中央大学・湯浅仁 自ら「キャプテン像」示す、1部ハーフマラソン日本人トップの好走
第102回関東学生陸上競技対校選手権 男子1部ハーフマラソン決勝
5月14日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)
1位 ビライアン・キピエゴ(山梨学院大1年)1時間02分16秒
2位 湯浅仁(中央大4年)1時間02分35秒
3位 梅崎蓮(東洋大3年)1時間02分41秒
4位 杉彩文海(明治大4年)1時間03分10秒
5位 浦上和樹(日本体育大2年)1時間03分21秒
6位 ピーター・カマウ(国士舘大3年)1時間03分25秒
7位 山口廉(日本体育大3年)1時間03分33秒
8位 石井一希(順天堂大4年)1時間03分33秒
関東インカレ最終日の5月14日に行われた男子1部のハーフマラソンで、中央大学の湯浅仁(4年、宮崎日大)が日本人選手トップとなる2位となった。レベルも意識も高いチームメートが多くいる中、チームを引っ張る主将らしい力強い走りだった。
「きついコース」で先行されても冷静に対応
今シーズンの上半期は「この試合をターゲットレースにしてきた」という湯浅。タイムのことは気にせず、先頭集団に食らいついて最後にかわす展開に持ち込み、1位を狙っていた。レースは山梨学院大学の留学生ビライアン・キピエゴ(1年)が抜け出し、先頭の5km通過タイムは14分28秒。湯浅は順天堂大学の石井一希(4年、八千代松陰)や明治大学で今年の箱根駅伝7区区間賞の杉彩文海(さふみ、4年、鳥栖工業)、今年の延岡西日本マラソンで優勝した早稲田大学の佐藤航希(4年、宮崎日大)ら、有力選手たちと3位集団を形成した。
相模原ギオンスタジアムを抜け出し、女子美術大学の周りを12周(1周約1.58km)して競技場に戻ってくるコース。日本選手の中では5kmを過ぎたところで、杉と法政大学の稲毛崇斗(4年、東北)が出た。それでも湯浅は慌てなかった。「1.5kmごとにアップダウンが繰り返されるところが、選手にとってはきつい。どこかで(他の選手が)落ちてくるかなと思っていたので、冷静にレースを進めて、後半で追いつけばいい」と考えていた。
言葉通り、15kmを前に2人をとらえ、日本選手のトップ争いは湯浅と東洋大学の梅崎蓮(3年、宇和島東)に絞られた。「15km以降が勝負のポイントになると思っていました。そこからペースの落ち幅を最小限に抑えられたことが良かったんじゃないかと思います」と湯浅。最初、梅崎が前に出たときは「自分もきつかったので厳しいかな」と思いかけたが、自分のペースで追いかけていたら相手も落ちてきた。背中をとらえると、ラストスパート勝負に持ち込むことなく一気に抜き去った。
梅崎とは6秒差をつけてフィニッシュ。「留学生には負けてしまったので、また課題を克服したい」。レース後は反省の言葉も口にした湯浅だが、ゴール時は両拳を力強く握り、雄たけびを上げた。
主将の仕事を「いい意味でほとんどやってない」
箱根駅伝で歴代最多14度の優勝回数を誇る中央大。湯浅は今季、そんな伝統校で主将を務める。同学年には駅伝で抜群の強さを発揮してきた吉居大和(4年、仙台育英)や、今年の箱根駅伝3区区間賞の中野翔太(4年、世羅)らがいる。ただ1年の頃から学年リーダーを務めてきた湯浅にとって、主将就任は自然な流れだった。
理想は「監督・コーチ・自分が何も言わない」チームだ。現状は「自分がいちいち指摘しなくても、選手たちが一人ひとり意識を高くやってくれている」と理想に近い。「キャプテンの仕事を、いい意味でほとんどやっていないんです。そこに選手の意識の高さが表れているのかな。これからも選手一人ひとりを信じていきたい」
チームのスタッフは藤原正和監督をはじめ、花田俊輔コーチ、山本亮コーチ、大石港与コーチの4人。選手たちを各コーチのもとで4グループに分け、それぞれで練習することが多いという。湯浅がいるのは藤原監督のグループ。メンバーは吉居大和と駿恭(2年、仙台育英)の兄弟、中野、溜池一太(2年、洛南)、阿部陽樹(3年、西京)と今年の箱根駅伝を走った選手たちが中心だ。この中での湯浅の立ち位置は「力の差があって、なかなか付いていけない」。
監督から設定されるタイムも、新チームとなってから400mトラック1周あたり2、3秒早くなり「かなりハードな練習をしています」。振り落とされそうなときも、必死に食らいついた。「監督のメニューを信じて練習してきたので、一つ結果が出てうれしい気持ちです」。これまで続けてきたことが間違いではないと証明できる日本選手トップの好走だった。
箱根は往路の主要区間で勝負したい
5月4日の「ゴールデンゲームズinのべおか」で、吉居駿恭が5000mで13分27秒33と自己ベストを更新。厳しい練習の成果は他の選手にも波及し始めており、湯浅は「学生3大駅伝はしっかりと全員駅伝で戦っていきたい。駅伝で『三冠』を目指して、一生懸命やっている」と力強い。悲願達成のため、最大のライバルとなる駒澤大学との差について話が及ぶと、「前半からもう結果を残してきているので、自分たちにとっては若干焦りや慌てる部分はあります。でも監督・コーチを信じて、メニュー通りに練習をやるだけです」。まだまだ力の差があることは認めながらも「地に足をつけて、やれることをやりたい」と語った。
湯浅自身、箱根駅伝には9区を2度出走し、2年時は区間3位、昨年は区間6位と求められた役割を確実に果たしている。個人的には「自分が往路に回るぐらいの力をつけられれば、チームのレベルも上がってくると感じています。しっかり往路の主要区間で勝負していきたい」。
強いリーダーシップを発揮する必要がないほど、意識が高い選手たちの中で存在感を放つには、自ら結果を残して、背中で引っ張っていくことが求められる。この日のハーフマラソンの結果は、そんな自分の「キャプテン像」を示しているかのようだった。