法政大学・地主直央 400mで初の45秒台、冬に成長を実感できた先輩2人との練習
2023日本学生陸上競技個人選手権大会 男子400m決勝
4月22日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
1位 地主直央(法政大4年)46秒53
2位 今泉堅貴(筑波大4年)46秒80
3位 林申雅(筑波大1年)46秒97
4月22日にあった2023日本学生個人選手権大会の男子400mで、法政大学の地主直央(4年、川越東)が46秒53をマークし、初優勝を飾った。特筆すべき走りを見せたのが、前日の準決勝だった。自己ベストとなる45秒98で、自身初の45秒台をたたき出した。「46秒台前半が出そうな感覚だったんですけど、まさかの5秒台」と本人。周囲から驚きの声が上がり、地主の笑顔がはじけた。
準決勝・決勝と今泉堅貴との勝負
準決勝から同じ組には46秒22の持ちタイムを持つ今泉堅貴(4年、福岡大大濠)が入り、ともにレースを引っ張った。準決勝は100mから200mにかけてのバックストレートが追い風となり「結構うまく入れて楽にいけたので、そのまま同じ感じで行ったら、タイムが出ました」と地主は振り返る。速報値で45秒99。45秒98でタイムが確定すると、会場がどよめくとともに、本人は両手をたたいた。東京オリンピックの男子400mハードルに出場し、この日は応援に来ていた黒川和樹(4年、田部)とも喜びを分かち合った。
翌日の決勝は「前日にうまくいきすぎちゃって、体も疲れていました。足がボロボロで、アップする中で『これ、やばいな』という感じでした。その中でも、前日と同じような感じでできたらなと」。今泉との勝負はラスト100m、最後の直線に入ったときは「あっちの方が前にいた」と地主。負けるかもしれないという負の感情も頭をよぎったが、350mを過ぎたあたりで横を見たら抜かしていることが分かった。「これは大丈夫だ」と0秒33差をつけ、自信を持ってゴールした。「大きな舞台で1位を取れたことは、とてもうれしいです」
200mのスピードと800mの粘り強さを融合
今大会を迎えるまで、地主の持ちタイムは46秒52だったため、一冬を越えて、大きく成長したことがうかがえる。そこには2人の先輩の存在があった。昨年の学生個人選手権や日本インカレ男子800mを制した松本純弥(現・FAJ)と昨年の関東インカレ(1部)の男子200mで3位に入った山路康太郎(現・東京陸協)だ。
「2人と一緒に練習をさせてもらいました。山路先輩からはスピード局面でのアドバイスをもらい、(400mの)前半部分をうまく作れるようになりました。800mの松本先輩は誰もが思うことですが、やっぱり粘り強い。ラストで伸びる走りみたいなところを学ばせてもらって、冬季は過ごしていました」
2人との練習は、地主の自信にもつながっているようだ。これまでは中間の200m付近でスピードダウンしてしまう傾向もあったが、「250mぐらいまでスピードの上がり下がりがなく、そのままスーッと入っていけるようになりました」。加えて準決勝ではバックストレートでの追い風も後押しになり、記録につながった。
苅部俊二さんのベストタイムをめざす
今大会を経て、7月末から8月にかけて中国・成都で開かれる「FISUワールドユニバーシティーゲームズ」への代表内定を勝ち取った。地主は決勝のレース後「これからもいくつかグランプリに出る予定なので、アジア選手権(7月、タイ・バンコク)などの大きな大会も目標にしたいと思います」と意欲を語った。
地主が目標としているタイムは、45秒57。これは400mや400mハードルで活躍し、オリンピックは1996年のアテネ大会と2000年のシドニー大会を経験している苅部俊二さんの自己ベストだ。現在は法政大学陸上競技部の監督を務めている。ちなみに準決勝で45秒台を出した後、苅部さんからは「まだ行ける」と発破をかけられたという。
今後、タイムを縮めるためには「最初の100mをもう1回見直したい」と考えている。準決勝では序盤、今泉に先を走られた感覚が残っているからだ。「最初の200mは遅くないですけど、最初だけ修正できたら」。得意としている後半を伸ばすだけでなく、100mごとに区切って課題が残っている部分を補うことで、さらなる自己ベストの更新をめざす。