回る時間は少なくなるのは当然だ。
その決勝前、石津監督は選手たちにこう呼びかけていた。「普段通りのプレーを出そう。楽しんでやろう」。その言葉に背中を押された選手たちは見事に東洋大の新しい歴史を作った。
今後は、追われる立場になる。石津監督はどこ吹く風だ。「(インカレで)優勝したこともないから、そういう立場になった経験もないんで。別にあんまり、気にならない」
新シーズンもまた、楽しいサッカーを追求する。