ラグビー

報徳学園高・石橋チューカ 速さと運動量が武器の「リーチ2世」、春から京都産業大へ

高校日本代表に選ばれ、海外遠征に向かった石橋(すべて撮影・斉藤健仁)

3月15日、ラグビー高校日本代表が4年ぶりの海外遠征となるアイルランドに向けて出発した。42人の候補選手から26人の狭き門に選ばれたのが、報徳学園高校(兵庫)3年のLO/NO8石橋チューカだ。この春から京都産業大学に入学する。

初めて着た「桜」が入った練習着

今季の高校ラグビーシーンは春の選抜で同校初の全国制覇、夏の7人制も優勝、冬の花園こと「全国高校ラグビー大会」は準優勝。運動量とセットプレーで気を吐き、中軸の一人として輝きを放った。

達成すれば史上4校目だった高校「三冠」をかけた1月7日の花園決勝、NO8で先発した報徳学園の石橋は前半23分、果敢なチャージからトライに寄与するなど意地を見せた。だが試合は東福岡高校(福岡)に10-41で敗れた。石橋は「今も思うと勝ちたかったですが、最高の仲間と最後までプレーできて悔いはないです」とキッパリ話した。

全国大会後、石橋は高校でチームメートのSO伊藤利江人、WTB/FB竹之下仁吾(ともに明治大に進学)と初めて日本代表のシンボル「桜」のマークがついた練習着に袖を通した。「素直にうれしかったです!母親や高校時代、お世話になった人たちにプレーで恩返しがしたい」

「花園」は準優勝だったが「悔いはないです」とキッパリ

相撲部に入り「四股で鍛えられた」

石橋はアメリカ・ニューヨークでナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれた。「チューカ」という名前はナイジェリア語で「おおらかに」という意味だ。小さい頃から母とともに兵庫県姫路市に住んでいた。

9歳の頃、幼なじみで京都成章のCTB前川大輔(4月から関西学院大学に進学)に誘われて姫路ラグビースクールで競技を始めた。中学2年時に前川が兵庫県ラグビースクールに移ると、石橋は前川の両親に送迎してもらっていたこともあり、石橋もスクールを移した。

中学時代はラグビーと同時に「ラグビーのために」と相撲部に入部。試合ではあまり勝てなかったが「四股で足腰が鍛えられました」。高校は小さい頃から泉光太郎ヘッドコーチに声を掛けられていたこともあり、地元の報徳学園に進学した。

強靱(きょうじん)な足腰は相撲で鍛えられた

当初は高校の寮に入る予定だったが、最終的に元日本代表PRでヤマハ発動機でも活躍したOBの高木重保さんの実家に下宿することになった。

体重は70kgを下回るほどで細く、入学当初はたくさん食べられなかった。その後は朝に白飯を400g、昼と夜に700g食べるようになり、さらに友人らとともにウェートトレーニングを重ねた。体重は90kgまで増えて、ベンチプレスも60kgから110kgに達し「自信になった」と振り返る。

ラグビーが上達するにつれて「留年すると大変なので」と勉強にも集中できるようになった。中学時代は5教科で100点を取れなかったというが、高校では成績が真ん中より上位になった。

高校2年時や高校代表ではLO、高校3年時はNO8でプレーした。身長188cm。日本代表で活躍するFLリーチマイケル(ブレイブルーパス東京)を彷彿(ほうふつ)させるプレースタイルで「リーチ2世」とも呼ばれ、大学からはFLに専念する意向だ。

「スピードと運動量が武器なので、そこだけは負けないように 誰よりも走りこんで、強みで負けないようにしたい。よく『リーチ2世』と言っていただきますが、同じポジションになるので、どんなプレーをしているか見て学んで、それ以上のプレーをして日本代表になりたい」

大学ではリーチマイケルと同じFLに専念

初の海外遠征「成長につながるように」

高校生最後の試合として、3月22日と26日にアイルランドU19代表と対戦する。「(物心がついてから)初めての海外なので、いろんな文化を知りたいと思いますし、悔いのないように全力で戦いたい。相手はむちゃくちゃ大きいと思うのでしっかりと自分の成長につながるようないい経験をしたい。日本代表としての覚悟を持って臨みたい」と意気込んでいる。

改めて高校3年間を振り返って石橋は「まず体つきが変わったことと、メンタル面で入学当初はすぐ落ち込んでいたが、仲間が声をかけてくれたおかげで、今では落ち込まずに前に進み続けるメンタル力がついた」と胸を張った。

4月からは高校日本代表のチームメートで、東福岡のSH高木城治、大分東明のCTBエロニ・ナブラギとともに「最初に声をかけてくれた」という京都産業大に進む。ハードな練習で知られ、2年連続で大学選手権ベスト4の強豪だ。親元からあまり離れたくなかったことも関西の大学を選んだ理由の一つとなった。

「三木皓正キャプテン(京都成章出身)が『覚悟がない選手は帰れ』と言っていたみたいで、練習は厳しくなると思いますが、日本一ハードワークする環境で成長して日本一になりたい」

京都産業大から「日本一」をめざす

リーチからのアドバイスを胸に

自身と同じくナイジェリアにルーツを持つイングランド代表のFL/LOマロ・イトジェや日本代表のNO8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)に憧れている。石橋は「大学でもしっかり活躍してプレーで恩返しして、将来は日本代表になりたい」。その先は日本だけでなく欧州でのプレーも視野に入れており「ラグビーをしている子どもたちに感動や夢を与える選手になりたい」と真っすぐに前を向いた。

アイルランドから戻ってきて、3月31日には京都産業大ラグビー部の寮に入寮する。花園期間中は、リーチから「線が細いので体つきや背中(の筋肉)を大きくしてほしい」とアドバイスをもらった。石橋は「体を大きくしたら活躍できる」と自信を持ち、体重を90kg代から110kgに増やすことをめざし、体をしっかり作ってから大学ラグビーにチャレンジする。

in Additionあわせて読みたい