ボート

早稲田大・青木洋樹 日本代表トレーニング採り入れ、チームも成長「前を進み続ける」

男子チームの主将を務める青木(中央、すべて撮影・井上翔太)

第92回早慶レガッタ

4月16日@東京・隅田川
第二エイト 慶應義塾大学(2年連続)
対校エイト 慶應義塾大学(2年ぶり)

明治時代から続く伝統の対抗戦「第92回早慶レガッタ」が4月16日、東京都の隅田川で行われた。新型コロナウイルスの影響を受ける前の2019年以来となる、有観客での開催。メインの「対校エイト」(3750m)では、慶應義塾大学が2年ぶりとなる勝利を収め、早稲田大学の主将で来年のパリオリンピックをめざす青木洋樹(4年、成立学園)はレース後「今の自分たちに足りないものを見つめ直して、もう1回コツコツと積み上げていくしかない」と振り返った。

隅田川特有の「波」に苦戦

レースは、新大橋の上流から桜橋の上流まで北上する形で行われた。開始直後に大きく右へカーブするため、西(外)側を進む早稲田大は慶應義塾大よりも半艇身ほど前からスタートした。「内側が有利になる両国のカーブまでには絶対に出る、というレースプランでした。しかし慶應さんの方が力は上で、スタートから出られて、差を詰められずに、自分たちでもリズムを作れず、そのままズルズルと行ってしまいました」

普段練習を行っている戸田公園とは異なり、波が高くなる隅田川特有のコンディションにも対応しきれなかった。レース中盤にオールが取られてフィニッシュ時に水面から抜けない「腹切り」が起き、一時的に大きくペースを落とした。船尾にいるコックスの目の前「ストローク」の位置でこいでいた青木は「コンスタントで差を詰めていくところで起きてしまって……。おそらく慶應さんはノーミスで行ったと思うんですけど、こっちはミスが多かったです。荒れた水面での船の進め方というところが甘かった。経験の浅さと、波に対する練習不足です」と悔やんだ。

最後まで持てる力を出し切った

一冬を越え、成長を実感

シーズンの初めとなる早慶レガッタは「一番のライバルである慶應さんと戦える、力試し」と位置づけて臨んだ。冬の期間にフィジカルを鍛え上げ、クルーとしてのまとまりも高めてきたつもりだった。「自信をつけるだけの練習はしてきました。ただ、それが報われず、結果につなげることができませんでした」

冬に取り組んできた練習は、これまでとは変えた。UT(Utilization Training)と呼ばれる低いレート(1分間あたりのこぐ回数)の練習を増やし、長い距離をこいで有酸素能力を高めることを重視した。一方でウェートトレーニングにも励み、エルゴメーターのスコアも向上した。昨年、青木はU23日本代表に選出され、「日本代表でやっているメニューを採り入れました。最初はすごくきついトレーニングだったと思うんですけど、段々選手も適応してきました」。周囲も熱意を持って、自分についてきてくれた。

今回結成したクルーは、自身とコックスの片倉潤樹(4年、早稲田佐賀)だけが最上級生。若いチームなだけに、伸びしろは十分だ。「今までやって来たことは、間違いないと思います。それをコツコツと積み上げていくしかない。今回みたいに報われないというレースは必ずあります。負けた敗因をしっかり分析して、そこでへこたれずに前を向いて進み続けるしかないです」

フィジカルを鍛え上げ、自信を持って早慶レガッタに臨んだ

自分と向き合い、試行錯誤することに「楽しさ」

青木は中学2年のとき、東京都の「トップアスリート発掘・育成事業」に参加した。いろいろな競技に触れる中で、手足が長いことがボートには有利と知り、中学3年ぐらいからボートを始めた。中学までは野球もやっていたが、トレーニングをした分、自身に結果として返ってくる個人競技の魅力を知った。

「自分がこいだ分、船が進むことを感じられるのが楽しいです。とにかくフィジカルが大事なので、自分がどういうトレーニングをすれば伸びるのか。あるいはどういう体の使い方をすれば、力が伝わるのか。とことん自分と向き合って、色々と試行錯誤していくことにも楽しさを感じています」

確かに「ずっと動き続ける」ということに関しては、野球とはまったく違う特性が求められる。ただ野球をしていたからこそ「負けず嫌い」な性格が培われたと言う。またエイトはチームスポーツの要素も大きく、ここでも野球の経験は生きていると実感している。

チームはインカレ優勝、個人としてはパリオリンピックを見据える

チームを引っ張り、パリオリンピックも見据える

高校時代から日本オリンピック委員会(JOC)のエリートアカデミーに参加して、本格的にボートに取り組んできた青木にとって、来年に迫ったパリオリンピックは明確な個人目標だ。男子のエイトとしては、9月に行われる第50回全日本大学ローイング選手権大会(インカレ)での優勝を目標に掲げている。インカレの舞台は、慣れ親しんだ戸田ボートコースだ。

「練習の中では、荒れない水面で『エイト』という大きくて重い船を前からしっかり進めていくことに関して、すごくいいものが出てきています。5月の全日本ローイング選手権大会(東京・海の森水上競技場)やインカレでは、フラットな水面をこげると思うので、そこでまた自分たちの成長を見てもらいたいです」

成長途上のチームを引っ張り、自身は来年のパリまで見据える。青木にとって早稲田大で過ごすラストイヤーは、特別な意味を持つ1年となる。

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