ボート

連載:いけ!! 理系アスリート

特集:第88回早慶レガッタ

痛恨の早慶レガッタから、前を向く 早大ボート川田翔悟(下)

14日に開催された早慶レガッタの第二エイトで早稲田は敗れた(川田は左から3人目)

連載「いけ!! 理系アスリート」の第11弾は、早稲田大学基幹理工学部4年の川田翔悟(早大学院)です。漕艇(ボート)部に所属する川田は、4月14日に東京・隅田川で開催された早慶レガッタに「第二エイト」のクルーキャップとして出場し、4連覇をかけた大一番に敗れました。伝統の一戦を終えたいま、川田の胸にはどんな思いがあるのでしょうか。

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自分のため、仲間のために勝ちたかった

川田は3年生のときからインカレと全日本選手権でクルーキャップを任され、ともに舵手なしフォア(4人で漕ぐ種目)で6位に入った。「コックス(舵手)がいる船は、すごく動きが繊細になります。でも自分でうまくコントロールできる人は、舵手なしも強いです。自分も舵手なしの方が得意かな」と、川田は言う。

クルーキャップとして、クルー同士のコミュニケーションをいちばん大事にしてきた。クルーボートでは、お互いの信頼関係が欠かせない。「しんどいときに『一緒に乗ってるメンバーのためにも頑張らないと』って思えるかどうか。うまくいかないときは、どうしても雰囲気が悪くなります。『お前らちゃんとやってんのかよ!! 』って思ってしまうような悪いサイクルに入らないよう、気をつけてました」。練習だけでなく日常生活でも、一人ひとりと向き合ってきた。

最後の早慶レガッタでも、第二エイトのクルーキャップを任された。早大学院高時代も含めると、早慶戦は7年目だ。川田は兄の悠太郎の背中を追って早大学院高でボートを始め、兄が早大代表として最後に出場した早慶レガッタを見て、また大学でボートの道を選んだ。川田は3年生のときも第二エイトで早慶レガッタに出場し、スタートから一度も慶大を寄せ付けずに圧勝した。「お前が隅田川で漕ぎきってくれ、と言ってた兄の思いには応えられたかな」と、川田は言った。だからこそ最後の早慶戦は自分のため、ともに練習を重ねてきた仲間のために勝ちたかった。

早慶だけに与えられた特別なもの

レース当日、川田はクルーキャップとして平常心を意識した。「いつも通りの自分たちのいい漕ぎをしよう」。そう呼びかけてレースに臨んだ。早大は好スタートを切ったが、700m地点の両国橋付近で慶大に先行を許すと、次第に水をあけられた。追う展開となった早大はオールが浅く、ストロークが短くなり、最後は6艇身差、約20秒の差をつけられて敗れた。レース後、川田は「パワーの面で慶應と圧倒的に差があったのかな。大差だったのでそれだけではないんですけど、横に並ばれてから調子が狂ってしまいました。練習の時からもう少し、横に慶應を意識できてればよかったです」と、痛恨のレースを振り返った。

第二エイトでは慶應が最後まで早稲田を突き放して快勝した

川田に「早慶レガッタとは? 」と尋ねてみた。

「2位も3位もない、勝つか負けるかの勝負。高校のときから、絶対負けられないって思ってました。その分厳しい練習が多くなるけど、その分勝てたときの喜びや、負けたときの悔しさは、強く感じるかな。早慶だけに与えられた特別なものです」

勝負には敗れたが、レースに向かう過程で得た技術がある。5月23~26日には全日本選手権があり、「もう1カ月しかないので、落ち込んでる場合じゃない」と前を向く。全日本での出場種目はこれから決まるが、川田は花形であるエイトでの出場を目指し、新たなスタートを切った。

スポーツをロジカルに考える

4年生の川田には進路選択の時期も迫っている。川田の情報理工学科は6割以上が大学院に進学するが、川田は就職を考えている。大学ではプログラミングなどの技術を学んでいるが、いま志望しているのは機械メーカーだ。「プログラミングとか部品そのものとかよりも、コンシューマー向けの仕事ができたらいいなって思ってます。大学で学んだ技術は技術として今後に生かしていきたい」と話す。

早大の漕手で理系学部に所属するのは川田を含めて3人だ。練習は週11回。早朝から漕ぎ出し、夜には眠たい目をこすりながらレポートをこなす。同じ学部の友人には「よくやるよね」「やっぱ大変だよな」などとよく言われるそうだ。それでも理系アスリートならではの強みはあると、川田は感じている。

「ボートをロジカルに考えられてるんじゃないかと思いますね。がむじゃらにパワーでやればいいわけじゃない。高校のレースは大体1000mで短いので、なんとなくパワーでゴリ押しできるところはあります。でも2000mになると、テクニックがともなってないと、余計な力を使ってしまってバテてしまう。大学ではテクニックが大事なのかなって思いますね」

パワーだけではボートは進まない。そこは理系アスリートの力の見せどころだ(写真は早稲田大学漕艇部提供)

理系学部に所属し、時間の制約がある中で競技をする難しさはある。それでも「限られた時間の中でやるのが大事」と川田は言い切る。文武両道で悩んでいるボート部の選手にアドバイスをお願いしたところ、「量をこなせばなんとなくやっても上達すると思うんですけど、自分がいまどんな動きをしてボートに対してどういうことをしているんだってことを考えながら練習するだけでも、練習の質は変わります。たぶん分析して考えるというのは、理系の人は得意だと思うので、その分析思考能力をぜひ競技に生かしてほしいです」と話してくれた。川田の4years.は、まだ続く。

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