陸上・駅伝

特集:2023日本学生陸上競技個人選手権大会

駒澤大学・安原太陽が個人選手権5000m優勝 「勝つことだけ意識」ラスト勝負制す

ラストのスパート勝負を制し、笑顔でゴールする安原。後ろは2位の石原(すべて撮影・藤井みさ)

2023日本学生陸上競技個人選手権大会 男子5000m決勝

4月23日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)

1位 安原太陽(駒澤大4年)13分59秒16  
2位 石原翔太郎(東海大4年)13分59秒67
3位 伊藤大志(早稲田大3年)14分03秒41
4位 梶谷優斗(東海大3年)14分13秒72
5位 中原優人(神奈川大3年)14分24秒19

4月23日に行われた日本学生陸上競技個人選手権男子5000m決勝で、駒澤大学の安原太陽(4年、滋賀学園)が13分59秒16で優勝した。昨年の篠原倖太朗(3年、富里)の優勝に引き続き駒澤勢の強さをアピールした。

冷静にラスト勝負で勝ち切る

男子5000mにエントリーされていたのは11人だったが、棄権者が相次ぎ、出場したのは安原、東海大学の石原翔太郎(4年、倉敷)、梶谷優斗(3年、滋賀学園)、早稲田大の伊藤大志(3年、佐久長聖)、神奈川大の中原優人(3年、智辯学園奈良カレッジ)の5人のみ。スタートすると中原が先頭に立ち、安原は4番手につけた。入りの1000mは2分56秒とスローペース。1000mをすぎると伊藤が前に出て引っ張った。

次の1000mは2分48秒、2分51秒、2分53秒と刻み、残り1000mをすぎたところでペースが上がると中原が離れ4人に。残り600mのところで石原がスパートを仕掛けたが、伊藤と安原は反応して離されなかった。ラスト1周の鐘を聞くとさらにペースアップ。スパート合戦となり、石原、安原、伊藤の順に。安原がラスト200mのところで石原の前に出て、そのまま競り勝った。フィニッシュ時には両手を大きく広げ、両手で「1」のポーズを作ると「よしっ」と勝利をかみ締めるようにガッツポーズも見せた。

「ここで決めないとあとはない」という気持ちでしっかり走った

確実に照準を合わせてきた

安原は3月の学生ハーフマラソンで、7〜8月に中国・成都で開催されるワールドユニバーシティゲームズ(以下、ユニバ)の代表を本気で狙っていたが、スタートして2kmほどで大集団の中で接触してしまい、足をひねり棄権した。この時は悔しさをあらわにしていたが、幸い大事には至らずすぐに練習を再開できた。ハーフでの悔しさから切り替えてこの大会に照準を合わせ、確実にユニバの出場権を獲得するために練習を積んできたと話す。

出場者が5人となったことについては、「もっと強い選手が出る予定だったので、彼らと戦えなかったのは残念」としつつも、「人数は少なくてもラスト勝負というのはわかっていたので、そこに向けて準備してきました」。順位にこだわる勝負レースとなるため、はじめはスローペースになると予想。昨年篠原が優勝したレースの動画も見ながら対策してきた。

昨年の篠原のレースの動画も見て、ここに合わせてしっかりと対策してきたという

会場には大八木弘明総監督、藤田敦史監督をはじめチームメートも応援に来ていて、声援はしっかりと安原の耳に届いていた。石原が残り600mで仕掛けた時は「ちょっと早いな」と思っていたが落ち着いて反応し、大八木総監督、藤田監督からも「ラスト200から150あたりでしっかり仕掛けるように」と言われていた通りに上げられた。「本当に勝つことしか意識していなかったので、そこをしっかりクリアできてよかったなと思っています」

「昨年の先輩を超える」最上級生の自覚

今年、駒澤大は史上初の2年連続学生駅伝三冠を目標に掲げている。最上級生になったことで気持ちの変化はありましたか? とたずねると、「去年の4年生がかなりすごい世代で三冠を達成されました。自分たちも1年生の時から『箱根で優勝する』とずっと掲げてきた学年なので、それを達成するためには自分たちが変わらないといけない、と学年ミーティングで何度も話し合ってきました。それで少しずつ『昨年の先輩を超える学年にしていこう』という気持ちが学年全体に広がって変わってきたと思います」という。

実際に焼津みなとハーフマラソンで金子伊吹(4年、藤沢翔陵)が、かすみがうらマラソン10マイルで赤津勇進(4年、日立工業)が優勝し、このレースの前日にあった日体大記録会では唐澤拓海(4年、花咲徳栄)が10000mで27分57秒52をマークした。「4年生がチームに結果で示してくれたので、その流れがあって自分もしっかり最上級生としてアピールしないといけない部分があったので、ここでしっかり勝ててよかったです」。そして同日にNITTAIDAI Challenge Games 5000mに出場する主将の鈴木芽吹(4年、佐久長聖)にもつなげたいと話した。鈴木のトラックシーズン初戦は13分46秒12で、出場した学生の中でトップだった。

4年生としてチームを引っ張り、さらに前へ。自覚と責任を持ってラストイヤーに臨む

今年、安原の弟の海晴(滋賀学園)が入学した。「気持ち的には特に変化はないです」と言いつつも、高校時代から実績を残している弟に対して、兄としてしっかり結果で示す1年にしたいと口にする。海晴は2月の世界クロスカントリー選手権にU20男子代表として出場。今回、安原はユニバ代表に選出される可能性が高くなり、「世界大会は初めてなので。弟が先に日の丸を付けて走ったので、そこの部分も多少意識しながら、どこまで自分の力が通用するか確認したいという感じです」と話す。

もし代表に選出されれば、学生ハーフマラソンで優勝しユニバ代表を決めた篠原とともに「しっかり駒澤代表として戦ってきたい」と意気込みを語る安原。この日が誕生日だったといい、「(そこに対して)特別な思いはなかったんですけど、今日母親が見に来ていたので、いい誕生日プレゼントになったかなと思います」と笑う。勝ちきった自信と世界での経験を糧に、ラストイヤーのさらなる飛躍を期待したい。

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